『前田建設ファンタジー営業部』生みの親語る(1)「“積算”は格別に面白い!」

引用元:マグミクス
『前田建設ファンタジー営業部』生みの親語る(1)「“積算”は格別に面白い!」

 永井豪原作、東映アニメーション制作のアニメ『マジンガーZ』といえば、プールがまっぷたつに割れて、地下からマジンガーZが現れるシーンでおなじみです。この地下格納庫を実際につくったら、総工費はどのくらいになるのでしょうか? 実在する建設会社が架空世界の構造物の設計を本気で検討し、工費の見積もり額をネット上で詳細に公表したことで大きな話題を呼んだのが「前田建設」ファンタジー営業部です。

【画像】実際には造らないが迫力満点!な「ファンタジー営業部」の活躍(11枚)

 前田建設の有志社員たちによるボランティア活動として2003年に始まった「ファンタジー営業部」ですが、『マジンガーZ』の地下格納庫に続いて、『銀河鉄道999』の地球発進用高架橋、『機動戦士ガンダム』の地球連邦軍基地ジャブローなどの各工費を見積もってきました。その活動はネット上の反響の大きさから書籍化され、2013年には舞台化、そして2020年1月31日(金)に実写映画が劇場公開されることになったのです。ファンタジーの世界が現実化した痛快さを感じさせます。

 理数系熱血コメディ映画『前田建設ファンタジー営業部』の公開を前に、「ファンタジー営業部」創設メンバーのリーダーである前田建設工業の岩坂照之さんに、当事者ならではの映画の見どころを語ってもらいました。

――初号試写をご覧になっての感想を聞かせてください。

岩坂照之さん(以下、敬称略) もうダメでした(笑)。映画が始まって、うちのビルがスクリーンに映った瞬間に涙腺が緩んでしまって……。『マジンガーZ』の地下格納庫を手掛けてから16年、いろんな会社の方たちに協力していただき、「本になるといいね」「もしかして映画になったりして」「いやいや、それはないでしょう」なんて話をしてきたんですが、「本当に映画になったんだ」と思うといろんな思い出がよみがえって。17年後にこんな未来が待っているとは予想できませんでした(笑)。

――特にグッときたシーンはありますか?

岩坂 最初の試写は冷静に観ることができませんでしたね。一般の方には楽しくて笑える映画だと思うんですが、ちょっとしたシーンにも泣けてしまって。「発注者を裏切ることはできない」とか「うまくやればやるほど、僕らの仕事は分からないんだよ」みたいな台詞があるんですが、建設業のど真ん中にいた人間としては泣けてしまうんです(笑)。脚本家の上田誠さん、英勉監督は建設業のことをすごく学ばれて、私たちが心の中で思っているような台詞を映画の中にうまく取り込んでくれたと思います。

 試写の時、隣に「ファンタジー営業部」を立ち上げたときの上司が座っていて、当時は喧々諤々の議論を交わしたんです。映画が終わった瞬間、思わず握手をしていました。上司の目もうっすらと涙ぐんでいましたね。