ポップス・デュオ「トワ・エ・モワ」 代表曲「虹と雪のバラード」が再注目 あのときのまま「一緒に歌うから崩したりしてない、ずっと同じ歌い方なんです」

引用元:夕刊フジ
ポップス・デュオ「トワ・エ・モワ」 代表曲「虹と雪のバラード」が再注目 あのときのまま「一緒に歌うから崩したりしてない、ずっと同じ歌い方なんです」

 昨年デビュー50周年を迎えたポップス・デュオ。今も輝きを失うことのない数々の名曲を収めた6枚組のベスト盤「FOLK&POP」(ソニー・ミュージックダイレクト)をリリースした。

 芥川澄夫 「50年も半世紀というととてつもない時間だが、いざ振り返ると長くは感じないんです。いまだにトワ・エ・モワが生きているということがすごいね」

 白鳥英美子 「19歳でデビューして、ちょっと疲れて解散したけどやっぱり歌が好きで、縁あって再開して。今では再開してからのほうが長いんです」

 彼らの代表曲が1972年の札幌冬季五輪のテーマソング「虹と雪のバラード」。解散後、再び2人を結びつけたのもこの曲だった。解散から約25年後、98年の長野五輪をきっかけにこの歌を2人で歌う機会があり、再結成へとつながった。

 そして今年、東京五輪のマラソンと競歩が札幌で開催されることになり、再びこの曲が注目されているのだ。

 白鳥 「札幌まで歌いに行きたいですね。こういう曲に巡り合えたことがラッキーでした」

 芥川 「この曲は共作だったんです。当時は深く考えてなかったけど、今になって事の重大さを感じますよ。何だか再デビュー曲みたいな感じになったね」

 2人が出会ったのは、芥川が19歳、白鳥が17歳のとき。

 芥川 「魅力がありましたよ。個性がなさそうで、すごく個性的なの。こういう人は他にいないよね」

 白鳥 「出会ったとき、芥川さんはナベプロ(渡辺プロダクション)の持っていたジャズスポットで司会をしていたんです。だから相当お兄さんに見えたな」

 ■「すみません、嫌です」

 そんな2人がコンビを組んだのは、当時のナベプロの社長だった渡辺晋氏の一言だった。

 芥川 「まだ若かったから、その話をもらったとき、意図が分からなくて何を言ってるんだと思いましたよ」

 白鳥 「私もフォークシンガーを目指していたんで、どうやって2人で歌うんだろうという思いがあって、『すみません、嫌です』って断ったんです。芥川さんも『僕もちょっと…』と言ったそうです」

 とにかく1カ月でレパートリーを3曲作れと命じられて、その力を試されることに。

 白鳥 「悪かったら諦めるといわれて、2人のプライドがむくむく涌いてきたんです。ならかっこいいのを作りましょうとなって、ギターもうまく弾けないのにジャズっぽいアレンジして」

 芥川 「晋さんはニコニコ聴いてましたよ」

 デビューが決まり、衣装代をもらったので、新着を2つあつらえた。

 白鳥 「でも一度も着なかったんです」

 芥川 「僕らの初舞台は日劇の布施明ショーの前座。で、普通の格好で出たんですよ。さすがに晋さんから『栄えある日劇にジーパンで出るとは何ごとだ』と怒られましたが…」

 人気のピーク時はすさまじかった。午前中は青森で午後は九州。で、何日か九州を回って、帰京したらレコーディングという日々が続いた。

 芥川 「忙しくて思考が止まるの。秋田でコンサート前に、有線放送に向かうことになって、途中で疲れ果てて、あぜ道で横になって寝たことがありましたよ」

 白鳥 「デビューしたころは、本当に何も分からないまま、ただやりますって感じでした。でも、このままでは歌が嫌いになってしまうと思って、解散という結論になったんです」

 今回リリースされたベスト盤にはデビューから現在までの足跡がわかる133曲を収めている。

 白鳥 「再開するとき、再びライブに来てくれる人をがっかりさせないようにすることが、私たちの務めだよねって話して…。だからキーは変えないって約束したんです。このベスト盤はその証しのようなものですね」

 芥川 「トワ・エ・モワは一緒に歌うから、ずらしたり、崩したりして歌えないんです。レコーディングと同じ歌い方をずっとしている。あのときのままなんて、すごいでしょ。とりあえず、この先もキーを変えずに歌えるなら、そこまではやるべきだと思っていますよ。どんなに頑張ってもダメなときは来るから、そこまでは撤収しないつもりです」

 白鳥 「これから先、ああしたいとか、こうしたいという展望はないけど、前進はしていきたいですね」(ペン・福田哲士/レイアウト・井坂良貴)

 ■トワ・エ・モワ 芥川澄夫(あくたがわ・すみお、1948年1月30日生まれ、71歳。愛媛県出身)と白鳥英美子(しらとり・えみこ、50年3月16日生まれ、69歳。神奈川県出身)の2人で69年5月、「或る日突然」でデビュー。「誰もいない海」「虹と雪のバラード」などヒットを出すも、73年に解散。芥川は音楽ディレクター、プロデューサーとして活躍。白鳥は結婚後、ソロ歌手として復帰した。98年に再結成し、昨年デビュー50周年を迎えた。