AIと人間が融合した「TEZUKA2020」新作漫画『ぱいどん』お披露目。まさかの連載も視野に

引用元:TOKYO HEADLINE WEB
AIと人間が融合した「TEZUKA2020」新作漫画『ぱいどん』お披露目。まさかの連載も視野に

 昨年10月、“漫画の神様”ともいわれる手塚治虫氏の新作漫画をAI 技術と人間とのコラボレーションで作り出そうという試み「TEZUKA2020(テヅカ 二―ゼロ 二―ゼロ)」が発表された。

 そして今年2月には2月27日発売の『モーニング』(講談社)に新作漫画『ぱいどん』が掲載されることが決定。その作品に注目が集まる中、発売前日の26日、講談社で「TEZUKA2020」新作漫画お披露目イベントが開催され、作品の全容が明らかになった。

 この『ぱいどん』は2030年の東京で、ホームレスの哲学者が事件を解決していくというストーリー。ぱいどんというのは主人公の名前で、記憶を亡くしたホームレスという設定になっている。

 手塚氏の子息でクリエイティブの総指揮を担った手塚眞氏は「今回、“AIを使って手塚先生の新作を作れないか?”というお話をいただいた時に素敵で意義のある話だと思った。しかし同時に10年以上かかると思った。まさかこんなに早く皆さんにお披露目できるとは思ってもいなかった。まさに手塚治虫の漫画の中の世界のよう。AIが漫画を描くという世界初の試みにチャレンジしたという、そのこと自体の意義を今回は感じている」などと挨拶した。 AIと人間が融合した「TEZUKA2020」新作漫画『ぱいどん』お披露目。まさかの連載も視野に この日公開された扉絵と導入の1~3ページ(c 「TEZUKA2020」プロジェクト)  制作にあたってはストーリーとキャラクターを別々のAIで生成。

 漫画の顔は機械にとってはただの線でしかないことからキャラクター生成は難航。最初に生成されたキャラクターは手塚作品とはほど遠いもの。トラウマになるような奇怪なキャラクターが生み出されもした。しかし手塚漫画のキャラクターを学習させなければという発想を転換し、世界中の人間の顔写真データを学習済みのAIから「転移学習」するという手法を用いたことで、キャラクター生成は一気に進み、1000個を超えるキャラクターが生み出された。

 ストーリーについては今回AIの監修を行った慶応大学の栗原聡教授の「栗原研究室」が開発していたシステムを用い、シナリオ作成に必要なパーツなどを生成。これをもとにAIがプロットを生成。ここで129のプロットが出来上がった。

 手塚氏は生涯で700以上の作品を残しているのだが、年代、読者ターゲットなどによって幅広い特性の作品となっていることから、「すべてをデータ化してしまうとまとまらないだろうという懸念があったので、作品を絞り込んだ。『ブラックジャック』、『三つ目がとおる』の連載を行っていた1970年代の作品群を中心にデータ化した」(眞氏)という。

 このキャラクターとプロットが出来上がってからは人間にバトンタッチされ、クリエイターがキャラクターデザインを起こし、ストーリーパートで仕上がったシナリオを合わせ、ネームを起こしてペン入れという通常の漫画を制作する作業に入り、作品が完成した。

“ぱいどん”がホームレスという設定については眞氏は「主人公の設定が日比谷にいて哲学者で役者で、テーマがギリシャ。どういうことだろう?と考えた時に、もしかして浮浪者のような人なのでは?と思った」、名前については「古代ギリシャがテーマだったので、そちらから名前を持ってこようと思った。ソクラテス、プラトンという有名な方がおられるが、プラトンの著作にソクラテスの仲間の1人だったパイドンという哲学者が登場人物の『パイドン』という著作があり、“この名前は面白いのでは?”と思った」という。

 1000個を超えるキャラクターの中から選ばれたのが「ナンバー81」というキャラクター。このキャラクターを選んだことについては「惹かれるものがあった。それはちょっと潤いを帯びた陰のある感じの目つき。(髪に隠れて)片眼が見えないのが興味を惹かれた。隠していることがありそうな、秘密がありそうな顔。秘密を持った主人公というのは面白いのではと思った。手塚治虫的な雰囲気が出ている。でもこんなキャラクターは見たことがない。もしかしたら手塚治虫が新しく生み出すとしたらこんな顔かもしれないと思わされた」などと語った。