「HG 1/144 ガンダムG40

引用元:Impress Watch

 2019年の「ガンダム40周年」、そして2020年の「ガンプラ40周年」を記念する特別企画として、「HG」シリーズのプラモデルに一風変わったルックスのガンダムが登場する。

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 この「HG 1/144 ガンダムG40 (Industrial Design Ver.)」は、世界的工業デザイナー奥山清行氏率いる「KEN OKUYAMA DESIGN」が、工業デザイナー視点で検証しデザインを行なったオリジナルのガンダムであり、今冬完成予定の「機動戦士ガンダム40周年記念 KEN OKUYAMA DESIGN ガンプラプロジェクトスペシャルムービー」に登場し、そこで披露されるアクションを再現できる設計となっている。

 工業デザインとして設計されたガンプラは、これまでの製品とはひと味もふた味も違った機構が取り入れられ、作ることでその面白さを実感することができるキットだ。今回特別に、製品版と同等のサンプルをBANDAI SPIRITSに提供いただき、実際に作ってそれをレビューした。

 なお、弊誌では現在「2019年最高のホビーアイテムを手に入れろ」として様々なアイテムを紹介しており、この「HG 1/144 ガンダムG40」もその中の1つとしている。フィギュアやプラモデル、RCなど様々な魅力溢れるアイテムをどしどし追加しているので、本稿と合わせコーナーそのものもチェックして欲しい。

■工業デザイナーが手がける新しいガンダムの“可動”

 このガンダムG40のデザインを手がけた奥山清行氏は、GMやポルシェなどのカーデザイナーの経歴を経て、現在は2007年に設立したKEN OKUYAMA DESIGNのCEOとして、世界的にも知られる工業デザイナーとして活躍中だ。ピニンファリーナ在籍時のフェラーリ「エンツォフェラーリ」や、KEN OKUYAMA DESIGN設立後のJR東日本の「北陸新幹線E7系」、「中央線特急 E353新型スーパーあずさ」、「山手線E235系」の車両など、我々にも身近な存在のデザインを数多く手がけている。

 KEN OKUYAMA DESIGNの公式サイトには、奥山氏が関わったプロダクトが紹介されているので、そちらを見てもらえれば、「このデザインに関わった人か!」という気持ちが沸いてくるはずだ。

 そんな奥山氏は「GUNDAM.INFO」のニュースページにて、本製品のデザインコンセプトについてコメントしている。

 ファーストガンダムをリアルタイムで見ていた世代の奥山氏は、近年のガンプラ解釈の1つである、“股関節の可動における腰回りがスカートのように割れるギミック”がファーストガンダムの劇中とはかけ離れていることに違和感を覚えていたという。

 この「ガンダムG40」ではそのギミックを採用せず、股関節のブロックを引き出し、さらに両脚の付け根に設けられた球体関節も左右独立してスライドさせることで、非常に大きな可動域を設けている。それに加えて両大腿部に伸縮ギミックを内蔵していることで、大胆な脚のアクションを可能としたのだ。

 もう1つのポイントは、各所の「ひねり」へのこだわりだ。人の動きには全てひねりが加わっていて、それに沿って「ガンダムG40」の首、胴体、前腕、ふくらはぎにはそれぞれ、ひねりのための回転軸が備えられている。ポージング時にこれをわずかに動かすことで、機体のラインに曲線が現われるのだ。

 こうした構造やデザインの新しさは、プラモデルとして組み立てることで、より詳細にわかるようになっている。もしこれが完成品のアクションフィギュアだったとしたら、その構造に直接触れて楽しむことはできないのである。

■ファーストガンダムをリスペクトしつつ要所には現代の工業デザインの解釈を取り入れたデザイン

 可動の話が先となってしまったが、本体のデザインについてもチェックしてみたい。ベースとなっているのは「ファーストガンダム」ではあるものの、完成した機体を眺めてみると要所のデザインはかなり変わっていることがわかる。

 ファーストガンダムの特徴の1つでもある頭部や胸部の吸排気口のフィンは省略され、特に胸部に関しては大幅なアレンジが加えられ、スポーツカーのフロントグリルのような雰囲気となっている。ちなみに本商品では再現されていないがコアファイターは、この機体ではVガンダムのように背面から胸部に収納されている設定で、胸の意匠はコアファイターの吸排気口のイメージとなっている。

 両ヒザにあしらわれたイエローのワンポイントはテールランプをイメージさせ、車的な印象をさらに引き立て、カーデザイナーとしても知られる奥山氏のセンスを感じられたポイントだ。

 頭部アンテナの上にあるメインカメラは、上方や後方までカバーするために可動するイメージで、ライン状にするという大胆な表現を採用。ビームサーベルのラックを折りたたみにすることで、より人間らしいシルエットを演出している。またシールドの十字のマークのアレンジも独特だ。

 ガンダムのデザインアレンジとしては賛否があることは間違いなく、筆者も最初は「ファーストガンダムとは細部もシルエットも違うな……」という印象を受けたのだが、奥山氏の経歴や解説を意識して改めて眺めてみると、その印象はずいぶん変わった。

 奥山氏は前述の「GUNDAM.INFO」のページにて、「できるだけ製品(工業製品としてのモビルスーツ)になった時をリアルにイメージすることができました」と語っている。1/1のモビルスーツの実物が存在し、その内部にはファーストガンダムと同様に身長170cmのパイロットが乗ったコアファイターが入っている想定で、それに基づいた装甲の厚さまで考慮されているという。

 ファーストガンダムをリスペクトしつつ要所には現代の工業デザインの解釈を取り入れ、アニメ設定と工業製品を両立させて、それをそのまま1/144スケールに縮小するという、スケールモデル的なアプローチの製品なのである。

 その一方で、写真を見ていただければわかる通り、アクションに関しては非常に柔軟で、これまでのガンプラでは難しかった動きも容易にこなせる。ポーズを決めている最中にパーツが落ちてしまう“ポロリ”がほとんどなかったのも好印象で、アクションフィギュアと同じ感覚で楽しめるだろう。

 股関節の構造上、アクションベース用のジョイント穴がなく、股間止め用のパーツもサイズ的に合わなかったため、はさみ込み用のみで対応となったことも記しておきたい。

 ガンダムシリーズ40周年を記念するアイテムとしては非常に野心的かつ、作って楽しいガンプラであった。完成後のアクションの味わえば、その魅力も倍増するはず。この今冬公開予定のスペシャルムービーと併せて、この年末に楽しんでみてほしい。

GAME Watch,稲元徹也