衝撃を受けた『ドラクエ3』の底知れなさ 『ドラクエ4コマ』石田和明先生が語る

引用元:マグミクス
衝撃を受けた『ドラクエ3』の底知れなさ 『ドラクエ4コマ』石田和明先生が語る

 1988年2月10日にエニックス(現:スクウェア・エニックス)から発売された、ファミコン用ソフト『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以下、ドラクエIII)は、社会現象とも呼べる状況を生み出した人気作です。

【画像】石田和明先生が活躍した『ドラクエ4コマ』

 後に発行され人気を博した、ドラクエを題材としたコミック『ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場』(以下、ドラクエ4コマ)で活躍した漫画家の石田和明先生が、『ドラクエIII』発売当時の思い出を語ります。

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『ドラクエIII』発売当時、僕は勤めていた会社を辞めて失業中でした。全く先が見えない状態で、まさに人生に行き詰まっていました。

 そんななかで『ドラクエIII』に出会いました。もちろんその前作の初代『ドラクエ』も『ドラクエII』もプレイしていますし、大好きなゲームです。それでも『ドラクエIII』の衝撃は別格でした。

 色鮮やかなグラフィックとかわいいドット絵のキャラクター、鳥山明氏デザインのユーモラスなモンスター、全てを盛り上げるすぎやまこういち氏の音楽。

 ゲーム冒頭、母親と王様に言われるがまま、半ば訳も分からない状態で冒険の旅に出るが、旅を進めるなかでだんだん使命に目覚め、気がつけばどっぷり世界にのめり込んでいる巧みなシナリオ。

 十分にレベルを上げて慎重にゲームを進めれば戦闘に勝ち続けられるけれど、油断するとあっという間にパーティ全滅になる絶妙な難易度。

 仲間にできるキャラクターが名前も性格も白紙だったのは、僕にはとても合っていました。漫画家体質と言いますか、自分の想像が入り込む余地があればあるほど、冒険のなかでの仲間たちとのやりとりがいきいきと思い描けるのです。

 そして今日でも語り草となる壮大なストーリー。クライマックスと言っていい地下世界での「あの人」との出会い。全てが明らかになりサブタイトル「そして伝説へ…」の真の意味を知るラスト。

 感動すると同時に、ゲームの表現力の底知れなさに「こんなすごい時代になったのか!」と衝撃を受けました。

 先に書きましたが、失業中だった僕は、一度は諦めかけた漫画家になる夢をもう一度目指していました。昼間はバイト、夜は一人暮らしのアパートに帰ってマンガの原稿を描き、そして『ドラクエIII』を夢中になってやりました。

 ともすればくじけそうになる状況でしたが、間違いなく『ドラクエIII』で励まされました。人生辛いこともいろいろあるけど、生きていればこんなすごい作品に出会えることもあるんだと。

 そして、いろいろな巡り合わせで『ドラクエ4コマ』のお仕事をすることになり、漫画家としてデビューすることができました。よもや大好きな『ドラクエIII』のマンガを描くことになるとは!

 おかげさまで好評をいただき、『ドラクエ4コマ』を描き続けることができました。

『ドラクエIII』は文字通り僕の人生を救ってくれたゲームであり、生涯で一番大切なゲームです。 石田和明