吉田拓郎さんから曲の依頼が… 中学生の頃の自分に教えたい!

引用元:夕刊フジ
吉田拓郎さんから曲の依頼が… 中学生の頃の自分に教えたい!

【織田哲郎 あれからこれから Vol.58】

 子供の頃、『ノストラダムスの大予言』なんて本が流行ったもので、何となく1999年といえば何かやばいことが起きるんではないかと刷り込まれていた気がします。

 当時はあの本に限らず、あんな予言もこんな予言もやはり1999年は危ないと言っている、といったいわゆる世紀末話には事欠きませんでした。そういった“ムー的なもの”を真に受けるまでは至らなくても、1999年には何か大変なことが起こるのかもしれない、と漠然とした不安を持っていた人は私の世代には多かったのではないでしょうか。

 私は1958年生まれで、『ノストラダムスの大予言』がベストセラーだった頃は高知で寮生活をしていました。当時中学生でしたが「そうか。俺の人生は40歳までかもしれないんだ」とその時思ったわけです。中学生の時にいったんそう思ったことがあるかないかは、もしかするとその後の人生設計に無意識の部分で影響があったのかもしれません。

 オウム真理教の言っていたことも相当ノストラダムスあたりを下敷きにしていた感がありましたし、今となっては“アホじゃないの”と当時を知らない世代から思われても仕方ないことですが、あの本がどれほど日本人の一定の世代に影響を与えたかと考えると、なかなかに罪深い本だった気がします。あれ、映画化もされてるんですが、私が宣伝とかで知っている部分だけでも、すでにいろいろな意味で今なら公開できないはずの代物ですが、なんと当時は文部省推薦だったのですね。

 いやあ一体、あの頃のみんなはどうかしちゃってたんでしょう。ぜひとも五島勉さんはじめ“1999年やばいぜ”をがんがんあおった人たちには2000年に「すみませんでしたあ!」とガン首並べて謝罪してほしかったのですが、する~っと21世紀を迎えて今にいたってますね。

 それはともかく、世紀末頃にとても私にとってうれしかった出来事が、吉田拓郎さんから曲を依頼されたことでした。

 これもまた世代の近い方には理解してもらえると思うのですが、私が中学生の頃の拓郎さんといえば、尾崎豊と奥田民生を足して2で割らない、というくらいの特別な存在でした。そして何より、男性日本人シンガーで最も説得力のある声の持ち主だと私はずっと思っています。そんな拓郎さんが私の作った曲に詞を書いて歌ってくれたのが『Not too late』という曲でした。ああ『ノストラダムスの大予言』を読んでいた中学生の自分に「将来拓郎さんに曲を作って歌ってもらえるよ」と、教えてやりたいなあ。

 ■織田哲郎(おだ・てつろう) シンガーソングライター、作曲家、プロデューサー。1958年3月11日生まれ。東京都出身。現在「オダテツ3分トーキング」をYouTubeで配信中(毎週土曜日更新)。

 5月2日(土)には横浜のモーション・ブルー・ヨコハマで「Acoustic Night」を開催する。詳しくは公式サイトt-oda.jpへ。

 29日(土)に山口・下関市民会館で開催予定の『幻奏夜+』はコロナウィルスの影響で中止となりました。チケットの払い戻しについては公式サイトをご確認ください。