配信で視聴層拡大、復活の「Vシネマ」 本宮泰風が語る「任侠作品」の未来

引用元:オリコン
配信で視聴層拡大、復活の「Vシネマ」 本宮泰風が語る「任侠作品」の未来

 映画公開を目的とせず、ビデオでの販売やレンタルを主とする作品として1989年に東映がスタートした「Vシネマ」。スタートから30年が経過した「Vシネマ」は、中高年のファンから愛され、多くの作品が作られてきたが、ビデオの衰退と共に一時その存続が危ぶまれる時代もあった。だが、近年配信によって、従来のファン以外に若い女性など視聴層を広げているという。なかでもそのシーンをけん引しているのが、シリーズ37作を数えスピンオフも作られている本宮泰風が主演を務める『日本統一』。警察の暴力団への規制強化に伴う規模縮小など、現実では締め上げがきつくなっているなかで、この『日本統一』をはじめとする「任侠作品」がなぜいまだに多くの人に愛されているのか。「Vシネマ」黎明期から多くの作品に携わってきた本宮に、「Vシネマ」の現状と今後について話を聞いた。

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「任侠世界」をBL的視点で見る女性ファンの存在に驚き

 1作目のリリースから6年半、37作を迎えた『日本統一』。だが本宮は当初「ここまで長いシリーズになるとは思っていなかった」と振り返る。
「これまでシリーズもののオリジナルビデオには多々出演してきましたが、収益面など、物理的に続けていくことが不可能になるケースが多く、『日本統一』も継続が危ぶまれた時期がありました。ただ、この作品にはとても愛着を感じていて、一役者としてだけでなく、構成や台本作りにも携わるようになりスタッフや監督を集めるなどして作り続けているうちに、何となく数字がついてくるようになって、今に至ったという感じです」

 『日本統一』は、横浜のチンピラだった本宮演じる氷室蓮司と山口祥行演じる田村悠人が、日本の任侠界でのし上がっていくオリジナルストーリー。小沢仁志、哀川翔、白竜など、日本を代表するVシネマ界のスターが続々と出演し、多くのファンを獲得して、“任侠作品界一番人気の大ヒットシリーズ”と言われるまでに成長した。
 本宮がその手応えを感じたのは、今から約2年前、U-NEXTやHulu、Netflixなどの大手配信サービスが始まった頃だと言う。
「DVDだけでなく、いろいろな媒体で視聴できるようになったことはとても大きかったと思います。SNSに感想を書き込む人も多く、それが人気の拡大につながったと聞いています」

 コアな任侠作品ファンやVシネマファンに支えられてきた『日本統一』だったが、配信サービスの開始によってファン層が拡大。なかには、本宮も驚くこんな現象も生まれた。
「配信会社から、女性のファンが多いと聞いて、とても不思議でした。僕と山口の関係を、BL(ボーイズラブ)みたいな感じで見ているらしいと聞いて、さらに驚きましたね。確かに、この作品の良いところを聞かれたら、僕と山口の関係だと思っていますし、この作品が評価されているポイントもそこにあると思っています。高校時代からの友人である僕らは、間違いなく一番のコンビであり、どんなキャストにも負けない自信がありますので。ですから、女性ファンが言わんとしていることもわからなくはないんですが(笑)」

 本宮と山口の関係はもちろん、結束の強さは他のキャストとの間にも表れている。
「メインキャストは皆、付き合いが長く普段から仲がいいので非常にやりやすいですし、おちゃめな人が多いので、現場はいつも笑いで溢れています。小沢さん、山口、僕のシーンではだいたいアドリブ合戦。小沢さんはテイクを重ねても、前と同じことを絶対にやらないんですよ(笑)」

 そういったことができる背景には、Vシネマ界ならではの環境もあるようだ。
「テレビや映画に比べて条件面でいろいろと厳しいことがあるため、タイトなスケジュールで、セリフも毎日変わったり、ろくにテストもしないまま撮るなど、すごく瞬発力を求められる場面が多いんです。ある意味特殊な現場と言える中で、皆で切磋琢磨している状態で。でも、役者にとっては自由がきく現場なので、やっていて面白いし、何より、役者として一番スキルアップできる世界だと思っています」