高杉真宙×岸井ゆきの 映画『前田建設ファンタジー営業部』で“無茶ぶり”ミッションに挑戦

引用元:TOKYO HEADLINE WEB
高杉真宙×岸井ゆきの 映画『前田建設ファンタジー営業部』で“無茶ぶり”ミッションに挑戦

 日本が世界に誇る建設物を手掛けてきた前田建設工業が「マジンガーZ」の“あの施設”作りを本気で考えてみた…!? アニメ、マンガ、ゲームといった空想世界に存在する、特徴ある建造物を“本当に受注し現状の技術および材料で建設するとしたらどうなるか”を、リアルに“積算(工事などの費用を見積もること)”するという、前田建設工業〈ファンタジー営業部〉が実際に行っている企画を映画化。あり得ない企画に挑むことになった広報チームの若手ドイとエモトを演じた高杉真宙と岸井ゆきの。本作を経て2人に起きた「変化」とは?

アニメの建造物を作らないけど本気で作ろうとする映画?

  アニメ「マジンガーZ」の地下格納庫兼プールを実際に受注したら、どう作りいくらかかるか、本気で積算を出す…そんな破天荒なミッションに挑んだ会社員たちがいかにして実現させていったのか、笑いとウンチクたっぷりで描く本作。最初に企画を聞いたとき2人の反応は?

高杉真宙(以下:高杉)「実は僕、小学生のころだったか、先生から“前田建設ファンタジー営業部”の話を聞いて、すごく印象に残ったんです。何となくそのことが記憶の片隅にあって、今回お話を頂いたときに、もしかして…と、思い出して。確信がないので“知ってました!”と言わなかったんですけど(笑)」

 前田建設ファンタジー営業部によるコンテンツ連載が始まったのが2003年。当時、子供時代の高杉がその話を聞き印象に残ったというのも、十分うなずける話。一方で、初めてその存在を知った岸井はオファーが来たとき、やや混乱したとか。
岸井ゆきの(以下:岸井)「お話を頂いたときに“マジンガーZ…ではなく、その格納庫を作る話”と聞いて、SFですか?と尋ねたところ“SFではありません。というか、作るといっても本当には作らないんです”と言われ、全く意味が分からない…と(笑)。でも、脚本を読んでみて、なるほどこれは確かにSFではないし、作らないけど作ろうとしている、と納得しました(笑)。架空の建築物を作るとしたらどんな積算になるのかということに本気で取り組んだ人たちがいるんだと分かって、すごく面白いと思いました」

高杉「僕も、建設という自分がまったく知らない分野の話なのに脚本が本当に面白くて、気づいたらどんどん読み進めていたんです。建設分野への興味や知識もほとんど無かった自分がこれほど夢中で読むことができたのは、物語としてもすごく面白かったからだと思います。本当に、読んでいて思わず吹き出しちゃったり、どういう展開になるのか想像もつかなくて目が離せなくなりました。さらに、魅力的なキャストの皆さんも次々と決まっていって、早く映画として見てみたいと自分でもすごく思うようになっていました」

岸井「私も、このキャスティングと英勉監督、ヨーロッパ企画の上田誠さんの脚本ということで、ぜひ参加させていただきたいと思いました。とくにキャスティングでは、上司の役で小木さんが出演されると聞いて、映画に出られるのは珍しいなと思って。私は、以前にコントドラマの『SICKS』で小木さんとご一緒させていただいていて。コントのときは私がおじゃましている心持ちだったんですが、今回は小木さんが映画に仲間入りされるということで、すごく楽しみにしていました。台本を読んでいて、小木さんがアサガワさんとしてそのセリフを言っている姿がすぐ目に浮かびました。それは真宙くんのドイくんもそうだし、皆さん同様でしたね」

 最初は“無意味な”ミッションに戸惑いながら、いつしか一体となって本気で挑む広報室の面々。その一体感は、どの業界で働く人も共感必至。

岸井「現場中にみんなで一緒に本読みをしていたんです。舞台の稽古場などだと、誰かがセリフを練習していると、それに誰かが返して、つながってという感じになることがわりとあるんですけど、ドラマや映画では、あまりああいうことはないから楽しかったし、すごく助かりました」

