BTS、米ビルボード・ソーシャル・チャート首位最長記録を更新できた要因とは?

引用元:Billboard JAPAN
BTS、米ビルボード・ソーシャル・チャート首位最長記録を更新できた要因とは?

 2020年2月8日付の米ビルボード・ソーシャル・チャート“Social 50”で、164週目の首位を記録して最長記録を更新したBTS。2017年7月からはずっと首位の座を守り続けている。

 長らくジャスティン・ビーバーが独占していた大記録を更新するに至ったのは、彼らのファンであるA.R.M.Y.の力によるところが大きいのは言うまでもなく、ほかにもさまざまな要因を挙げることはできるが、ほかのアイドル・グループとは決定的に違う重要な要因が一つある。SNSの情報発信を少数の人気公式アカウントに集中させていることだ。

 TwitterでBTSを検索すると、まず結果として表示されるのはメンバーが管理するアカウント@bts_twtだろう。世界中を飛び回るメンバーたちの写真やメッセージなどが頻繁にアップされる。そしてもう一つは、レーベルがグループに関する情報をアップデートする@bts_bighitで、こちらは前者ほどは更新されない。BTSの公式アカウントは、この二つしか存在しない。

 これは米ビルボードがチャートを作る上で、複数のアカウントを数えているという意味ではない。“Social 50”は、音楽分析会社ネクスト・ビッグ・サウンドが追跡したデータに基づき、Facebook/Twitter/Instagram/YouTube/Wikipediaで最も人気のあるアーティストをランク付けしているが、各プラットフォームで一つのアカウントしか考慮されていない。BTSの場合はメンバーのアカウント@bts_twtだ。

 比較対象として、米ボーイ・バンドのホワイ・ドント・ウィーをTwitterで検索すると、グループのメイン・アカウント@whydontwemusic(現時点でフォロワー数752,000人)のほかに、5人のメンバー各自の公式アカウントも表示される。トップはジョナ・マレー(@JonahMarais)で、こちらの登録者数は何とグループより多い887,000人だ。そしてダニエル・シーヴィ(@SeaveyDaniel)も830,000人、コービン・ベッソン(@corbynbesson)も862,000人、ジャック・エイブリー(@jackaverymusic)も795,000人となっており、一番少ないザック・ヘロン(@ImZachHerron)も747,000人のフォロワーがいる。

 インスタグラムも同じで、ホワイ・ドント・ウィーのアカウントと、各メンバーのアカウントが存在する。だがBTSの場合はメンバーの個別アカウントはない。ホワイ・ドント・ウィーのファンは、お気に入りのメンバーをフォローすることで、自分の好みに寄り添った体験を直接得ることができるが、BTSの場合はどのメンバーに関する情報もグループ本体のアカウントを必ず通らなければ得られない。

 だが、BTSの仕組みに特に問題があるわけではない。アイドル・グループのメンバーが個別のアカウントを作らなければならないというルールはなく、7人もメンバーがいるBTSの場合は現在のシステムの方がグループの情報をよりシンプルに、能率的にファンに伝達できるといった利点がある。

 つまり、BTSのSNS活動は合理的なのだ。アクティビティーを複数の個別アカウントに分散させず、あくまでもBTSとしてファンと交流を深めている。メンバー個人が情報を発信することは多々あるが、必ずグループのアカウントに投稿される。そしてファンからの“いいね”や“お気に入り”やメンションは全てグループのアカウントに集中するというわけだ。

 仮に、とあるグループのライトなファンが、メンバーの一人にしか興味がなかったとしよう。おそらくそのファンは、グループ本体を飛び越えてそのメンバーのアカウントと直接つながり、自分の興味に合ったピンポイント的な関わり方をするのではないだろうか。BTSの場合は、どのメンバーに興味があったとしても、グループの公式アカウント以外に情報を得るルートがない。

 ちなみに、K-POPグループが全てBTS方式かと言えばそうではなく、たとえばEXO/Super Mのべクヒョンは個別アカウントを持っている。BLACKPINKの各メンバーも、Twitterはまだだがインスタグラムでは個別のアカウントを持っている。

 最新の“Social 50”チャート集計週は1月24日から30日だったが、その週のBTSに関するTwitterのつぶやきは何と1,710万回だった。これは容易に超えられるような数字ではなく、現時点では競争相手も見当たらない一人勝ち状態だ。少なくとも“Social 50”チャートの観点からは、BTSのSNS戦略は大いに功を奏していると言えるだろう。