リーガルリリー「没頭することが一番大事」客観視しないことで生まれる音:インタビュー

引用元:MusicVoice
リーガルリリー「没頭することが一番大事」客観視しないことで生まれる音:インタビュー

ガールズ・スリーピースロックバンドのリーガルリリーが2月5日、1stフルアルバム『bedtime story』をリリース。2014年にたかはしほのか(Vo、Gt)とゆきやま(Dr)で結成。2018年7月に海(Ba)が加入し現体制となる。昨年3月におこなわれた米国の音楽フェスティバル『SXSW 2019』に出演。また、昨年9月に公開された映画『惡の華』で主題歌「ハナヒカリ」を担当するなど精力的に活動する勢いのあるバンドだ。本作はシングル曲「ハナヒカリ」を含む収録曲12曲のうち、11曲が新曲の意欲作。作詞作曲を担当するたかはしほのかにインタビューし、制作面や作詞の着想などからバンドの源流に迫った。【取材=平吉賢治】

私のなかでは一番ロック

――最近はどんな音楽を聴いていますか。

 和田アキ子さんを聴いています。めっちゃいい曲だしメロディも凄く良くて。きっかけは友達が「和田アキ子さんって凄くいいよ」って教えてくれたんです。

――音楽のルーツとしてはどのようなものがありますか。

 ビョーク(アイスランドのシンガーソングライター)も好きです。声もメロディの運びかたも、自由にどこにでも進むところとかも好きです。ビョークには影響を受けているかもしれません。今作を作っている時によく聴いていました。『Debut』というアルバムが好きです。

――年末年始にChinese Football(中・ロックバンド)とおこなった中国でのツアー『Chinese Football Regallily NEW YEAR TOUR 新年巡演“She runs withs me so emotional”』はいかがでしたか。

 人がたくさん来て嬉しかったです。お客さんの乗りが日本とは違う感じで、アメリカなどに近い感じだと思いました。自然に体が動いていて、みんなまわりを気にせずに踊るような。凄く良かったです。

――手応えがあったのですね。さて、今作についてですがテーマはありますか。

 1曲目の「ベッドタウン」から最後の曲「bedtime story」と、物語みたいなコンセプトがあります。まず全曲出来たあとに『bedtime story』というアルバム名をベースの海が出してくれたんです。意味合い的には1曲1曲ずつが、母親が子供を夜寝かせるために読む絵本みたいだなと思って『bedtime story』というタイトルがいいんじゃないかとなりました。そのあとにセッションで作った曲がめちゃめちゃ“bedtime story感”があって、それを最後の曲にしました。1曲目「ベッドタウン」は、もともと1曲目にしたら格好良いだろうなと思って作った曲がベッド繋がりでふと出てきたんです。これは奇跡が起こったと思いました。

――今作では12曲中11曲が新曲ですね。

 こんなに一気に曲を作ったのは初めてかもしれないです。

――今作は全曲作詞作曲がたかはしさんですが、どのように制作を進めるのでしょうか。

 家で2年くらいかけてためてきた歌詞やポエムや考えがあって、全部メモしていたんです。それを2カ月くらいかけてまとめるという作業をしました。サウンドは、その時に影響を受けたバンドとかを色々入れつつです。今回だとブラー(英・ロックバンド)とかペイヴメント(米・ロックバンド)とかです。

――そのあたりのオルタナティブロックの雰囲気は確かに感じられます。

 ニルヴァーナ(米・ロックバンド)以降のバンドも好きですし。もの凄く上手くなくても出来る音楽というか、そういう存在に救われたので。誰でも音楽をやっていいんだなって。

――ある種、逆の立ち位置とも言えるような、テクニックが凄いハードロックなどはあまり聴かなかった?

 どちらかというと嫌いでした(笑)。隙とかがないというか…。

――ニルヴァーナが出てきたあたりからロックシーンが変わったようにも思えるんです。

 オルタナティブロックというのが本格的に始まった気がします。

――好きな音楽としてはロックが核にある?

 あります。

――たかはしさんにとってロックとはどういうものでしょうか。

 誰かが「続けることだ」と、思想を貫き通すのがロックだと言っていて、私もそう思います。

――芯があってブレない、という感じは確かにロックですね。

 迷いまくってるボーカルとかを見ると「ロックじゃない」と思ったりします。「ちょっと女々しいぞ」って(笑)。

――今作にはロックが詰め込まれていますか?

 はい。私のなかでは一番ロックだと思います。

――楽曲についてですが、「GOLD TRAIN」は疾走感と清涼感のあるナンバーですね。この楽曲の制作はスムーズにいきましたか。

 最初は弾き語りでやっていたんですけど、バンドアレンジを重ねていったら一番長くかかったんです。もともとは疾走感のある曲じゃなくて、ゆっくりの波みたいな曲だったんです。でも「GOLD TRAIN」だから、私のイメージなんですけど電車は遠くから見るとゆっくりに感じるじゃないですか? だからそういう曲でもいいかなと思ったんですけど、近くで見てシューンと通り過ぎていくような疾走感が音像的に欲しくて。歌詞は遠くから見たような感じなんです。両方一緒だとつまらないからと思って。

――歌詞に句読点が使われているのが印象的です。

 子供の時からの癖で、ちょっと休憩というか、ふっと付けちゃうんです。逆に句読点が付いてないところが気になるんです。もし句読点がない場合だと歌詞として温かく感じるんですけど、句読点を付けると、付いているところが温かく見えすぎて付いてないところが冷たく感じてしまうみたいな。そういうのが面白いなって思います。

――受け手が音を聞かずとも何かを感じ取れるという、ある種のテクニックかもしれませんね。

 確かに。それ、いいですね。あとびっくりマークも好きです!

――感嘆符が歌詞にあるとだいぶ印象が変わりますよね。3曲目の「1997」ですが、この数字に込められた想いは何でしょうか。

 私の生まれた年です。自分のことを考えれば考えるほど、たどり着くのは生まれた日で。生まれた日というのは私自身は覚えていないけど、まわりの人が私が生まれた日のことを覚えていることは凄く良いなと思って。そのあとに私が自分をつくりあげていくというか。まわりの人はゼロの時の私を知っているわけだから、安心感とかもあるんです。そういうのを考えていて救われました。「今のままの自分でいいのか」とかよく考えていた時期があって。

――<私は私の世界の実験台>という歌詞が印象的でした。サウンド面では、全体的に色んなアレンジがありますね。グロッケンの音が入っている曲もあったり。

 グロッケンはいずれ入れたいなと思っていて、今作でやっと入れることができたんです。

――とても綺麗な音やポップなアプローチがありつつも、要所でオルタナティブロックの要素を強く感じました。

 嬉しいです!