病院モノ乱立でうんざりなら…ノンプライム帯のドラマに掘り出し物あり

病院モノ乱立でうんざりなら…ノンプライム帯のドラマに掘り出し物あり

【あれもこれも言わせて】

 今期の連ドラは病院モノばかりという嘆きをあちこちで聞く。昨年末に終了した「ドクターX」の後を受けて病院ドラマロスになった視聴者をごっそり取り込めるなどと安易な発想で病院モノを作ったわけではないだろうが、白衣と手術シーンはもうお腹いっぱいだ。

 なぜ、病院モノが大量発生するのかを一言でいえば、視聴者の多くが中高年で、彼らが最も興味あることだから。恋愛モノや学園モノを作ったところで、誰も見やしない。視聴率の時代ではないといいつつも、数字を取らなければいけないゴールデン・プライムのドラマは、ヒットしてナンボだから、みんな同じになる。

■イチオシは「コタキ兄弟と四苦+八苦」

 その点、ノンプライムのドラマは、予算こそ少ないが自由度は高い。

 イチオシは、「ドラマ24 コタキ兄弟と四苦+八苦」(テレビ東京系)。主演は古舘寛治と滝藤賢一。真面目過ぎ(?)てうまく生きていけない元予備校教師の兄・一路(古舘)とちゃらんぽらんな弟(滝藤)の無職のおっさん兄弟が「レンタルおやじ」になり、依頼人からのむちゃぶりに四苦八苦するお話だ。

 滝藤も古舘もバイプレーヤーとして知られているが、滝藤はまだしも古舘が主演とは何とも地味だが、そこがいい。

 2人の会話は芝居とは思えないようなリアルさがある。彼らが入りびたる喫茶店の看板娘・さっちゃんに芳根京子、「レンタルおやじ」代表・ムラタに宮藤官九郎の面々。曲がりなりにも朝ドラヒロインの芳根、腐ってもクドカンを召喚、さらに、毎回出てくる依頼人が豪華。市川実日子、樋口可南子……と、ドラマ好きにはたまらない。ソフトバンクのCMでしか見なくなっていた樋口をドラマで見たのはいつぶりか。

 脚本は「逃げ恥」「アンナチュラル」「獣になれない私たち」の野木亜紀子。ヒットメーカーのオリジナルをノンプライムで見られるのはぜいたく。演出は「深夜食堂」「山田孝之の東京都北区赤羽」を手掛けた映画監督の山下敦弘。

■小市民的で好感が持てる「絶メシロード」

「コタキ」の後の「ドラマ25 絶メシロード」もいい。くたびれたサラリーマンが、週末だけの小さな旅をする話で、主人公を濱津隆之が演じる。300万円の低予算映画「カメラを止めるな!」で監督を演じていた男で、冴えないサラリーマンにはぴったり。「誰も誘わない・誰も巻き込まない・予算はお小遣いの範囲内で」というルールが、いかにも小市民。だからこそ好感が持てる。

 リリー・フランキーや斎藤工が出演する「ペンション・恋は桃色」(フジテレビ系)や、速水もこみちがドM社長を演じる「この男は人生最大の過ちです」(テレビ朝日系)、中島裕翔主演の青春サスペンス「僕はどこから」(テレ東系)など見応えあるドラマが多く、夜更かしが続く。ノンプライムに掘り出し物あり。

(桧山珠美/コラムニスト)