名曲封印「バカだった。後悔した」…梓みちよさん悼む

引用元:スポーツ報知
名曲封印「バカだった。後悔した」…梓みちよさん悼む

 「こんにちは赤ちゃん」「二人でお酒を」などのヒット曲で知られる歌手の梓みちよ(あずさ・みちよ、本名・林美千代=はやし・みちよ)さんが急死していたことが3日、分かった。76歳だった。所属事務所によると、先月29日に都内の自宅で亡くなっているのをマネジャーが見つけた。我が子の誕生を喜ぶ「こんにちは―」は国民的な人気に。60~70年代の歌謡界を支えた立役者のひとりだった。

 2年前にレコード大賞の連載企画を担当した時に、「こんにちは赤ちゃん」で大賞を受賞した梓さんにお話を聞いた。待ち合わせ場所の外でご婦人をお見かけした。つえをついてちょっと歩きづらそうにしていて、こちらが手を貸そうとすると梓さんだった。「二人でお酒を」を颯爽(さっそう)と歌うイメージが強かったせいか、正直かなり体力的に弱っているのかなと感じた。

 しかし、昔話になると表情も生き生きとなって「まだ子供もいないのに、なんで私が赤ちゃんの歌を歌わなきゃいけないの」「レコ大の知らせを聞いたのは夜半で、事務所の社長だった渡辺晋さんより美佐さんの方が喜んで、授賞式に着ていく衣装の心配をしていた」と饒舌(じょうぜつ)だった。

 一番の心残りは「こんにちは―」を歌うことを、ある瞬間から封印していたことだろう。「生意気にも私は『赤ちゃん』の梓じゃない。いろんな曲を歌えるのって思って、背を向けたのね。バカだった。米国で日系一世、二世の方の前で歌った時、皆さんが涙を流していたのを見て後悔した」としみじみと語っていた。

 企画では橋幸夫さん、布施明さん、五木ひろしさん、八代亜紀さんら大賞経験者を取材したが、皆さん写真撮影をOKしてくれたが、梓さんは「こんなおばあちゃんの姿じゃなく、昔の写真を使って」。笑顔でこちらの要望を流したところに、往年の姉御気質を感じた。(特別編集委員・国分 敦) 報知新聞社