今に至るL’Arc~en~Cielを確立した奇跡のアルバム『HEART』

引用元:OKMusic
今に至るL'Arc~en~Cielを確立した奇跡のアルバム『HEART』

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。暖冬とは言え、冬になれば街にウインターソングが流れるもので、今年もまた歌謡曲、ポップス、ロックと様々な名曲が耳を楽しませてくれている。先日ラジオから聴こえてきたL’Arc~en~Cielの「winter fall」に思わず耳を奪われた。秀逸なウインターソングであることは間違いないが、彼らのバンドとしての素晴らしさを感じざるを得ない佳曲である。そこで、アルバム『HEART』を引っ張り出して久々に聴いてみたら、これがすこぶるカッコ良い。まさに名盤だ!というわけで、今回はL’Arc~en~Cielの『HEART』を取り上げる。
※本稿は2015年に掲載

ラルク・サウンドの本質

いきなり結論から述べるが、L’Arc~en~Cielのすごさは、俗にマニアックと言われたり、拡張高いと言われたりする音楽性を隠すことなく、そこにしっかりと大衆性を注入してポップに仕上げていることだと思う。分かりやすく言えば、敷居が高そうで親しみやすい。逆に言えば、親しみやすそうで敷居が高いとも言える。このバランス感覚こそがL’Arc~en~Cielだと思う。

例えば、M2「winter fall」。初のシングルチャート1位を獲得した8枚目のシングルであり、所謂サビ頭の歌メロが立った楽曲である。分かりやすい。だが、歌に絡むストリングスとブラスの実に流麗で、楽曲全体を見事に立体化させることに成功している。それだけでも卒倒しそうなほどきれいなのに、バックを支えているのはkenのワイルドなギターという構造。そして、これは改めて言うことでもないが、全編でhydeの奇跡的なヴォーカルパフォーマンスが連なっていく。簡単に言えば、かなり豪華で過剰とも思える音作りなのだが、決して難解なだけではないし、歌メロはキャッチーで親しみやすいのだが、ヴォーカリゼーションを含めて容易に真似られる感じがしない。《真白な時は風にさらわれて/新しい季節を運ぶ/こぼれだした手の平の雪は はかなくきらめいて》と綴られた詩的な歌詞と相俟って、大袈裟に言うなら、どこかこの世の物ならざる印象すらある。