ホテルのベッドの中に2人「ハイスコアガールII」22話 大野さんが「女性」に見えた日

引用元:ねとらぼ

 ゲーセンで燃やした青春があった。ゲーセンで育った恋があった。格ゲーが盛り上がっていた90年代を舞台に、少年少女の成長を描くジュブナイル「ハイスコアガール」。ゲームを愛した2人の少女と1人の少年の、エモーショナルな恋の物語。

【画像:伝説の10円ゲーセン、フェラーリ(9巻)】

 21話で大野晶への恋心にようやく気づいた矢口春雄(ハルオ)。告白するのは、「スーパーストリートファイターIIX」での勝負に勝ってから。大野と2人、大会に出るべく一路大阪へ。ハルオ、それは長距離デートだぞ。

ゲーセンで協力プレイできる青春

 これから大会でお互いが、秘めた思いを胸に、死力を尽くしてぶつかりあう……とはいえ高校生の男女が2人きりで新幹線で旅行となると、既に恋人同士にしか見えません。

 大阪にたどり着いた2人は、かつてお祭りに2人きりで行った時のように、あるいは小学生時代に変なゲーセンに行った時のように、純粋にワクワクしています。明日大会で決戦があるとは思えない2人旅。ハルオも成長したもので「めったにないこの時間(大野と遊べる時間)を大事にせんと…」と意識的に2人で遊ぶことを優先しています。

 2人が大阪に着いてから真っ先に行ったのが、ゲーセン巡り。観光地が嫌なわけじゃなくて、格闘ゲーマーは地方のゲーセンにいる強豪と腕を競いたいものです。今のようにネット対戦もないので、旅先でのバトルは非常に貴重な機会。またこの2人の場合、「積もる話」をするなら会話より対戦の方が通じあえることも多いでしょう。ハルオも改めて、大野の超絶プレイを見て、自らの感情を確認します。

 大野とハルオが向かったゲーセンの一つが「フェラーリ」という店。10円でプレイできることで有名なものの、パワー調整は最大、一本勝負。一瞬で対戦のケリがつくという強烈な仕様。

 日本橋に実際にあった店です。大阪はオブジェだらけ、なんてハルオが言っていますが、「フェラーリ」の看板も派手でした。この場所で10円で勝ち続けるには「くらわない」という理屈になるものの、そんな簡単にいくはずもない。集まっているのはツワモノだらけです。お金がないから10円ゲーセンに行くんじゃなくて、大野とハルオはワクワクするために行く。観光地に行くのも10円ゲーセンに行くのも、感情の高まりは変わりません。

 大野と久しぶりに協力プレイで遊んだのが「ダイナマイト刑事」。小学生時代から、かっこいいものよりもヘンテコな世界観を好んでいたハルオらしい、熱いチョイス。モップ、柱時計、コショウ!

 「ハイスコアガール」は痛みや辛さを含んだシビアな恋物語であると同時に、ゲーム好きな人間が思い描く至高の夢のような描写もたくさんあります。その一つが協力プレイ。90年代当時の殺伐としていたゲーセンで、男女2人並んでイスに座って協力プレイなんてしていたら、激しすぎる嫉妬の目線がグサグサ刺さっていたはずですが、この作品では許されます。高校時代に好きな女の子と「ダイナマイト刑事」で息をあわせて2人でジャンプ。大人になったゲーマーから見たら、いくら犠牲を払おうとも手に入らない貴重すぎる経験です。

 ハルオ「楽しいぜ…何が一番幸せかと問われたら…今 この瞬間が」

 22時を過ぎて警察が見回りに来た時、好きな女の子の手を握って深夜の街を逃げていく。なんてロマンティックなんだろう。普段の日々からちょっとはみ出した素敵なワンシーン、高校時代に経験したら一生忘れられない。こういう思い出の積み重なりが、ハルオの恋を育んでいたのは、21話を見ての通り。

 一方大野はイベントごとに興味津々な方。今までも遊園地やお祭りで、ハルオと2人の時だけは無言ではしゃいでいました。大阪では2人ともゲーセンめぐりで満足してはいましたが、大野は何度もたこ焼きを食べて喜んでいました。しかもハルオへの「あーん」まで。今回は特に、彼女は「恋人がするようなこと」をハルオに対して強く求めている節があります。「ダイナマイト刑事」協力プレイをやりたいオーラを出していたのも大野の方。

 小学生時代、「ファイナルファイト」にハルオが乱入した時、烈火のごとく怒っていたのを思い出します。