アカデミー4冠「パラサイト」で注目 筆者が経験した半地下生活のリアル

アカデミー4冠「パラサイト」で注目 筆者が経験した半地下生活のリアル

 韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が史上初の外国映画として、アカデミー賞作品賞、監督賞を含む4冠に輝いた。パラサイトというタイトル通り、貧困な家庭が裕福な家庭に寄生するさまが、ブラックユーモアたっぷりに描かれている。

 日本人にはなじみのないこの“半地下”住居。「パラサイト」では、貧困層の象徴として描かれているが、韓国では貧困層に限らず、ごく一般的に住居として使用されている。

 そもそも、なぜ、韓国には半地下住居がこれほどまでに多いのだろうか。

 もともとは、1970年、北朝鮮との対立激化から低層階には防空壕を造ることが義務化されたのだが、70年以降の経済成長で、住宅不足が深刻化し、政府は半地下の住宅使用を認めたという。さらに、90年に建築基準が緩和されたことにより、マンションの地下1階部分も住宅用に使用してもいいと認められたことで、半地下住居が増加したという経緯がある。

 かくいう筆者も半地下暮らしを経験したことがある。今から約15年前の学生時代の話で、ハスクという下宿だった。風呂・トイレは共有、大家であるアジュンマ(おばさん)のごはん付きで家賃は約3万円。部屋の広さ3畳ほどで窮屈だったが、コストパフォーマンスが良かった記憶がある。

■日光は窓際から少し見える程度

 確かに窓際から人が歩くのを見ながら生活するのは違和感があったが、映画に描かれているような、ジメジメしてしみったれた雰囲気はなく、むしろ清潔感にあふれた快適な空間だったと思う。日当たりは悪いというか、日光なんて、窓際から少し見える程度だったから、常に電気はつけていた。もちろん洗濯物なんか干せるわけがない。年中部屋干しだったが、寒いお国事情もあり、韓国はもともと屋外で干す習慣がない。たとえ上層階に住んでいても、部屋干しが当たり前だ。

 さらに、韓国には床暖房のオンドルというシステムがあり、冬でも寒さはみじんも感じなかった。床にパイプを通し、ボイラーを利用して熱湯を循環させる構造なので、かなり暖かい。床の場所によっては暑いぐらいだった。夏は日本ほど蒸し暑くないので、エアコンなしでも扇風機だけでどうにかしのげる。

 欠点を挙げるとすれば、水回りの脆弱さか。風呂がなく、シャワーとトイレが一緒で、日本人からすると常にユニットというのは気が引けた。なんといっても脱衣所がなく、そして、やはり、少しカビ臭い。排水も不十分だった。水浸しのところで着替えるため苦労した記憶がある。

 ただ、半地下で暮らす他の友人を見渡しても、「パラサイト」に出てくるようなみすぼらしい人はいなかった。というか、半地下であれ、皆で楽しく飲み明かしていた日々が懐かしく、半地下にマイナスのイメージはあまりない。

(取材・文=韓国芸能ライター・松庭直)