アボリジナルアート・コーディネーター 内田真弓~アボリジニの人にとって「明日」は「翌日」ではない

引用元:ニッポン放送
アボリジナルアート・コーディネーター 内田真弓~アボリジニの人にとって「明日」は「翌日」ではない

黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、アボリジナルアート・コーディネーターの内田真弓が出演。アボリジナルアートの作者であるアボリジニと人との関係について語った。 アボリジナルアート・コーディネーター 内田真弓~アボリジニの人にとって「明日」は「翌日」ではない ニッポン放送「あさナビ」 黒木)今週のゲストはアボリジナルアート・コーディネーターの内田真弓さんです。現地に行かれてすぐに、原住民の方たちと打ち解けられるわけではありませんよね?

内田)私のようなアジア人はまず見たことがないので、遠くから不思議そうな視線を感じます。近寄って来て「こんにちは」とあいさつをするわけでもありません。彼らは英語を話すのかどうかも知りませんでした。

黒木)何を話すのですか?

内田)彼らは独自のルリチャ語、ピンタピ語、ピチャンチャチャラ語、アマチャラ語。そして英語が彼らの5番目の言語です。現在は、彼らの英語となんちゃってルリチャ語でコミュニケーションが取れますが、最初は明るく無視をされるばかりでした。

黒木)最初はコミュニケーションができなかったのですね?

内田)彼らにとって、私のようなアジア人を受け入れるメリットは何もありません。彼らが私は何者なのかをきちんとわかるまでは、通い続けようと思いました。メルボルンから2500キロメートルと遠いのですが、通いました。

黒木)どのくらいの頻度で通ったのですか?

内田)時間とお金ができれば行きました。当時、私は空手をやっていたので、キックやチョップを行うとたちまち人気者になりました。そうしているうちに、狩りに連れて行ってくれることになりました。狩りならば準備をしなければならないと思い、いつ行くのか聞いたら、彼らの5番目の英語で「明日だ」と言われました。私は24時間後の翌日に狩りに連れて行ってもらえると思って、日焼け止めを塗ったり、カメラにフィルムを入れたりと準備をしました。そして翌日、「狩りは?」と聞いたら、また「明日だ」と言うのですね。この時間軸の違いが当時はわからなくて、毎日「狩りは明日だ」と2週間ほど言われました。朝になるとみんながトランプをやっていて、「狩りは?」と聞くと「明日だ」と。このようにずいぶんと時間がかかったのですが、1年に1度、女性だけで行う神聖な儀式に行くことができたのです。ここにお声をかけていただいたときには、泣けて来るほどうれしかったですね。

黒木)いつも同じ場所に行ってらっしゃるのですか?

内田)本当は他にも行きたいのですが、彼らに私が何者なのかをまず知っていただくためには、距離もあるので、「あちらもこちらも」というわけにもいきませんでした。当時は何度も通っている同じ居住区に行っていました。

黒木)今回、新宿の展覧会で展示したのは、同じ居住区で選ばれた70点なのですか?

内田)展覧会で評価されるクオリティーの絵を描けるアーティストは限られています。東京の舞台で70点という数多くの作品をお見せするには、ここになければあちらの居住区と、私の気になるアーティストがそれぞれの居住区に点在しているので、そこに1年くらいかけて行きました。

黒木)彼らの人生、アート、歴史、文化を伝える責任を受け入れたのですね。

内田)たくさんの時間を費やせば費やすほど、愛しくなる人たちです。私は学者ではないので、研究の対象として彼らを見ることはありません。日本人の目線で居住区に潜り込み、長期滞在をし、狩りに行き、儀式に参加をしたなかで彼らに近づきました。そこでまた、さらに知りたいという気持ちになったのです。

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