町山智浩が「ミッドサマー」を解説「監督が描きたかったのは人間の本質」

引用元:映画ナタリー
町山智浩が「ミッドサマー」を解説「監督が描きたかったのは人間の本質」

「ミッドサマー」のトークショー付き試写会が2月11日に東京・TOHOシネマズ 日比谷で開催され、映画評論家の町山智浩が登壇した。

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スウェーデン奥地の村ホルガで90年に一度行われる祝祭を訪れた若者たちが、想像を絶する悪夢に見舞われていく姿を描く本作。「ヘレディタリー/継承」のアリ・アスターが監督を務め、「ブラック・ウィドウ」のフローレンス・ピューが主人公ダニーを演じた。

上映終了後、劇中に登場するような白い民族衣装と花冠を身に着けて登場した町山。観客からの「昔の文献とかで、ホルガのような場所があったという記録があったのでしょうか。監督はそういうものを調べて参考にしていたのでしょうか」という質問に、「スウェーデンの映画会社からオファーを受けたとき、監督が考えたのが日本の映画だったそうです。今村昌平の『神々の深き欲望』という映画を思い出して、同じようにスウェーデンでも(土着的な)風習がないかどうか調査して、そこからシナリオを作ったんですね。『神々の深き欲望』は沖縄が舞台となっていて、測量士が村の風習に巻き込まれていくというもの。つまりストーリーの基本は今村監督の作品なんです」と答える。

町山はさらに「そのほかに参考とされた作品は、新藤兼人の『鬼婆』です。あれは戦国時代が舞台で、河原に住む貧しい家族を描いたもの。その中で、家族同士で殺し合うという話がある。前作の『ヘレディタリー/継承』でも引用したと監督は公言していました」と説明。「先日来日した監督は京都とかを取材したみたいですけど、今度は日本が舞台だと思っています。物価が安いからといって日本に来た外国人たちが恐ろしい目に遭う、みたいな物語になるんじゃないかな(笑)」と話した。

「監督が本当に伝えたかったメッセージとは?」という質問に、町山は「企画していたとき、たまたま自分自身の恋人との別れがあったから、それを映画に反映したんです。そのとき、イングマール・ベルイマンの『ある結婚の風景』からとても影響を受けたと監督は言っています。『マリッジ・ストーリー』のノア・バームバックも『ある結婚の風景』に影響を受けたそうですが、あの映画もすごく個人的な、離婚という問題の一部始終を描いたものでした」と回答。「自分自身が傷付いた問題を癒やそうとする作品が、世界に響くものになるということを監督は言っています。そして、ホラー形式が得意だからやっているけれど、本当に描きたかったのは“人間の本質”だということです」と、アスターから直接聞いた言葉を届けた。

「ミッドサマー」は2月21日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。

※「ミッドサマー」はR15+指定作品

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