沢尻エリカ被告、堂々の証言台 薬物に「制される状態でした」

 MDMAなどを所持したとして麻薬取締法違反の罪に問われた女優、沢尻エリカ被告(33)の初公判が31日、東京地裁で行われた。午後3時に開廷。ポニーテールヘアに黒いパンツスーツ姿の沢尻被告は、裁判官の目をじっと見据え、背筋を伸ばすなど堂々とした振る舞いで証言台の前に立ち、はっきりとした口調で話し始めた。一方、女優業については引退を明言。沢尻被告の今後は…。

 《入廷した沢尻被告は傍聴席を一瞥(いちべつ)して席に着いた。じっと前を見据え、唇は真一文字に。長いまつ毛と深紅の口紅が目を引く。裁判官に呼ばれると、証言台の前へ》

 裁判官「名前は」

 沢尻被告「沢尻エリカと申します」

 裁判官「職業は」

 沢尻被告「無職です」

 《男性検察官が起訴状を朗読。沢尻被告は検察官の顔を見つめる》

 裁判官「公訴事実にどこか間違いは」

 沢尻被告「間違いありません」

 《男性検察官による冒頭陳述が始まる》

 検察官「被告は19歳の頃から、大麻などを使うようになった。平成30(2018)年頃から(合成麻薬の)LSDやMDMAを知人から入手し、保管していた…」

 《続いて女性検察官の証拠説明に移る》

 検察官「被告人が『お守り袋の中にMDMAがある』と申し出たことを記載しています」

 《検察官が押収したMDMAとLSDを示す》

 検察官「今見せたMDMAは全てあなたのものでよいですか」

 沢尻被告「はい」

 《弁護側が証拠説明を行う。主治医作成の報告書を示し、沢尻被告が自身のSNSを閉鎖したことや携帯電話を解約したことを明かした。最後に所属事務所関係者の陳述書を読み上げる》

 弁護人(代読)「個人的には彼女の作品をもう一度見てみたい。しかし仕事は社会の理解と支援がないとできません。彼女も女優への復帰を前提としていません。当社としてもできる支援を続けたい」

 《証人尋問に移る。男性が2人。保釈後に主治医となった精神科医の男性から尋問が始まる》

 証人「大麻は仕事では使っていないが、長い休みが取れたときは『ああ使いたいな』と思って使っていたと。これくらいにしようと思っても、少しずつ量が増えることがあったと。大麻は軽度の依存症があったのではないかと思います」

 弁護人「沢尻さんの治療への取り組みと理解度は」

 証人「スタッフがびっくりするほど真面目にやっています」

 弁護人「退院後の治療計画は」

 証人「通院は月1回程度と考えています。そこで簡単な薬物のキットで検査することも考えています。『薬物をやめる』ということを続けていけるようにしたい」

 弁護人「薬物と決別するためにはどうしたらいいでしょうか」

 証人「薬物については、社会的な孤立がリスクになる。仕事はご家族の飲食店のようなところで働いてみるとか、興味があることを勉強してみるのもいいかもしれないと思っています」

 《検察官が質問する》

 検察官「退院後の通院期間はいつまで」

 証人「依存症を治すのは非常に難しい。薬物をやめ続けてほしいですが、一生通院し続けることでもない。数年たったら間隔をあけたり、薬物を使いたくなったときに相談できる場所としてつながっていたい」

 《次に飲食店を営む沢尻被告の兄が証人として証言台の前に立つ》

 弁護人「沢尻さんが留置されている間、面会には行きましたか」

 証人「4、5回行きました」

 弁護人「様子は」

 証人「やってしまったことの大きさに深く反省していました。家族にも迷惑をかけたと謝罪されました」

 弁護人「今後の生活はどのように」

 証人「交友関係や日々の生活を、私が同居して監督しながら更生に向けてサポートしたい」

 弁護人「沢尻さんの仕事についてはどう考えていますか」

 証人「元の仕事にすぐ戻るのは難しいと思うので、私の方でサポートできることも考えていきたいと思います」

 《検察官が質問する》

 検察官「(沢尻被告の)薬物使用は知っていましたか」

 証人「目の前で使うことはなかったので週刊誌や噂話のような形で聞いていただけでした」

 検察官「薬物に関わる交友関係については知っていましたか」

 証人「薬物使用前提の交友というのは知りませんでした」

 検察官「今回関わったとされる人物の名前は」

 証人「知っていた人もいれば、知らなかった人もいます」

 《沢尻被告に対する被告人質問に移る》

 弁護人「違法薬物を所持していたことについて、仕事上の関係者に対して思うことは」

 沢尻被告「関係者の皆さまには多大なご迷惑をかけ、申し訳なく思っています。撮影中の作品に関しても撮り直しを余儀なくされ、スタッフやキャストの皆さまには大変な負担をかけてしまいました。経済的にも多大な損害を与えてしまい申し訳なく思います」

 《謝罪の言葉を述べる沢尻被告に動揺した様子は見られない》

 弁護人「ご家族には」

 沢尻被告「家族には、とにかくつらい思いをさせました。母は外出できなくなるなど精神的にも苦労をかけた。兄にも心配をかけて裁判にも来てもらって、本当に申し訳なく思っています」

