イングランドの田舎町で奮闘するレトロゲーム専門店、そこにはSS版『金田一少年の事件簿』や麻雀ゲームの姿も【異国ファストトラベル】

引用元:Game Spark
イングランドの田舎町で奮闘するレトロゲーム専門店、そこにはSS版『金田一少年の事件簿』や麻雀ゲームの姿も【異国ファストトラベル】

不定期連載「異国ファストトラベル」では、地球をワールドマップとして捉えたファストトラベル的な体験を読者の皆様に味わっていただくべく、世界各国のリアルなゲーム文化を紹介していきます。回数制限なし、(ほぼ)ロード時間なし、もちろんジャンプ中にも使用可能です。

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今回はイングランド・ダービーシャー州の都市「ダービー」のレトロゲーム販売事情に詳しいライターの声をお届けします。レポーターは、主に米国で活動しているゲームライターのChris Hudakさん。アタリでライター/ゲームデザイナーとして働いていた経歴も持つ彼に、現地のレトロゲーム専門店についてレポートしてもらいました。

イングランド中部の田舎町「ダービー」のとあるゲーム店について紹介していく前に、悪いニュースと良いニュースを報告せねばなりません。まずは悪いほうから……英国では「昔ながらのお店」はゆっくりと消えていきそうなところなのです。デジタルデータ販売がポピュラーになった昨今、世界的に同じ傾向だと言えるでしょう。

もちろんビデオゲーム業界にも同じことが言えます。近年ではダウンロード購入のみでなく、クラウド上でのゲームプレイも徐々に浸透してきましたよね。サッカーとエールビールをこよなく愛し、2,000年前にはローマ帝国にとって重要な戦略拠点であったダービーにも、その影響が現れているのです。

ほんの2年前まで、ダービーには4件のゲーム小売店が営業していました。ひとつめは、もしかしたら日本のゲーマーも(店舗としての)名前だけは知っているかもしれない「GAME」。次に、小規模チェーン店の「Grainger Games」と、ノスタルジックな味わいがあった玩具店「Blast From The Past」。これらの3店舗は撤退してしまいました。

ここからが良いニュースです。陳列されている商品が“レトロゲーム”と呼ばれるずっと前から営業していた「Retro World」だけは今も生き残っているので、その様子を読者の皆さんにご紹介できるのです。生き残っているとは言っても、やはりeBayとAmazonに対抗しながらですけれど。

実はこの「Retro World」も店舗自体は閉店してしまっていたのですが、地元のゲーム愛好家からの希望によって「Derby Market Hall」という市場の中で復活しました(この市場もまた長きにわたって改装中でしたが……)。この場所は1866年のころ、当時の行商人たちが住んでいた歴史的建造物と言われています。まさに「レトロ」に相応しい舞台ですね。

新たな「Retro World」は正直言うと狭いお店なのですが、想像力次第ではきっと広く感じられることでしょう! わずか25平方メートルの床面積でありながら、四方の壁に古き良きゲームカルチャーをびっしりと並べています。

販売されているのは、主にPS3/Xbox 360/Wiiなどの世代よりずっと前のゲーム。巨大なパッケージが印象的なPCゲームから、任天堂やセガハード用のカートリッジ/ディスク、さらには英国で80年代に販売されていた家庭用コンピューター用のカセットテープまで揃えているのです! 80~90年代のゲームを探しているときに、レトロゲーム愛好家に出くわすこともしばしば。もちろん趣味が合う友達だけでなく、隠れた名作レトロゲームにだって出会えます。

そしてGame*Sparkで「Retro World」を語るにあたって外せないのは、日本から仕入れたレトロゲームも販売されていることでしょう。特に海外のレトロゲームファン&セガ作品ファンにとって、日本から輸入されたパッケージを追い求めるのは非常に大切なこと。どちらも私のことだったりしますが。コンソールメーカーとしての活動を終えたセガは欧米で人気が下がり、結果的に英国向けのリリースも途絶えました。その中でわずかに販売されてきた、有り体に言うと「当時はウケなかったゲーム」はまさに私達にとって激レアアイテムなのです。

ちなみに、セガサターン向けタイトルとして最高傑作のひとつとして知られる『Panzer Dragoon Saga(AZEL -パンツァードラグーン RPG-)』は、英国ではだいたい500ポンド(約70,000円)で販売されています。こういった名作が英語字幕をサポートしていても(あるいはクオリティーにバラつきがある英語吹き替えがついていても)、個人的にはオリジナル版を日本語でプレイすることが望ましいところです。

先ほど述べたように「Retro World」は広いお店ではないので、他のゲーム店が開催する大会やゲームイベントを実施するようなことはできません。そういった小規模でニッチでマニア向けなお店ということもあって、最近では『ダンジョンズ&ドラゴンズ』関連書籍やボードゲームの品揃えも増えてきました。ゲームであればなんでも、といった次第ですね。

小さなお店とは言えど、ここでは懐かしさとゲーム愛好家、ゲーム文化が粘り強く盛り上がっているのです。筆者としても「Retro World」のような空間で今でもワクワクできることは、ちょっとした希望の兆しであるように思えます。以上、ダービーで奮闘するレトロゲーム店についてのレポートでした。 Game*Spark Chris Hudak(協力:Benjamin Burns)/Game*Spark編集部