バットマン生誕80周年!“アメコミ界の伝説”が、アカデミー賞最多ノミネート『ジョーカー』を語る

引用元:Movie Walker
バットマン生誕80周年!“アメコミ界の伝説”が、アカデミー賞最多ノミネート『ジョーカー』を語る

クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」3部作など、これまで幾度となく映像化されてきたDCコミックスが誇る人気ヒーロー「バットマン」の誕生80周年に合わせ、DCエンターテインメント共同発行人で“アメコミ界の伝説”とも言われるコミック・アーティストのジム・リーが先日、来日を果たした。Movie Walkerではリーを直撃し、「バットマン」が世代を超えて愛され続ける理由や、現在Blu-ray・DVDが絶賛発売中となっている『ジョーカー』の魅力について聞いた。

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80年代にマーベル・コミックスでキャリアをスタートさせたリーは、91年にクリス・クレアモントと共同で「X-MEN」の新シリーズを手掛けアメコミ界にその名を轟かせると、92年には「スポーン」や「ザ・ウォーキング・デッド」など後に映像化される人気作を生みだしたアメコミ出版社イメージ・コミックの創設に携わるなど出版者として活躍。そして98年にDCコミックスに移籍したリーはアーティストの一人として多くの作品に携わり、2011年にはDCコミックスの大規模リランチ(再始動)として大きな話題を集めた「The New 52」にも参加している。

「1939年に生まれた当時は、先進的なキャラだった」と、リーはバットマンの誕生した時代背景を振り返っていく。「当時は都市化が進んでいた時代で、多くの人々が都市部で起きる犯罪に脅威を感じていたんだ。そんななかで誰もが『影で守ってくれるヒーローがいてくれたらいいのに』と願うようになり、それが見事に形になった作品が『バットマン』だった。いまでも犯罪の恐怖におののきながら生活している人は少なからずいる。だからこの設定は、いまの時代にも訴えかけてくるものだと思っている」。

続けてリーは、バットマンが80年にわたって愛される理由として様々な要素を挙げていく。ゴシック的でロマンチックなデザインや、他のヒーローとは異なる配色をしたコスチュームの格好良さ。バットモービルに代表されるギミックのおもしろさ。そしてバットマンことブルース・ウェインのキャラクター性。「目の前で親が殺されたというとてつもない逆境を乗り越えて、2度とこんなことが起きないようにと人を鼓舞させる高潔なキャラクター性が一番の魅力だ。どん底から這い上がってきたということが、強いメッセージとなって人々に届いている。それが人を惹きつける魅力ではないでしょうか」。

またこれまで何度も来日しているリーは、日本という国について「ポップカルチャーに偉大なインパクトを与えている、常に新たな発見がある国」だと表現。「映画やアニメ、漫画やおもちゃといったあらゆるもので先を行っている感じがあるし、街の中を歩いていてもすごく細かい部分にこだわりと面白さを感じる」と、日本文化から様々な形でインスパイアを受けてきたことを明かし、「おもしろいエネルギーがあって、忙しなさもありながら洗練さもある。なぜ日本の文化はここまでアメリカと違うのかと考えると同時に、僕らもそこから学び取れるものはないだろうかと考えてしまうんだ」。そして漫画についてもアメリカと日本では社会からの受け入れられ方が違うと語るリーは、士郎正宗の「アップルシード」や大友克洋の「AKIRA」、堀越耕平の「僕のヒーローアカデミア」といった近年海外で流行している日本漫画のタイトルを挙げ「学べるところがある」と断言した。

昨年、国内興行収入50億円を超えるヒットを記録し、先日早くも発売されたBlu-ray・DVDがさらに多くのファンを増やしているトッド・フィリップス監督の『ジョーカー』について聞いてみると「原作コミックスでのジョーカーとはだいぶ違うと感じる部分もあったけれど、DCファンの人たちはきっとDCユニバースとつながっている部分に気が付いてくれるんじゃないかと思います」と笑顔を見せる。さらに「ホアキン・フェニックスがすばらしい形でジョーカーというキャラクターを表現してくれていた」と、『ダークナイト』のヒース・レジャーにつづいてアカデミー賞有力との呼び声も高いホアキンの演技も称賛。

そして自身が「X-MEN」や「The New 52」でやってきたように、歴史ある作品を刷新していくという方法論に則りながら「ヒーローやヴィランを描く上で絶対こうでなくてはいけないというものは無い。これがバットマンだ、ジョーカーだという一本の柱、例えばそれぞれのキャラクターのカラーやシンボルといったものを大事にしながら、ディテールの部分を改変していくことこそが、ファンの方々の興味や新鮮味を失わないためのものなのだと思っています」と、今後も「バットマン」や「ジョーカー」の物語が様々な進化を重ねながらつづいていくことを示唆した。

現在、ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメントでは『ジョーカー』のリリースを記念してフォロー&ツイートキャンペーンを開催しており、その内容は、DC公式Twitterをフォローしたうえで指定のハッシュタグ「#まだジョーカー観てません」をつけ、本作を「観ていない理由」を投稿するという、なんともユニークなものだ。さらに2月7日(金)からは、『ジョーカー〈アカデミー賞最多ノミネート記念〉』として、IMAXやドルビーシネマでの再上映が決定しているという(一部劇場を除く)。

全世界興行収入1000億円を突破し、各賞レースを賑わすなどR指定映画では異例の話題作となった『ジョーカー』。日本時間2月10日(現地時間2月9日)に実施される第92回アカデミー賞を席巻すること間違いなしの本作を、劇場でも自宅でも楽しんでほしい。(Movie Walker・文/久保田 和馬)