『サンデーモーニング』が手作りフリップにこだわるワケ「硬派な話題だからこそ伝わるものがある」

引用元:オリコン
『サンデーモーニング』が手作りフリップにこだわるワケ「硬派な話題だからこそ伝わるものがある」

 1987年10月より長きにわたり愛される報道番組『サンデーモーニング』(TBS系)。政治・経済・国際・社会の硬派なニュースを中心に取り上げる同番組の名物の1つが、アナログ感あふれる模型でニュースを深掘りする手作りフリップ解説。温かみのある手づくりフリップは、2006年8月より起用されてきた。フルCGのデジタル時代にあえて手作りにこだわる理由や、生放送だからゆえの失敗談、視聴者の反響について、番組プロデューサーでTBSの金富隆氏に話を聞いた。

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◆専門家を入れず現場スタッフがフリップを制作 ニュースを深く理解し自分の言葉で伝える

──今や『サンデーモーニング』の名物となっている“手作りフリップ”はいつから採用しているのですか?

【金富】 一番初めは記録をひもとくと…2006年8月27日の放送、「『太陽系の惑星』とされてきた冥王星が、『準惑星』に“格下げ”された」というニュースを取り上げた時で、約14年前からですね。これまで手作りフリップで取り上げた項目、解説した女性サブキャスター、制作したスタッフの名前はすべてノートに記録しています。ただ1放送回につき1行くらいの記録で済んでしまうので、なかなかノートが終わりません。10年以上使っているので、ノートもすっかりボロボロです(笑)。

──さまざまな仕掛けが凝らされたあのフリップは、いつどなたが作っているのですか?

【金富】 解説を担当するサブキャスターとディレクターに加えて、アシスタントディレクターが2~3人、学生アルバイトが2人の6~7人で作っています。専門の美術スタッフは一切入れず、自分たちだけで作ります。制作スケジュールとしては、まず金曜日に取り上げるニュースを決める会議があり、その夜に試作品を作ります。主な材料はダンボールや発泡スチロール、テグスなど。足りない材料があったら、DIYショップに買いに行きます。作業は深夜までかかり…本当に手作りなんです。

──小学校の夏休みの工作みたいですね。

【金富】 はい。土曜日の昼にMCの関口宏さんも含めた番組の全体会議があり、そこで実際に手作りフリップを動かしながら担当キャスターが解説します。その際に、「説明がちょっとわかりにくい」「この要素も盛り込む必要があるのでは?」といった意見が上がると再度作り直します。本番ギリギリに誤字を見つけることもあり、その場合不恰好ですが、上から紙を貼って対処したりもします。

──文字くらい印刷にすれば、簡単に修正できそうな気もしますが……。

【金富】 文字は基本的に解説するサブキャスターの手書きです。たしかに文字をフォントにしたり、それこそフリップそのものも、専門の美術スタッフが作ったほうがキレイにできるでしょうが、それよりも伝えるサブキャスターや番組スタッフが、手を動かして作ったほうが伝わるものができるのではないか、というのが『サンデーモーニング』の考え方です。解説するサブキャスターにとっては、毎回大変だと思いますが…。フリップ制作に関わることで、ニュースをより深く理解して「自分の言葉で伝えてほしい」というのが元々の番組の狙いのようです。

──箱型のフリップをくるっと回したり、紙を次々と剥がしたりと、仕掛けを動かすのもすべて手作業。失礼ながら、仕掛けが失敗しないかどうかナナメ目線で注目してしまうこともあります。

【金富】 そういう見方をしてもらっても全然構いませんよ(笑)。スタッフは毎回、一生懸命作っているんですが、リハーサルで上手くいった仕掛けが、本番では動かなかった…みたいなハプニングもありました。でもそれはそれで、生放送ならではなんじゃないか、というのが番組の考え方です。一番大事なことは視聴者にニュースが分かりやすく、そして正確に伝わることであり、しっかりそれが守られていれば、仕掛けの失敗は気にしないようにしています。