織田哲郎「酒の力を借りて何とか次の日を迎える」 意識がなくなるまで飲む日々が続き…

引用元:夕刊フジ
織田哲郎「酒の力を借りて何とか次の日を迎える」 意識がなくなるまで飲む日々が続き…

 【織田哲郎 あれからこれから Vol.55】

 1980年に「織田哲郎&9th Image」というバンドでリリースしたアルバムの1曲目は「ドリーマー」という曲でした。これは当時面識のなかった西城秀樹さんが気に入ってNHKの歌番組でカバーしてくれた歌です。その曲の冒頭は“昨日の酒が残ったこの頭で 荷物まとめて こんな街に未練はないさ そんな俺の捨て台詞”という歌詞で始まります。その後83年にリリースしたソロデビューアルバム『ボイス』の1曲目は「シャイン・ザ・ライト」という曲ですが、その2番は“酒にまぎれて眠ってしまえば明日が始まる そんな毎日 乾き切った心抱いていると 夢さえも見ることを忘れてしまうよ 何もかも色あせてしまうその前に”なのです。

 まったく20代前半で、バンドデビュー、ソロデビューの1曲目だというのに、もっとキラキラした歌ないんかい! と思いますが、いつも酒に逃げがちな自分との戦いは、私の人生の中で当時からやっかいなテーマだったのです。

 誤解しないでほしいのは、私は酒自体を全面的に否定するつもりはまったくないのです。酒があるからこそ人生が豊かになる面はあると思います。酒で楽になって次の日を何とか迎えられる、そんな日があって全然良いと思うのです。

 人間なんてこうあるべきだ、という理屈通りに動けるものでもないし、だいたいそんなのつまらないでしょう。いろいろと愚かなことをしながらなんとかバランスをとってやっていく。私は人間というもの自体そんなものだと思っています。

 問題は酒とどう付き合うか、ということだと思うのです。私の場合、20、30代は、時にいろいろやらかす、なかなかにダメな酔っ払いでありつつも、なんとかアルコールに依存せず生きてこれました。

 それは音楽を作ることが何より楽しくて、そこに対しての充実感を一番求めている日々だったからだと思います。

 それが98年頃から、シラフで眠ろうと横になると、身体がどこまでも深く沈んでいくような感じに襲われるようになりました。それは落ち込むといった気分の話ではなく、本当に物理的に落ちていく感覚に襲われるのです。そして脳内では、どれだけ自分がくだらない男かといったネガティブな考えばかりがグルグルと回り始めるのです。

 ですから、とにかく意識がなくなるまで飲む習慣がついていきました。シラフのときはペットボトルがバコッと凹んだような不自然な気分で、酒が回るとやっと膨らんで元の状態になる。分かりにくいかもしれませんが、そんな感覚の日々でした。

 ■織田哲郎(おだ・てつろう) シンガーソングライター、作曲家、プロデューサー。1958年3月11日生まれ。東京都出身。現在「オダテツ3分トーキング」をYouTubeで配信中(毎週土曜日更新)。

 9日(日)に「東北復幸祭2020」コンサートに出演。

 弦カルテットとの共演による『幻奏夜IV』は16日(日)=東京・丸の内コットンクラブ▽23日(日)=名古屋ブルーノート▽24日(月祝)=ビルボード大阪-で開催。一般予約を受付中。さらに29日(土)には「幻奏夜+」を下関市民会館大ホールで開催。詳しくは公式サイトt-oda.jpへ。