【BUCK-TICK リコメンド】キャリア35年のBUCK-TICKが挑む“逸脱した音楽”とは

引用元:OKMusic
【BUCK-TICK リコメンド】キャリア35年のBUCK-TICKが挑む“逸脱した音楽”とは

昨年末のツアー『THE DAY IN QUESTION 2019』で披露されたニューシングル「堕天使」。ストレートなロックで会場を盛り上げたが、そこには次のアルバムへとつながる実験的アプローチが散りばめられていた。そんな今作を今井 寿(Gu)が語ったキーワードをもとに紐解こう。

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次作への序章となる「堕天使」の実験的アプローチ

 “ちょっと逸脱した音楽”─「堕天使」のリリースにあたり、前アルバム『No.0』(2018年3月発表)後、次なるBUCK-TICKの方向性についてどんなことを考えていたのか、メインコンポーザーである今井に問うたところ、返ってきたキーワードがこの言葉だった。しかしながら、BUCK-TICKサウンドの歴史は実験と挑戦の繰り返しにあると思う。常に革新的なアプローチで作品を生み出してきた彼の言う“ちょっと逸脱した音楽”がどういうものをイメージしているのか、にわかには想像し難い。ましてや、今回のシングルは次のアルバムのイントロダクションになるという。そうなると紐解く手も興味津々だ。

 まず紐解くための材料として、前アルバムの『No.0』がどういう作品だったのか少し振り返ってみたい。このアルバム自体、特にコンセプトを設けず制作されたものだったが、生命の誕生を想起させる「零式13型「愛」」から始まり、終焉を歌う「胎内回帰」で締め括ることで輪廻する宇宙を作り上げた。そのサウンドメイクは、強いヴォーカルを前面に押し出し、バンドの生音と融合する同期音、そしてその隙間をノイズ音が埋め尽くすというとても緻密なものだった。

 では、今回の「堕天使」はどうだろうか。一聴すると2019年に発表した「獣たちの夜」に通ずる、エッジの効いたストレートなロックナンバーだ。しかし、じっくりと聴いてみると実験的アプローチがそこここに仕掛けられているのが分かる。裏打ちのリズムが櫻井敦司(Vo)の粘りを付けたヴォーカルを効果的に聴かせるAメロBメロから、サビになると一転して表拍のリズムで疾走感を煽る。昨年開催されたツアー『THE DAY IN QUESTION 2019』で披露済みのこの曲は、櫻井が“カッコ良いロックです。ノリノリでお願いします”(12月19日大阪公演にて)と紹介していたが、初聴きでこのリズムを掴むのはなかなか難易度が高かったのではないだろうか。

 また、この曲が面白いのは、イントロのギターリフも力強く、全体的にエッジが効いているのに、独特の浮遊感があるところ。“逸脱”のキーワードについてもう少し尋ねたところ、“意識して音数を減らした”と今井は語ってくれた。ところどころ入っていないベース音もそのひとつと言っていたが、それがこの浮遊感につながっているのかもしれない。

 そして、もうひとつ、今回のレコーディングから新しいエフェクターがいくつか投入された。イントロから入ってくるシンセのサイン波のような音も、実はギターの音なのだそう。それらのエフェクターは『THE DAY IN QUESTION 2019』のステージ上でも駆使されていたはずで、そこで自ら体感した音は次作の制作に影響を与えるのではないかと期待している。