アカデミー賞 歴史的快挙、感極まるポン・ジュノ監督「オスカーを5つに分けたい」

引用元:産経新聞

 【ロサンゼルス=上塚真由】第92回アカデミー賞の発表・授賞式で、最も優れた作品に与える「作品賞」に輝いた韓国映画「パラサイト 半地下の家族」。1世紀近いアカデミー賞の歴史で、外国語作品が栄光に輝いたのは初で、ハリウッドの歴史を変える一夜となった。

 「オスカーは…パラサイト」。プレゼンターの女優、ジェーン・フォンダさんが大トリの作品賞を発表すると、会場の観客は総立ちとなった。なりやまない拍手の中、女性プロデューサーが壇上で「この瞬間、とても象徴的な歴史が作られた」などと短く喜びを語ると、観客はさらなる演説を求めてコール。多様性に欠けるとの批判が尽きない米映画界で起きた快挙に、会場は一体感に包まれた。

 ポン・ジュノ監督は作品賞の際は壇上で語らなかったが、この日、脚本賞、国際長編映画賞、監督賞で3度スピーチ。とくに、監督賞の発表では感極まった様子をみせ、一緒にノミネートされていたマーティン・スコセッシ監督らの名前を挙げて影響を受けたと感謝し、「アカデミーが許してくれるなら、このオスカーを5つに分けたい」と語った。

 アカデミー賞の歴史で、最も注目される作品賞に外国語作品がノミネートされたのは過去10回。1999年(71回)のイタリア映画「ライフ・イズ・ビューティーフル」、2007年(79回)の「硫黄島からの手紙」、2019年(91回)の米国とメキシコ合作の「ローマ」など名作の数々は、受賞には至らなかった。

 ポン・ジュノ監督は記者会見で、影響を受けたアジアの映画監督を聞かれ、韓国のキム・ギヨン監督のほか、今村昌平、黒沢清両監督の名前を挙げ、日本の映画人への敬意も示した。

 「米国人は字幕を読まない」とされ、英語以外の作品が米国でヒットするのは困難だといわれてきたが、ポン・ジュノ監督は、動画配信の作品やユーチューブなどの浸透で「すでに壁を乗り越えている」と指摘。「近い将来、外国語作品の受賞が、大きな焦点にならない日が来ることを願っている」と力強く語り、映画界の裾野が広がることを願った。