「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」撮影現場に独占潜入!迫力の銃撃シーンも目撃

引用元:映画.com
「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」撮影現場に独占潜入!迫力の銃撃シーンも目撃

 [映画.com ニュース] ダニエル・クレイグ最後のボンド・シリーズとなることが判明した「007」シリーズ最新作「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」。昨年、ほぼ7カ月続いた撮影の最終週に、映画.comは英パインウッド・スタジオでの撮影に潜入することに成功した。ここでは、そのとき目にした撮影シーンやプロダクション・デザインについてリポートしたい。(取材・文/佐藤久理子)

 広大なパインウッド・スタジオに車で入って行くと、やがて「007 STAGE」と書かれたスタジオが見えてきた。歴史的なボンド・シリーズは、1962年以来パインウッドを使用してきたゆえに、スタジオにネームプレートが付けられているのだ。本シリーズがいかに別格であるかということが、これだけでもわかる。

 まずは、プロデューサーのバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンに会い、本作のビジョンやキャスト、スタッフについて語ってもらった。

 ブロッコリ「ダニエルは常に全力を尽くす、本当に素晴らしい俳優です。だからこそ周りも支えたいと思うのですが、彼の最後のボンド・シリーズとなる今回は特にそうでした。そういったみんなの強い思いが、ことさら映画に反映されていると思います。本作はとてもエモーショナルで、度肝を抜くものになるでしょう。また脚本家チームにフィービー・ウォーラー=ブリッジ(『キリング・イヴ Killing Eve』)が加わったことによって、映画に不可欠なイギリス人らしさやユーモア、女性の視点が加わりました。ダニエルは彼女の大ファンだったのですよ」

 ウィルソン「キャリー・ジョージ・フクナガ監督もストーリーテラーであり、素晴らしいビジョンがあります。知的で博学で、徹底してディテールにこだわるのです」

 今回悪役に抜擢されたラミ・マレックと、ボンドガール(レア・セドゥーが前作から続投するほか、新たにラシャーナ・リンチとアナ・デ・アルマスが加わった)についてはこう語る。

 ブロッコリ「マレックの悪役は心底邪悪なキャラクターです(笑)。わたしたちは彼が『ボヘミアン・ラプソディ』でアカデミー賞をもらう以前から、彼に参加してもらいたいと思っていました。本作では血も凍るような最高の演技を見せています。本作のボンドガールたちはストーリーに深く組み込まれた、なくてはならない存在です。ボンドは今回、悪役のみならずさまざまな女性たちに悩まされ、能力を試されることになります」

 本作では、すでに引退していたボンドが、CIA出身の旧友フェリックス・ライターから、ある化学者の救出を頼まれる。その周辺には前作に登場した国際的犯罪組織スペクターの影もあり、さらに「00(ダブルオー)」のコードを持つ新エージェント、ノーミ(ラシャーナ・リンチ)も彼らを追いかけていた。そうしてボンドは、かつてない凶悪な敵に対面することになるのだ。

 その後は、コスチューム、プロップ、SFX/車両部門などを周り、さまざまな小道具を見せてもらった。ボンド映画といえばやはりカーアクションは欠かせないが、今回のボンドカーは一段とパワーアップしている。予告編に見られる、車が360度ターンしながら包囲した敵を撃ち倒す派手なカーアクションシーンでは、10台の完全防弾使用のアストン・マーティンを用意したという。敵の銃撃が止むのを待ってボンドがボタンを押すと、ヘッドライトからマシンガンが登場し、車を360度回転させながら発砲する。

 実際にデモンストレーションをしてもらったところ(マシンガンは登場しなかったが)、車の両脇から薬莢がこぼれ出し、それだけで強烈なインパクトを実感させられた。この360度回転シーンでは、実際にクレイグ自身が運転席に座ったそうだ。

 このシーンはイタリア南部、丘の斜面の洞窟で有名なマテーラという世界遺産の古都で撮影された。迫力溢れる追跡シーンは、新たに開発された遠隔操作(ポッド)システムにより、イギリスのラリーで3度チャンピオンになったマーク・ヒギンズがハンドルを握って操作したという。

 本作ではボンドの武器類担当の「メカ博士」Q(ベン・ウィショー)が、ボンドをサポートするために移動式のラボを持つ。ガジェットはこれまでよりも増え、スタッフが通称「Qダー」と呼ぶハイテクレーダー・スキャン装置も登場。ウィショーがQ役になって以来、キャラクターのイメージがぐっと若返ったが、今回は彼の料理シーンも登場するとか。そのコスチュームを見せてもらったところ、エプロンには朝日が上る富士山が描かれ、「日本代表、帆前掛け」と日本語が印刷されている(これがなんともカワイイ)。また悪役マレックは能面を思わせるマスクを使用。こんな日本の影響も、日系のフクナガ監督ならではのアイデアのようだ。かたやボンドのスーツには、今回もトム・フォードが協力している。

 最後に、メイン行事である撮影を見学した。この日はボンドとノーミ、パロマ(アルマス)が登場するキューバの銃撃シーンだ。まるでキューバにタイムトリップしたかのような、ネオンに彩られたレトロな建物が並ぶなか、タキシード姿のボンドと、エレガントな黒のカクテルドレスにハイヒールを履いたパロマ、完全武装したノーミが銃撃に見舞われる。完璧に仕切られたタイミングでシャープなアクションを見せるクレイグに、思わず目が釘付けになる。銃撃の音がこだまし、その激しさが、離れた場所で見る我々にも十分伝わって来る。

 撮影の合間に取材に応じてくれたリンチとアルマスは、姉妹のように意気投合しながら、こんな感想を語ってくれた。

 リンチ「プレッシャーはまったく感じていないけれど、とても興奮している。わたしのキャラクターはいまの時代に生きる黒人女性。とてもダイナミックで、自分に自信があってもそれを誇示する必要もない。黒人女性として初めてボンドガールになって、そういう女性像を表現するのはとても光栄だわ」

 アルマス「わたしももちろんエキサイトしているけれど、こんなに大変だとは正直予想していなかったわ(笑)。とくに1日10時間、ハイヒールでアクションシーンをこなすのは、本当にタフでないと務まらない。パロマは思ったことを口にする、内面の感情が顔に出る正直なタイプ。欠点もあるけれど、明るくてちょっとクレイジーな、魅力的な女性よ(笑)」

 ざっくばらんに語り合う彼女たちの話しを聞いて、新たなボンドガール像も含めて、クレイグ/ボンド最終章を、早く目撃したくてたまらなくなった。