みなとみらいホール長期休館前最後のシーズン陣容

引用元:チケットぴあ
みなとみらいホール長期休館前最後のシーズン陣容

早いもので、今年で開館23年目のシーズンを迎える横浜みなとみらいホールだが、耐震やバリアフリー化のための修繕工事のため、2021年1月から2022年10月まで、1年10か月間にわたって休館する。2月に開かれたプレス懇談会では、休館前最後となる2020年シーズンの主催公演ラインナップ発表と併せて、3月末をもって退く池辺晋一郎館長の退任挨拶、および4月から就任する新井鴎子新館長の紹介が行なわれた。

【画像】記者会見の様子

まず挨拶に立ったのは現館長の池辺晋一郎。2007年4月の就任以来13年間の在任期間を振り返り、「悲喜こもごもを語ると1時間18分かかる」と笑いを取りつつ、「やりきったという気持ちはないが、やりきってないところで終わるのが物を作るということ」と述べたのは、つねに「次の作品」を見据える現役の作曲家としての率直な心情だろう。「これからもひとりの音楽家としてお目にかかりましょう」と結んだ。

つづいて新館長・新井鴎子の紹介。「誇りを持って、公共ホールとしての使命を果たしていきたい」と挨拶した新井は、東京芸術大学楽理科および作曲科の出身。音楽構成作家として、数々のコンサートやテレビの音楽番組などの台本を手がける一方で、東京芸術大学特任教授として障害者支援プログラムの研究開発に携わるなど、さまざまな分野で音楽文化の新たな受容を模索する活動を繰り広げている。休館のため、2022年度の事業が新館長としての初シーズンとなるが、休館中にも、最新のVR技術を駆使する「移動型みなとみらい」で病院などを巡り、ふだんホールに来場することができない人々にホールを体感してもらいたいというプランを明かした。まだ計画段階だが、音楽ホールの新しいあり方を探る姿勢をさっそく示した格好。一方で、たとえば現代音楽の新作を委嘱する「Just Composed」など、池辺が手がけた意義ある企画はしっかり継承していきたいと約束してくれた。

つづいて発表された2020年度の公演ラインナップでは、やはり2020年ならではの企画が特徴的だ。「Tokyo 2020」開催期間を含む7~9月を「MMMusic for 2020」と名付け、音楽ジャンルや伝達メディアを超えて体感するアート・プログラム「きこえる色、みえる音」や、子供たちのための参加型イベント「みなとみらい遊音地」などを開催する。そして生誕250年のベートーヴェンの「第九」をメインに据えたのが10~11月の秋シーズン。リスト編曲のピアノ版と、ピリオド楽器オーケストラ「オルケストル・アヴァン=ギャルド」による2つの「第九」が演奏される。年末の「第九」も併せると、主催公演に3つの「第九」。ベートーヴェン・イヤーならではの選択だ。そして大晦日恒例のジルヴェスターコンサートが休館前最後の公演。建物も陣容も一新された横浜みなとみらいホールが帰ってくるまで、しばしのお別れだ。

取材・文:宮本明