岩井俊二、『ラストレター』の主題歌はイソップ童話から着想 「今の世界を映している」と思う理由

引用元:J-WAVE NEWS
岩井俊二、『ラストレター』の主題歌はイソップ童話から着想 「今の世界を映している」と思う理由

1995年に公開された岩井俊二監督の映画『Love Letter』。中山美穂と豊川悦司が出演し当時の若者が大熱狂した。その後、アジア各国で公開され、いまだにロケ地になった北海道小樽には聖地巡礼をする若い女性の姿が後を絶たない。

そんな国際的にも人気の岩井が手掛けた待望の最新映画『ラストレター』。『Love Letter』から経た25年という年月と新作『ラストレター』に込めた思いを岩井に訊いた。

【1月16日(木)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/木曜担当ニュースアドバイザー:堀 潤)】

手書きの大切さが自分の中に戻ってきた

『ラストレター』は『Love Letter』や2017年にアニメ映画にもなった映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』にも通じるような、甘く切ないラブストーリーだ。

・『ラストレター』あらすじ

裕里(松たか子)の姉の未咲が、亡くなった。裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美(広瀬すず)から、未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)と再会することに。勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。その内のひとつの手紙が鮎美に届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎(回想・神木隆之介)と未咲(回想・広瀬すず)、そして裕里(回想・森七菜)の学生時代の淡い初恋の思い出を辿りだす。ひょんなことから彼らを繋いだ手紙は、未咲の死の真相、そして過去と現在、心に蓋をしてきたそれぞれの初恋の想いを、時を超えて動かしていく―――
(映画『ラストレター』公式サイトより)

堀は、この映画の原作であり岩井が執筆した小説『ラストレター』(文藝春秋)をもとにした中国版の映画を移動中の機内で泣きながら観ていたようで、「僕たちがどこかに置いてきた同じ切なさや漠然とした喪失感に対しての不安は国境を越えて共感を得るものだと感じた」と感想を述べた。

堀:なぜこのタイミングで『ラストレター』を作ろうと思ったのでしょうか?
岩井:ある女の人が夫とケンカになりスマホを壊されてしまい、そこから手紙を書くしか方法がなくなるというストーリーを思いついて、これは『Love Letter』のように面白い話になるかもしれないと思いました。それからワンシーンずつ増やすようなかたちで仕上げていきました。
堀:手紙を書くシーンは秘め事感があり観客側としてドキドキしました。書くことはものすごく思いがこもる作業なんですね。
岩井:そうですね。『Love Letter』の公開当時は手紙が当たり前の世の中だったので、手書きはそれほど思い入れがありませんでした。だから『Love Letter』では中山美穂さん演じる主人公の藤井 樹は手書きではなくワープロを使って手紙を書いているんです。当時の演出としては普通に手紙を書いているだけでは面白くないって発想でした。ところがそれから25年が経ち、あまり手書きをすることがなくなって、逆に手書きをすることの大切さが自分の中に戻ってきましたね。(『ラストレター』では)手書き以外の選択肢以外はなかった。これもまた時代の流れかもしれません。

岩井はいろいろなインタビューで、「『ラストレター』は自伝的な作品」と語っている。

岩井:この映画が直接的に自分の自伝なのかというと少し違うと思います。ただ、『ラストレター』で福山雅治さんが演じた小説家の鏡史郎に、『Love Letter』からの25年で創作してきた自分やたくさんの人と出会った経験など、自分の半生を重ねた部分があります。また、劇中には彼が過去に書いた小説が出てきます。その内容はほとんど語られないけど、大学時代に再会したみさきという女の子のエピソードが書かれているらしいという話は少し出てきます。

この小説は岩井が書いたもので存在するという。

岩井:本一冊分くらいの物語で、福山さんはこの物語を読んだうえで演技されています。鏡史郎は大学時代に彼女とあった深いいろんなことが走馬燈のようによぎっているんだけど、観客はそこを見ることができずもどかしい状態が続く。そういう二重構造になっています。その小説では僕の大学時代のエピソードもふんだんに出てくるので、そういったことを全部含めた意味で、今回の映画は自伝的要素が強いプロジェクトになったと思います。