岸田教団&THE明星ロケッツが「nameless story」をリリース!「“最近の私たちはこうです!”と、渡してまわりたいくらいの1枚です」【インタビュー後編】

岸田教団&THE明星ロケッツが「nameless story」をリリース!「“最近の私たちはこうです!”と、渡してまわりたいくらいの1枚です」【インタビュー後編】

 岸田教団&THE明星ロケッツがTVアニメ『とある科学の超電磁砲T』EDテーマ「nameless story」をリリース。メンバーの岸田、ichigoが楽曲制作や、作品の魅力について聞いたインタビューがアニメディア2020年2月号に掲載されている。超!アニメディアでは、本誌に掲載できなかった分を含めた特別版を紹介。今回はインタビューの後編をお届け。■『ストライク・ザ・ブラッド』は電撃文庫の象徴

ーーカップリングには『ストライク・ザ・ブラッドIV』のOPテーマ「暁のカレイドブラッド」を収録。『ストブラ』関連の曲は、今回で4曲目とのこと。

岸田 とりあえずガンガンにやりました(笑)。『ストブラ』の曲は今回で4曲目なんですけど、1曲目の「ストライク・ザ・ブラッド」では『ストブラ』らしさ、2曲目の「Blood on the EDGE」では電撃文庫らしさを意識してメタルっぽく、3曲目の「Blood and Emotions」は電子音を入れて藍羽浅葱のイメージを押し出しました。とは言っても『ストブラ』は、やっぱり暁古城くんと姫柊雪菜ちゃんです。「最初に戻ろう」というオーダーもあったので、1期のOPテーマだった「ストライク・ザ・ブラッド」を意識しました。

ichigo 今回は、いっぱいカタカナ言葉を歌いました。日常では使わない言葉ばかりで、「シルバーバレット」とか「アーキテクチャ」とか。でもこういうのは必殺技を叫ぶのといっしょで、どれだけテンションを上げて言えるかなので、すごく楽しかったです。こういう瞬発的な速度で歌うことには自信があるので!

ーーもともと早口言葉的なものが得意だったとか?

ichigo 得意だったわけじゃないけど、こういう曲をいくつも歌っていくうちに鍛えられました(笑)。でも「シルバーバレット」は、バーとバが続いているから、本当は歌いにくいんです。でも「これを余裕で歌えるのは私しかいない!」と思って、がんばりました。みんなもカラオケで歌ってみてください。本当に歌いにくいので。

ーー「シルバーバレット」は、吸血鬼や狼男を倒す弾丸ですよね?

岸田 そう。そこから転じて金融やITの世界では、危機的状況を一発で解決できる対処法みたいな意味があって、英語の慣用句としても存在する言葉です。2番に出てくる「アーキテクチャ」も本来は建築用語だけどソフトウェアの設計思想という意味もあるので、歌詞では後者の意味で使っています。

ーーファンタジーとIT用語の両方の意味があるのは、『ストブラ』の世界観とも合いますね。

岸田 シルバーバレットは伝奇的から生まれてITで使われている、『ストブラ』を象徴するような言葉なので、いつか使いたいと思っていたんです。そしてイメージカラーの青という、その3点をすごく意識しています。

ichigo 『ストブラ』って吸血鬼がモチーフだから血のイメージで赤の印象ですけど、キービジュアルのイメージカラーは青なんです。そういう意味では、曲も熱くなりすぎてはダメで、どこかクールさがないといけないと思って意識しました。

岸田 熱くなりすぎると、電撃文庫感がなくなるんです。僕的には、電撃文庫のノリの最たるものが『ストブラ』だと思っていて。

ーー電撃文庫を色で表すと青だと。

岸田 そう。他のラノベレーベルよりも、クールなイメージです。SF色がちょっとあって、少しスンッとした感じがあって……。メディアファクトリーは、『ゼロの使い魔』のイメージが強い。もう少し言うと、メディアファクトリーは昔の富士見ファンタジアっぽいと言うか。富士見ファンタジアは、途中で変わっちゃったから。そういう感じで、電撃文庫はちょっとクールなんです。

――そうなんですね。

岸田 本来電撃文庫って、初期は今よりもバキバキの作品を扱っていて、そのノリがふわっと残っていると感じるのが『ストライク・ザ・ブラッド』です。だから、自分でも「これが電撃だ」と思う曲じゃないと、自分的に納得できないと思って。だから電撃文庫感を感じてもらえたら、すごくうれしいですね。ただ昔の電撃文庫っぽさかな、今と言うよりは。

ichigo 私は今、「ああ、そうなんだ」って思いながら聞いてるよ(笑)。要は「やれやれ系」ってこと?