高杉「撮影に入る前に毎回、その日に撮るシーンの本読みをしましたね」

岸井「5人のシーンって微妙に難しいんですよね(笑)。2人だと、次のセリフは確実に自分だから、セリフが多くてもまだいけるんですけど、5人だとそうはいかない。しかも空気やスピードも大事な中で自分の番を逃してしまうと、けっこうダメージが大きいので(笑)、小木さん発信で、みんなで毎日やっていました」

高杉「小木さんはいつも先にマネジャーさんと練習していて、そこに僕らが入って本読みを始めると“全然、さっきと違うじゃねーか!”って笑いながらマネジャーさんに言っているのがおかしくて(笑)。確かに毎日みんなで本読みできたのは、ありがたかったです。ファンタジー営業部の空気感みたいなものも、あれで生まれた気がします」

岸井「でもただ楽しくやっていただけで、“5人の話だから5人のチーム感を作ろう!”みたいなことは誰も考えてなかったと思います(笑)」

高杉「絶対、考えてない(笑)」

岸井「無茶ぶりも多かったし」

高杉「多かった。アドリブで、返しづらいところで笑わせてきたり(笑)」

岸井「皆さん“足す”のが上手い方ばかりでした。ドイくんは素で笑っているときもあるし、私も掘削オタクのヤマダさん(演・町田啓太)から電話を受けているシーンで小木さんたちのアドリブに返そうと、何だかよく分からないことを言っているし…」

高杉「確かにあのとき、岸井さんが何か不思議なことになっているなと思っていました(笑)。でも上手く返しているなと」
岸井「台本には無いことを、みんながずーっとアレコレ言っていて、でも無視するわけにもいかず…」

高杉「実はあれ、英監督から、4人で盛り上がっていろいろ言っていてくれと言われていたので僕らみんなアドリブで頑張ってたんです。それに返す岸井さんのほうが大変だったと思いますけど(笑)」

岸井「まあ…その…台本にとらわれないものづくりとでも言いますか…(笑)、そういうお芝居を大事にしていました」
 2人の共演は『モンテ・クリスト伯』以来。

岸井「以前は作品の内容的にも、セリフの掛け合いというより一つひとつを飲み込んでいくという感じだったので、今回、真宙くんとポンポンと会話ができることがすごく新鮮でした。ドイが“エモトさん、寝てたでしょ”ってつっこむシーンとか、私たち、こんなコミカルなやり取りができるんだ!って(笑)。空想の世界に、一緒に夢を持って取り組めて楽しかったです」

高杉「同僚として同じ会社にいるという設定が新鮮で、うれしかったですよね」

岸井「今回、ケラケラ笑う真宙くんとか、イジられて困っている真宙くんとか、小木さんと上地さんの会話を横で聞きながら1人笑っている真宙くんを見ることができたのはよかったです(笑)」

高杉「僕も岸井さんが、こんなにお話ししやすい方だとは思っていなくて。明るくてお茶目な部分もあって、5人で話をしているときも岸井さんがいらっしゃるおかげで現場がすごく明るくなりました」

本作ではダムやトンネルなど普段はなかなか見ることができない“現場”でもロケを敢行。

岸井「長島ダムのシーン、すごく迫力があってビックリしました。私はあそこに行っていないので、うらやましかったです。真宙くんは、あれを生で見たんですもんね」

高杉「見ましたよ、本当にすごかったです。あのドイの反応は、僕のリアルな驚きが入っています。放出される水の勢いと量とか、その水を汲みあげるポンプの轟音に圧倒されました。すごく急な階段を降りてダムの下のほうまで行ったんですが“ドラクエ”のダンジョンに潜っていくような感覚になりました。あと、あの六角精児さんが演じるフワの解説シーンは、セリフじゃないんです。実は台本には何も書かれていない場面なんです。それを事前に調べて、あの場でリアルに解説できるなんて、六角さんかっこいいなと思いました」

