【flumpool インタビュー】ドラマの世界観と自分たちが提示したいものを融合できた

引用元:OKMusic
【flumpool インタビュー】ドラマの世界観と自分たちが提示したいものを融合できた

ニューシングル「素晴らしき嘘」にはTVドラマ『知らなくていいコト』主題歌の表題曲とアニメ『あひるの空』OPテーマの「ネバーマインド」を収録。2曲ともにタイアップでありながら“現在のflumpoolのリアル”を味わうことができる。そんな意欲作を完成させた彼らに話を訊いた。

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心情を汲み取り合うことで、人と人の絆が成り立つ

──まず「素晴らしき嘘」は曲を作るにあたって、ドラマサイドから曲調や歌詞などについてリクエストはあったのでしょうか?

阪井:具体的な提示はなかったです。映像もまだない状態だったので、どういうドラマなのか話を聞いて、それをもとにしてイメージを膨らませました。今回のシングルはflumpoolが活動休止から復活して2作目ということで、自分たちがやりたい方向性もありつつ、ドラマには緊張感のある曲が合うと思ったんです。そんなことを考えながらギターを弾いていたら、いいなと思うアルペジオのリフが出てきて。そこから入って、緊張感を出すために休符を意識したり、サビまではグッと我慢してサビでドン! と広がるイメージをかたちにしたのが「素晴らしき嘘」です。ドラマの世界観と今の自分たちが提示したいものを上手く融合することができて良かったと思います。

山村:歌詞は“人と人との本当の絆”とか“真実のつながり方”がテーマになっています。このドラマの主人公は週刊誌の記者で、世の中のいろんな真実を暴いていくんですけど、自分の過去に一番暴かれたくないものを抱えていて、その中で生き抜いていくというストーリーなんですね。そこにある葛藤をドラマサイドの方から聞いて、自分の中にある嘘や真実、人と人のつながり方を考えた時に一番最初に浮かんだのが、flumpoolのメンバー同士の絆だったんです。flumpoolは僕の喉が不調になって、一昨年に1年間活動を休止したんですよ。“歌わなければ治る”と言われたようなものだったので、数カ月間まったく歌わないようにしてから、久しぶりにスタジオに入ることにしたんですね。だから、みんなで期待して集まったけど、休止する前以上に僕の声が出なかったんです。半年くらいで復帰できると思っていたのに無理だと分かって、絶望的な気持ちになって、すごく塞ぎ込んでしまったんですけど、みんなはめちゃくちゃ普通の空気感だったんですよ。落ち込んで“どうしよう?”っていう重い空気になると思ったのに、すごくフラットというか、“じゃあ、また次”という感じだった。その時の僕にはそういう空気に違和感があったけど、復帰してから思うのは、あの時はみんなが気を遣ってくれたんだって。不安や焦りを感じたと思うけど、そういう内面を隠して平静を装ってくれた。そこに絆を感じたんです。僕らはもう30年以上の付き合いで、だからこそ分かるものがあるんですよ。僕らのことを知らない人が見たらメンバーが冷たいように感じるかもしれないけど、そうじゃなくて、そこには深い絆がある。そんなふうに目の前の現実の裏側にある想いを感じた時、今はそういった想いを感じづらい世の中になっていると思ったんです。言葉の裏側にある本当の心情を汲み取り合うことで、人と人の絆が成り立つことってあると思うんですよね。そういうことをひとつ投げ掛けたくて。

──今はSNSを使った字面のやり取りが主流ですので、言葉の裏側にある想いが伝わりにくかったりしますよね。そういう意味でも今の時代にマッチした歌詞だと思います。では、レコーディングはいかがでしたか?

小倉:最初に聴いた時、純粋にカッコ良い曲だし、今までのflumpoolにはなかった緊張感がありつつ、ちゃんとしたバンドの熱もある曲だと思ったんですね。なので、そこをより際立たせることを意識してドラム録りに臨みました。この曲はループと生ドラムが共存していて、自分のタイム感で叩くとループといい感じにシンクロしないので、レコーディングはそこで少し苦労しました。生々しさを出しすぎると、ちぐはぐな感じになってしまうし、ループに合わせることを意識しすぎて無機質なドラムになるのも違うということで、温度感の落としどころが難しかったです。

──楽曲に合わせてタイム感をコントロールできるのはさすがです。それに、リズムはスクエアでいながらドラムの音色は生々しいという組み合わせも絶妙で。

小倉:ドラムの音は基本的に同じ人が音作りで入ってくれるんですけど、最近は一生も音作りの段階から立ち会って、“もっとこういう音にしたい”という要望を出してくれるんですよ。だから、ドラムの音の方向性がより明確になっていて、それがいい結果につながっていることを感じますね。あとは、今回のシングルの2曲は去年の大阪城ホールのライヴで、リリースする前に演奏したんです。僕らはあまりそういうことはしたことがなくて、その時に感じたのが「素晴らしき嘘」は音源とはまた違う、ライヴ映えする曲に仕上がったなということで。なので、音源はもちろん、今後のライヴも楽しみにしていてほしいです。

尼川:ベースはドラマサイドから要望があったんだよね?

阪井:そう。ベースに要望があるというのはマニアックだなと思いつつ(笑)。それで、ちょっと紆余曲折がありました。

尼川:要望を踏まえていろいろ試行錯誤した結果、最終的に一生がデモに入れてきたベースに戻ったんです。やっぱり最初のが一番いいということになって、デモのベースを自分なりに少し手を加えたかたちでいくことにしました。ただ、もらってたリクエストが“低音がウネウネしていてほしい”だったので、スライドをたくさん入れていて、ウネウネしたベースになっています(笑)。

阪井:ギターはもう、ペロッと弾いて終わりという感じでした。特に話すようなことはないです(笑)。

──いやいや(笑)。貼り付けにしそうなアコギのリフを手弾きで弾いていることや、アコギとエレキギターの緻密なバランス加減など、注目点は多いです。ギターが泣いているソロも聴きどころですし。

阪井:ありがとうございます。ギターソロは難しいことをしているわけじゃないけど、いい味を出せたかなと思います。ニュアンスを強調したくて、薄くオクターバーを掛けたのも正解だったと思うし。でも、この曲はイントロのアコギとエレキギターの感じが、僕の中では全てですね。音色もそうですし、ドライな感じの質感とかもすごく気に入っています。あとは、どうだろう? 歌中は繊細さを出して、サビはドーン! といくというメリハリを付けられたし、上手くバランスを取って作れたという印象です。

山村:ヴォーカルは歌い方うんぬんよりも、この曲に込めた想いが伝わることを大事にしました。内向きというよりも、外に向けて歌いたいと思ったんです。タイアップが付いたことも理由のひとつだし。どちらかと言うと、活動を再開して最初に出した「HELP」(2019年5月発表シングル)がファンに向けた内向きなメッセージだったから、次は違うことをやりたいって話していたんです。その一発目が「素晴らしき嘘」だったから、外に向けて歌いました。その結果、内側に秘めた牙みたいなものが感じられる歌になっているんじゃないかと思います。

──みなさんのアプローチ、プレイが奏功して、「素晴らしき嘘」は洗練感とロックっぽさを併せ持った魅力的な一曲に仕上がりましたね。