槇原敬之容疑者、精神論では語れない更生 制御不可能『フラッシュバック』の恐怖

引用元:THE PAGE
槇原敬之容疑者、精神論では語れない更生 制御不可能『フラッシュバック』の恐怖

 歌手の槇原敬之容疑者が13日、覚せい剤取締法違反(所持)と医薬品医療機器法違反(所持)の疑いで警視庁組織犯罪対策5課に逮捕された。マスコミ各社が一斉に報じ、芸能ニュースの枠を超えて世間を騒がせている。槇原容疑者は一昨年に都内マンションで覚せい剤や危険ドラッグを所持していた疑いが持たれており、今のところ認否は明らかにされていない。槇原容疑者は1999年にも覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕され、有罪判決を受けた。なぜやめられないのか。専門家に聞いた。

ファン大きなショック 過去の苦い経験も再び薬物事件

 槇原容疑者は1990年にデビュー、翌91年には3枚目のシングル「どんなときも。」がミリオンセラーとなり紅白歌合戦に初出場を果たすなど一躍ブレークした。その後もヒットを重ね、99年の逮捕は世間に衝撃を走らせたものの、復帰後もSMAPに提供した「世界に一つだけの花」が2003年にリリースされるや300万枚を突破する大ヒットとなるなど、豊かな才能で音楽活動を続けていた。そんな槇原容疑者だけに、今回再び薬物事件の渦中の人となってしまったことはなんとも残念だ。

 「1999年の逮捕時はツアーの中止やラジオ番組の打ち切り、CDの回収といった事態に陥りました。薬物使用により受けた社会的制裁という苦い経験がありながら、今回再び薬物事件を起こしてしまったとしたら残念なことです」と嘆くのは、スポーツ紙の40代男性記者だ。

フラッシュバック現象の恐ろしさ 社会全体のサポートが必要

 しかし覚せい剤事件の再犯率は6割を超えるという。なぜか。医療ジャーナリストの吉澤恵理氏は『フラッシュバック』の危険性をうったえる。

 「前回の逮捕から相当の時間が経過し、槇原氏も一時は『立ち直れた』と思っていた時期もあったのかもしれません。薬物による興奮や多幸感の記憶に強い焦燥感を感じることがあっても、一時は断ち切っていたと想像します。しかし覚せい剤を一度でも使用した人に一生ついて回る不安があります。それは『フラッシュバック(自然再燃)』という現象です。フラッシュバックとは、薬物依存から立ち直り正常な生活を送っていても、ある日突然に幻覚、幻聴、幻想など薬物を使用していた時と同じような現象が起きることを言います。脳が、薬物を使用していた時の状態を突然思い出すのです。このフラッシュバックをきっかけに薬物を再使用するケースは少なくありません。フラッシュバックが起きるきっかけは、ストレスや不眠、アルコールなどさまざまですが、いつ起きるか予測できません。そのため薬物からの更生は終わりがなく、一生『薬物は絶対にやらない』という意志を持ち続けることが重要ですが、現実問題として意志だけでコントロールできる問題ではないのです」

 デビュー30周年の活動に傾注するタイミングで、再び覚せい剤事件で逮捕。本当に薬物に手を染めていたとすれば、やはり更生は困難なのか。吉澤氏は続ける。

 「社会復帰するには薬物依存を『薬物性精神疾患』と捉え、専門家の下で治療することが必要です。日本にも薬物依存を治療する専門病院があります。立ち直るには『医療の力』が不可欠なのです。薬物の更生は、『精神論』では語れません。薬物依存になった誰もが『薬物を止めたい。更生したい』と思っているはずです。しかし、脳が自分でコントロールできない状態になってしまうのが薬物の恐ろしさです。また、日本の社会も変わるべきだと思います。薬物依存となった人を責めるばかりではなく、薬物依存への理解と、社会全体でサポートする姿勢が必要です」

 現時点では認否について明らかにされてはいないが、もし再び覚せい剤に依存していたのだとすれば極めて深刻な状況だ。

(文・志和浩司)