岸井「それは確かにかっこいいですね」

高杉「僕はエモトさんとヤマダさんとのシーンが気になりました。すごく現場感のある場所が急にライティングが変わって、いい雰囲気でしたよね(笑)」

岸井「あそこもICI総合センターという前田建設さんの施設なんです。真宙くんと一緒に行ったトンネルもすごかったですよね。掘っている様子はもちろん、“ドリルアンカー”とか“ロックボルト”とか、かっこいいものがたくさんあって。建設中のトンネルの内部に入ることなんて人生でもう二度とないだろうなと思います」

高杉「僕も、もう1回入りたいです。本当に楽しかったですもん」

岸井「入りたいですよね。日本中のトンネルが、ああやって人の手によって作られているんだなと感じて、今ではトンネルを通るたびに“わあ~”となります(笑)。これまでは、トンネルに入ってしまうと景色が見えない、なんて思っていたのに、ここもあんな作業をしたんだな、とかすごい長さだな、とか思うようになりました」

高杉「なりますよね。僕も、ああいった建設物の見方がまったく変わりました。この作品を撮影した後なんですが、鹿児島県でものすごく長いトンネルを通ったことがあって、すごい長さだな、これにどれくらいかけたんだろう…と、ずっとトンネルのことを考えていました(笑)」

 見方の変化とともにいろいろな建設物への興味も増した様子。

岸井「六本木に、すごく不思議なデザインのビルができるらしいですよね。下が細くて上の方が広くなっているという」

高杉「僕も、それネットで見て気になっていました。日本では地震が多いからあまりああいったデザインのビルを建設しないものだと思っていたんですが…不可能を可能にする建設のプロがいるんでしょうね。昨年オープンした渋谷スクランブルスクエアも気になっています。渋谷を一望できるという展望スペースを見てみたい」

岸井「あと私、トンネルや巨大建築物だけでなく、普段あまり意識せず使っているエスカレーターやエレベーターなども、人が作って管理しているんだなと思うようになりました。街を歩いていても、まったく見方が変わりました」
高杉「施設や設備もそうですけど、実際に前田建設さんの社員の方々ともお会いして、ものづくりに携わる方々の姿も印象に残りました。夢と情熱にあふれていて、1つ質問すると100で返してくれるような、本当にものづくりが好きなんだな、と。僕が普段お会いする人たち、監督だったりスタッフさんだったりは、面白がってものを作る人が多い印象なんですが、それはどの業界でも夢を実現しようとする人は同じなんだ、と思いました。楽しんで仕事をするかっこいい大人は、日本のいたるところにいるんだなと改めて思いましたね」

 あのレジェンドとの夢の共演も実現。

高杉「僕はデビルマンも大好きだったので、永井豪先生との共演は夢のようでした」

岸井「私も“ホンモノの永井先生だ!”とビックリしました(笑)。私もロボットやアニメには疎いんですがデビルマンは好きで新作アニメも見ていたので感激でした」

 実はマジンガーZは、人が乗り込むロボットの先駆け。永井氏がそれを思い付いたのも、ふとした空想からだったとか。2人が何かを空想するとしたら…?

岸井「私は映画館や劇場が好きなので“折りたたんで、どこにでも持ち運べる映画館”ができたらいいな、と思います。映画館の空間全体が好きなので、いつでもどこでもお気に入りの映画館で過ごせたら…。誰か、作ってください(笑)!」
高杉「それステキですね。僕はやっぱり車かな。見た目は普通の車なんだけど、中に入るとすごく広い空間になっていて、家みたいにくつろげたり全然違う空間につながっていて。運転は完全自動で車にお任せできて、車の中で自由に過ごしている間に現場に着く。…最高(笑)。でもどっちのアイデアも“どこでもドア”さえあれば解決かも(笑)」

岸井「確かに(笑)。やっぱり日本のアニメってすごい」

高杉「発想力は大事ですね(笑)」

(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)