【いだてん】井之脇海「かけっこのトラウマ」乗り越え、聖火ランナー役

引用元:オリコン

 NHKで放送中の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜 後8:00 総合ほか)は、きょう8日放送の第46回と、来週15日放送の第47回の2回を残すのみとなった。

 第46回では、いよいよ1964年に突入。聖火リレーの準備が大詰めを迎える。岩田(松坂桃李)は最終走者に、原爆投下の日に広島で生まれた陸上選手、坂井義則(井之脇)を提案する。アメリカの対日感情を刺激することを恐れる政府、その政府に忖度する組織委員会に反対されるのだが、最終的に坂井が聖火リレーの最終ランナーに決まるまでの舞台裏などが明かされる。

 本作で坂井を演じるのは俳優の井之脇海。12歳で出演した黒沢清監督の代表作『トウキョウソナタ』で数々の新人賞を受賞し、子役からキャリアを積んできた井之脇。2017年に「午後の紅茶」のCMで爽やかな存在感と演技で注目を集め、大河ドラマ『おんな城主 直虎』や、連続テレビ小説『ひよっこ』にも出演。その後も映画やドラマの話題作への出演が相次ぐ注目の俳優だ。

―――大河ドラマ「いだてん」への出演について。

これまでに大河ドラマは、「平清盛」(2012 年)、「おんな城主 直虎」(2017 年)に出演させていただきました。どちらも物語終盤の盛り上がる流れの中での出演でしたが、今回も、1964 年の東京オリンピックの最終聖火ランナーに抜てきされるという重要な役どころをいただき、とてもありがたいです。僕の登場シーンが、物語の集大成のようなシーンを担うので、少しプレッシャーを感じています。
脚本の宮藤官九郎さん作品は、映画『中学生円山』(2013 年)以来、2度目です。今回もそうですが、宮藤さんの脚本はクスッと笑えたり、心温まったり、一方で気持ちがえぐられるセリフがあるなど、やっぱりおもしろいなと感じます。

――役どころでもあります坂井義則はどんなイメージですか?

1964 年の東京オリンピックの様子は、この役をいただく前からニュースやドキュメンタリーなどで知る機会があり、坂井義則さんの存在、そして原子爆弾が投下された1945 年(昭和20年)の8 月6 日に広島で生まれた方ということも知っていました。そして、聖火台に登ったときの笑顔がすごく印象的で、その役がきたことに驚きました。坂井さんは、オリンピックへの出場を目指しながらも、代表選考会で敗退し夢がかなわなかった陸上選手です。でも、“たまたま原爆が投下された日に生まれた”という理由で聖火ランナーに選ばれるんですね。実際の坂井さんも、生前はその選考理由に葛藤があったことをインタビューで語っていたそうで、ドラマではその部分を膨らませて描いています。

 この作品を通して坂井さんの葛藤を知ることができたので、その気持ちをしっかり表現しなければいけないなと責任感が生まれています。それに、台本に描かれていない部分の生き様を上乗せできたら、もっと魅力的な人物になるのではと思っています。

――坂井さん以外の最終聖火ランナーについては知っていましたか?

 坂井さんが最終ランナーだったことは知っていましたが、最後の8人全員が戦後生まれの10代だったことは、この作品で始めて知りました。アスリートではない“普通の若い力”を見せつけることで、復興に強い意思やメッセージを込めていたんだと思いましたし、そういった史実を、ドラマを通して知っていただくことは意味があることだと思います。

――陸上選手の役ですが、走る練習はしたのでしょうか?

ランニングの監修をしてくださっている金哲彦さんに、坂井さんのフォームに近づけるよう指導していただき、自分で走り込みをするなどトレーニングを積みました。実は、小学生のころは足が速くてちょっと大きな大会に出ることになったのですが、出場したらビリになっちゃって…。それがトラウマになってしまい、以来、走ることに苦手意識があって…(笑)。ですが、役作りのためにトレーニングを初めたところ、長い距離を走ってもバテないで走ることができています。もともと山登りが好きで体力には自信があったというのもあり、山に行けないときは、街を走るのもいいなと思っています。

――共演者についてお聞かせください。金栗四三(中村勘九郎)と田畑政治(阿部サダヲ)の印象は?

四三さんは、まっすぐな男ですよね。得体の知れない力を持っている人だと感じていて、本人が意図しないところで人から支えられ、好かれているような人物だなと。そして、陸上をやっている坂井さんからしてみれば、夢だったオリンピックに3度も出場、日本陸上のパイオニア的存在なので、若さや未熟さをふくめて同じ土俵に立てていないと感じたと思います。そうやって、坂井の壁として立ちはだかる四三さんですが、その壁を乗り越える方法を教えてくれるのも四三さんです。クライマックスに差し掛かる2人のシーンは、僕も気合いを入れて撮影しましたので、ぜひ見てほしいです。

 一方、田畑さんもまっすぐで破天荒な男。あそこまで熱いと、うっとおしいと思うかもしれませんが(笑)、でも、「物事を動かす人というのはこういう人なんだろうな」と思わせてくれる魅力的な人物だと思います。阿部サダヲさんが演じているからこそというところもあり、いちファンとして田畑を見ていました。阿部さんとは「直虎」でも共演していて、とても大好きな先輩です。

――2020 年の東京オリンピックに期待していることは?

 聖火ランナーとして走る役をいただいたからには、聖火ランナーには興味がありますね。チャンスがあれば僕も関わりたいですし、宮藤さんを筆頭に、「いだてん」メンバーがその後を走るとかどうですか(笑)。ランナーの発表はことしの12 月以降とのことで、ぜひ関係者の方々、検討してみてほしいです。NHK の前だけを走る、とかでもいいです!(笑)。