岸田 やれやれ系が出てくる、もっと前だね。だってやれやれ系は、スニーカー文庫じゃない? 初期の電撃文庫はやれやれどころか、空が灰色で~とか、陰鬱な毎日を送っていて~みたいな作品ばかりで。『新世紀エヴァンゲリオン』ショックがモロに直撃してできたようなレーベルで、それこそ本当にエモエモだったんだよ。そして、よくわからない敵が出てくるというのもあって……。

ichigo はいはい。もういいから『ストブラ』の話をして(笑)。

岸田 そんな時代の電撃作品の空気をまとっているのが『ストブラ』だから、当時の電撃作品のカラーを意識して歌詞を書きました。だから、意味がわかるとかわからないじゃないんです。感じろ、この息吹を! みたいな。そしてむやみに存在のでかい主語。すぐ星とか言っちゃう(笑)。

ーーそうなんですね。「ウォウウォウ」と、みんなで歌えるコーラスが入っているので、ライブで盛り上がりそうですね。

岸田 ですね。実は2015年にリリースしたアニメ『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』のOPテーマ「GATE~それは暁のように~」にも、「ウォウウォウ」と歌うコーラスが入っていて。僕のなかでは「GATE~」が基準になっているところがあるんです。「GATE~」をもっとエモくしたのが「nameless story」で、「GATE~」をもっとダークにしたのが「暁のカレイドブラッド」というイメージです。

ーー「GATE~それは暁のように~」は、岸田教団&THE明星ロケッツにとって重要な曲であると。

岸田 バンドのもともと持っているカラーが、いちばんわかりやすく出ている曲です。バンドの基本がここにある。“同人”時代に作った「星空ロジック」もそうですけど、この流れにあるのが逃れようのない事実なので、それに向き合っていくと言うか。だから今回のシングルは、「nameless story」と「暁のカレイドブラッド」の2曲で、僕たちらしさを最大限の振り幅で表現しました。

ーーカップリングのもう1曲「anesthesia」は、ノンタイアップですが、どういう立ち位置ですか?

岸田 これは逆に、思い切り新しいことをしようと思いました。ichigoさんから「曲調がダークだから歌詞もダークで重めのほうがいい」と言われていて、ちょうど映画『ジョーカー』を見たばかりだったからスッと出てきました。

ichigo ダウナーな曲で、サビは激情系という感じの曲です。すごく暗い歌詞で、救いが一切ないし現時点でドン底なんだけど、結局私の声が明るいので、そこまでドン底にならないと言うか。でもそのぶんテクニックを駆使する感じで、歌いがいがありました。

ーー3曲で違う魅力がありますね。

岸田 僕としてはアルバムのつもりで作ったので、3曲を聴いて、ひとつのアルバムのような感じで聴いてもらえたらうれしいです。

ichigo サビの熱量は、やり方は違うけどどの曲にもフルフルに全力を注ぎ込みました。「最近の私たちはこうです!」と、渡してまわりたいくらいの1枚です。

PROFILE
【きしだきょうだん・アンド・ジ・あけぼしロケッツ】同人活動を行っていた岸田(B)の呼びかけで、ichigo(Vo)、みっちゃん(Dr)とともに2007年に結成。2010年にTVアニメ『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』主題歌「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」でメジャーデビュー。アニメ『ストライク・ザ・ブラッド』シリーズや、アニメ『天狼 Sirius the Jaeger』OPテーマなど手がけている。

商品情報
「nameless story」
ワーナーブラザーズより発売中
アーティスト盤:1,800円
通常盤:1,200円(各税抜) 榑林史章