芸能人の不倫報道に疲れた人へ。舞台「家族はつらいよ」は夫婦関係を見つめ直す感涙系

引用元:スポーツ報知

 このところ、芸能人の不倫騒動が止まらない。その昔、「不義密通は死罪」などというおそろしい時代があったが、いまは法を犯している訳ではない。人を好きになる、というのは本来すばらしいことであるはすだ。ただし、そこに道徳や倫理観が求められる。

 日々、芸能を取材している記者も不倫騒動疲れは否めない。先日、東京・新橋演舞場で松竹新喜劇の舞台「家族はつらいよ」(山田洋次演出、11日まで)を見た。映画にもなった作品だが、終盤で恥ずかしいくらい泣いてしまった。相当疲れて心身参っているのかもしれない。

 主人公は二世帯住宅に住む平田家の高齢夫婦、周造(渋谷店外)と富子(井上惠美子)。ずっと専業主婦だった妻の誕生日。夫が欲しい物を聞くと返ってきたのは「離婚届」。食べるときにペチャペチャと音を立てたり、何度言っても直らない靴下を裏返して脱ぐクセなど生理的に全てが嫌になってしまったという。

 離婚届の用紙を突き出され、茫然自失の周造。家族には、互いを理解するのために夫婦でしっかり話し合うべきだ、と説得されるも「そんなもんできるかい。そんなもん言わんでも分かるやろ」。周造は突っぱね、受け付けない。しかし、悶々と苦しみ続けて答えを出す。妻の望み通り、ハンコを押した離婚届を渡すのだ。涙が出てきたのは以下のやり取りの場面だった。

 周造「遅なったけどな、誕生日のプレゼントや」

「長い間世話になったから、何かしてやろうと思ったんやが、離婚届が母さんの望みやったら、それを叶えてやるんが、ええかいな思うてな」

「何や矛盾してるけど、しゃあない」

「母さんと一緒になって良かった。そう思うてるっちゅうこっちゃ」

「色々わがまま言うてすまんかった。長い間、おおきにありがとう。サンキューベリーマッチ、以上や」

 拍手とともに、客席ではすすり泣きが漏れていた。舞台上の富子も泣いている。

 富子「今の言葉を聞けたら十分。死ぬまでお付き合いします。どっちが先か分からないけれど」

そう言うと、離婚届をビリッと破って粉々に。外で舞う雪と一緒に、紙も舞うのだ。積年のわだかまりが解けてなくなる、という意味の演出だろうと解釈した。

 不倫の真相など本人たちにしか分からない、と分かりつつ、添い遂げることもいかに大変か。芸能人の不倫騒動を取材する度、考えてしまうのだった。(記者コラム) 報知新聞社