時に華やかに、時にエモーショナルに。観客が求める「楽しい!」を常にベストなものに仕上げ、見せてくれる演出家・吉谷光太郎。
2.5ジゲン!!は、2月20日に開幕する「カレイドスコープ」の稽古場にお邪魔し、インタビューをおこなった。
浮かび上がってきたのは、2.5次元舞台の世界の現状、そして未来。
人気作品の演出裏話の他、消費されるコンテンツにならないためにやりたいことや危機感などについてもたっぷり語った貴重なインタビュー後編をお届けする。
吉谷舞台の世界表現に欠かせないアンサンブル。”スーパー”と呼ばれる彼らの担う役割とは――吉谷さんの舞台は布を使ったり、アンサンブルさんが多くの役割で活躍したりなど、アナログ的な「マンパワー」を強く感じます。
アンサンブルの彼らには、まずは世界観作りとその世界の「動き」を表現する役割を持ってもらっています。
舞台は映像と違ってカット割りができません。そのため、アンサンブルの彼らがその場面でどう存在しているかで、世界と世界観に動きをつけているんです。
例えば先日の舞台「文豪とアルケミスト 異端者ノ円舞(ワルツ)」では、侵蝕者の他にも、場面変換をする上で大きな役割がありました。
図書館から本の中の世界へ行くためには、美術もエフェクトも変えなければいけない。場面が変わっている動き、そして変わったことを伝えるためは、アンサンブルの彼らが必要だったんです。
ただ本の中の敵であるという一面的な見せ方だけにしてしまうと、図書館には存在しなくなってしまいますから。彼らの表現で、世界が図書館から本の中へと変わります。
文豪たちにとっての自分に迫りくるモヤモヤとした感情なども、彼らが表現しています。彼らが文豪たちに実際にまとわりついていると、見た目的な絵でも重さや気持ち悪さがありますよね。
――殺陣もありダンスもあり、周りを彩るなと、本当に多くのことを担当されていました。
そうですね。いつもアンサンブルはすごく大変です(笑)。身体的なこともなのですが、特に大変なのは、気持ちの置き所です。
――気持ちの置き所、ですか。
アンサンブルの大変さは、気持ちの切り替えのスピードと瞬発力です。次の瞬間、数秒後には、別の誰かや何か違う存在のものになっていないといけない。その気持ちができてないと薄くなってしまうし、パフォーマンスも全然違うものになってしまいます。
身体を変え、精神を変える。彼らがそういうところも含めてパフォーマンスをしている、と言うことを知ると、より舞台が面白く見えてくると思います。
――先ほど話に出た中での、アンサンブルさんが実際にまとわりついての重さ。この演出効果について教えていただけますか?
見た目の「絵」的な気持ち悪さもそうなのですが、演じているキャストへ物理的な加重をかけることでストレスを与えています。そこに無いものとして演技をするよりも、実際にある方が「気持ち悪さ」や「重さ」を感じますよね。
僕はそういう負荷をかけた演技者の言葉が好きで、演技にいっそうリアリティを生むものだと思っています。
――吉谷さんの舞台では、サプライズ的なことも多く感じます。例えば自転車の登場。あれはどのように決まったのですか?
まず、この物語の中で、何を最終的に見せなければいけないか、という目標を立てます。そこに向かってどういう絵を見せていくか、脚本のなるせゆうせいさんが話を作っていくんですね。
今回であれば志賀と武者小路、白樺派の2人の「一緒に自転車に乗っていてもおかしくないザ・青春」。その着地点に向けて、2人の関係性を描いて作り上げていく。
途中、国木田が一度自転車で横切ります。その瞬間は、ギャグとしてお客さんたちはとらえますよね。でも実はあれは、演出上重要な伏線なんです。
――観客の頭の中に「自転車」の存在を植え付けておくんですね。
そう、一度自転車を本来の「乗り物の自転車」として具体的に出しておくことで、下地を作っておく。そういうステップを作ってラストへ持って行く、実は計算だったんです。
事前におこなった会議では「本当に出すの、大丈夫!?」なんて話していたんですけれどもね(笑)。
「舞台でやる意味があるものを作っていきたい」2.5次元の間口を広げる演出家・吉谷光太郎 後編
引用元:2.5ジゲン!!