俳優・芦川誠さん 週3日で飲んだ“速射砲”のような柳沢慎吾

俳優・芦川誠さん 週3日で飲んだ“速射砲”のような柳沢慎吾

【今だから語れる涙と笑いの酒人生】

 芦川誠(俳優・59歳)

 北野武監督作品の常連俳優、芦川誠さん(59)。公開中の赤穂浪士の台所・財布事情を題材にしたコメディー仕立ての映画「決算!忠臣蔵」に出演しているが、野球好きには伝説の居酒屋「あぶさん」を今も手伝っている。

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「今から約30年ほど前ですかね、『あぶさん』のマスターに『店、手伝ってくれない?』って言われて。昔はプロ野球選手や芸能人もたくさんいらして、一般の方もそれに交ざって一緒に飲んでました。お店に来た選手は名前を挙げればキリがないくらい。当時はすぐツイッターでつぶやかれちゃったりしない、いい時代でした。今はお客さんと飲みながら、映画の話などをしながら楽しくやっています」

 お店には選手グッズなどが所狭しと飾られている。野球談議はそれこそ尽きない店だ。「あぶさん」にはビートたけしも何度も飲みにきている。

「当時、たけしさんの好きな酒はバランタインの30年でした。もちろん店には置いてなくて、近所のスーパーに買いに走ったけど、17年ものしか置いてなくてね。まだ焼酎なんてあまり置いていない頃で、若手の野球選手でも、ヘネシーをジョッキでガブガブ飲んでいた時代でした」

■ビートたけしに頼まれて手伝ったお好み焼きの店

「実は一時期、ビートたけしさんの店を手伝っていたこともあります。荒木町にあったお好み焼きの店です。『やってくれないか』って言われて。大阪の実家がお好み焼き屋だったから、たけしさんが声をかけてくれたんです。17歳で東京に出てきたから、レシピがあるとか、特に作り方を知っているとかじゃなかったけど、3年ぐらい。たけしさんの『その男、凶暴につき』に出演した翌年からだったと思います」

 その後また「あぶさん」に戻って、現在に至るというわけだ。

 芦川さんがよく一緒に飲んだ俳優仲間といえば、「翔んだカップル」で共演した柳沢慎吾。

「週に3回くらい、飲みにいきましたね。よく行ったのは新宿御苑のショーパブです。慎吾はテレビで見るのと同じ、あのまんま。とにかくうるさくて、速射砲のように喋りまくる(笑い)。ものまねを『聞いて! 聞いて! 聞いて!』って、みんなの前で披露してました」

 映画に出演した関係でたけし軍団との縁が深いが、「あぶさん」で飲んでいて印象深いのがダンカン。

「軍団のメンバーは意外にも飲まない人が多いんですよ。そんな中でダンカンさんは寡黙な酒でよく飲む。そして延々と野球の話。しかもダメ出しの話が多い。だから野球選手は一緒に飲むと、逃げ出しちゃう(笑い)」

■酒を飲まない高倉健は乾杯時にグラスに口だけつけて…

 長い役者人生の中では大物と同席することもあった。まだ20代の若い頃に北海道のロケで一緒になったのが高倉健。

「高倉健さんはお酒は飲まなくて、乾杯の時にグラスにちょっとだけ口をつけていました。それが印象的でしたね。後はずっとコーヒーです」

「若い頃は酒飲みの所作を知らなくて、共演の杉浦直樹さんに『おまえが酒、作って出さなきゃダメだろう』って、よく怒られました(笑い)」

 ところで、芦川さん自身はどうか。

「僕はビール党です。何もないオフの日はお風呂に2回ぐらい入って、風呂上がりにビールを飲んでリラックスします。チビチビ飲むのではなく、グーッと飲む。ただ、一軒の店で2時間以上いられないタイプで、ハシゴをする。『あぶさん』で飲むのはプリン体ゼロの缶ビールです。ちょっと尿酸値高めだって言われたんで(笑い)」

「Fish story’s」という劇団の代表でもある。

「最近は役者を目指している若い人たちと酒を飲むのが大好き。楽しいので、酒量が増えちゃいました。安い焼き鳥屋とかでワイワイとね」

 さぞかし芝居の話で盛り上がるのかと思ったら……。

「芝居の話は一切しません。僕自身、自分の芝居についてあれこれと言われるのが好きじゃないんでね。いつもたわいもない話。時々下ネタになったりして」

 役者の仕事がない日は夕方5時から夜中の12時まで「あぶさん」を手伝う。場所は四谷3丁目の新宿通り沿いだ。

 (取材・文=浦上優)