広瀬すず「底なし」の魅力 岩井俊二の好奇心を揺さぶる“芝居の上手さ”

引用元:オリコン
広瀬すず「底なし」の魅力 岩井俊二の好奇心を揺さぶる“芝居の上手さ”

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第32回 岩井俊二監督

【場面カット】岩井監督が絶賛のコメントを送った森七菜

 『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993年)、『Love Letter』(1995年)、『スワロウテイル』(1996年)、『四月物語』(1998年)など数々の名作を世に送り出してきた岩井俊二監督。ストーリーラインや設定などさまざまな魅力を持つ岩井監督だが、なかでも特筆すべき点が、スクリーンに映し出される女優の美しさだ――。

■岩井俊二監督の新ミューズ広瀬すず&森七菜

 最新作『ラストレター』でも、岩井監督の出身地である宮城県を舞台に、手紙の行き違いから始まった世代の違う男女の恋愛模様がミステリアスに描かれるストーリーは、多くの人の共感を呼んでいるが、なかでも広瀬すず、森七菜という二人の新ミューズが活写されているシーンの瑞々しさや美しさは目を見張る。

 「広瀬さんはかなり初期の段階から彼女でいきたいねというのは(企画・プロデュースの)川村(元気)さんとの間でありました。(アニメ映画の)『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の声を広瀬さんにお願いしていたという縁もありましたが、ポテンシャルからしても是非という思いがあったんです。一方の森さんはビデオオーディションの一人だったのですが、最初に映像を見たときのインパクトがすごかった。100人ぐらい応募があったと思いますが、正直ほぼ即決ぐらい迷いがなかったんです」。

 広瀬は、松たか子演じる岸辺野裕里の姉・未咲の回想シーンと、未咲の娘である遠野鮎美の二役、森は裕里の高校時代の回想シーンと、裕里の娘・颯香の二役を演じる。物語の前半は現実の高校生として、ひと夏の日常を切り取った描写が続く。

 「二人に関しては、見せ場はずいぶん後半、回想シーンになってから。逆に言えば前半は物語のメインではないので、遊べたんです。衣装を含めて、いわゆる夏休みの日常を切り取った。一緒に布団を敷いたり、片づけたり。おじいちゃん、おばあちゃんの手伝いで掃除したり、宿題したり……」。

 しかし、ここで描かれた広瀬と森のいわゆる“何気ない夏休みの日常”が後半の物語に大きな役割を果たす。

 「彼女たちは後半になるまで、言ってしまえば出てこなくてもいいというぐらいの役割なのですが、そのなかでの前半戦。ともすると駆け足になってしまいがちのなかで、しっかりと表現する余力を二人が持っていたので、古民家や武家屋敷といった古い建物に、今風の子たちが収まって退屈な時間を過ごしていた感じを描くことで、過去と現在のつながりをジンワリと効かせることができました。物語のオンじゃないところに出てきて、そこから滑り込ませて中心に車線変更していくのは簡単そうで難しい。とても計算が必要なのですが、二人とも芝居が上手なので、非常によいアイドリングになったと思います」。