 弁護人「保釈されてからの生活は」

 沢尻被告「病院で生活していました」

 弁護人「病院では何をしていますか」

 沢尻被告「医師の指導の下で薬物が体に与える影響や依存症について学んでいます」

 《弁護人が病院での検査で大麻には精神的な軽度の依存が認められたものの、ほかの薬物には依存がないと診断されたことについて質問する》

 弁護人「検査結果はどのように受け止めましたか」

 沢尻被告「多くの違法薬物に対して依存がなかったのは安心しました。大麻については自分ではコントロールできると思っていたので軽度ですが精神的な依存があったのはショックでした」

 弁護人「違法薬物とは今後どのように」

 沢尻被告「違法薬物とは決別していかなければならないと思っています」

 弁護人「決別するにはどうしたら」

 沢尻被告「違法薬物を断ち切るためにも断続的に病院に通って治療を続けること。誘惑のある悪い環境には立ち入らず生活したいです」

 弁護人「交友関係はどう見直しましたか」

 沢尻被告「薬物と関わりのある人とは関わらないようにしたい」

 弁護人「交友関係を見直すために何をしましたか」

 沢尻被告「携帯電話を解約し、SNSのツールを閉じました」

 弁護人「裁判後の治療計画について教えてください」

 沢尻被告「(診察を受ける)先生から特別な施設の入所は必要ないとのことなので外来で通って診察を受けます」

 弁護人「どのような診察を受けますか」

 沢尻被告「先生からアドバイスをもらって、定期的に尿検査を受けます」

 弁護人「先生からは違法薬物を断ち切るために、どんなことが必要だといわれていますか」

 沢尻被告「安定した社会生活を送ることが最も大事だと」

 弁護人「どのような生活を送る」

 沢尻被告「現段階では決められていませんが、家族とともに決められたらいいと思います」

 弁護人「女優への復帰は考えていますか」

 沢尻被告「考えていません」

 弁護人「そう考えるに至った理由はなんですか」

 沢尻被告「影響力のある立場の人間として、あまりに身勝手な行為により多くの方を裏切り、傷つけてしまいました。その影響は大きく、復帰する資格はないと思っています」

 弁護人「違法薬物は人に何をもたらしますか」

 沢尻被告「自分の中では薬物をコントロールできて、いつでもやめられると思っていましたが、大きな間違いでした。薬物を制する以上に薬物に制される状態でした。現実から逃避した世界で偽りの友情にとらわれ、そこから抜け出すことができませんでした。全てが害だったと心の底から後悔しています」

 《まるで映画やドラマのせりふのように、よどみなく反省の言葉を述べた。続いて男性検察官による質問が始まった》

 検察官「やめるきっかけは、いつでもありましたよね」

 沢尻被告「はい」

 検察官「これまで有名人や芸能人が薬物で逮捕された事件は認知していますよね」

 沢尻被告「はい」

 検察官「(やめられなかった)原因は考えましたか」

 沢尻被告「(薬物を)コントロールできるという自分の甘い考えがありました」

 検察官「なぜ甘い考えを抱いたんですか。本当に薬物をやめる気があるなら『なぜ』かを考える必要があったのでは」

 沢尻被告「…それは今でも自問自答しています」

 検察官「あなたはどうすれば、再犯しないと思いますか」

 沢尻被告「言葉で言うだけでは簡単ですが、しっかりと決意してやらないということを誓うだけだと思います」

 《弁護人が質問する》

 弁護人「通院治療を受けて、万が一薬物を使用したらどうなるか知っていますか」

 沢尻被告「それが分かってしまえば、また逮捕されると思います」

 弁護人「通院をやめたら薬物をやめられないと分かっていますか」

 沢尻被告「はい」

 弁護人「通院への覚悟を教えてください」

 沢尻被告「今度はしっかりと更生して定期的に病院に通って検査を受け続けたいです」

 《裁判官が質問する》

 裁判官「(違法薬物は)法律でいけないことだというのは分かっていますよね」

 沢尻被告「はい」

 裁判官「抵抗感はなかったんですか」

 沢尻被告「偽っているという罪の意識、嘘をついていることの罪悪感はすごくありました」

 裁判官「偽りの友情にとらわれて抜け出せなかったと言っていましたが、勇気を持って断ることはできなかった」

 沢尻被告「交友関係を断ち切ることができませんでした。悪いと思っていましたし、やめたいとも思っていました。結果として断ち切ることができませんでした」

 裁判官「女優に復帰することは考えていないのですか」

 沢尻被告「はい」

 裁判長「今の仕事はどう考えればいいですか」

 沢尻被告「今は無職です」

 《検察側の論告が始まる。男性検察官は懲役1年6月を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求めた。最後に沢尻被告が証言台の前へ》

 沢尻被告「全ては自身の甘さが招いた結果です。後悔しても、しきれない気持ちでいっぱいですが、許されるとは思っていません。しかし、全力で更生していくことが…しっかりと罪の重さを自覚して反省して更生していくことが、自分にできる唯一の償いだと思っています。そして二度とこのようなことを繰り返さないために必ず立ち直っていきたい」

 《抑揚のある声で発言を終え、退廷。約1時間20分にわたる初公判は即日結審し、判決は2月6日に言い渡される》