音楽プロデュース担当・蔦谷好位置が明かす 映画『キャッツ』の日本語吹き替え版が出来るまで

音楽プロデュース担当・蔦谷好位置が明かす 映画『キャッツ』の日本語吹き替え版が出来るまで

近年の日本映画界をみていると、ミュージカル映画の健闘が光る。2017年に興収124億円をあげた『美女と野獣』をはじめ、同年に大ヒットを記録した『ラ・ラ・ランド』、さらに翌2018年には、ヒュー・ジャックマン主演の『グレイテスト・ショーマン』も50億円を超える好セールスをあげた。昨年公開されたガイ・リッチー監督が手掛けた実写版『アラジン』も120億円を突破するなど絶好調だ。

そんななか、1月24日には世界中で愛され続けているミュージカルの金字塔「キャッツ」の実写映画が日本公開を迎える。メガホンをとるのは、興収59億円をあげた『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー監督。『レ・ミゼラブル』の劇場公開時には、日本語吹き替え版は制作されなかったが、実写版『キャッツ』では、世界中で日本とドイツの2か国のみで吹き替え版の制作が許可された。その日本語吹き替え版の音楽プロデュースという大役を任されたのが、ミュージシャンであり、数々のアーティストの音楽プロデュースも務めてきた蔦谷好位置だ。多くの人が慣れ親しむ“日本語吹き替え版”だが、実際はどんな作業工程を踏んで完成するのだろうか――蔦谷氏に話を聞いた。

取材・文・撮影:磯部正和
“天才トム・フーパーが作り上げた映画を日本語に吹き替える”という難題 音楽プロデュース担当・蔦谷好位置が明かす 映画『キャッツ』の日本語吹き替え版が出来るまで 音楽プロデュース担当・蔦谷好位置が明かす 映画『キャッツ』の日本語吹き替え版が出来るまで ――世界中で人気のミュージカル「キャッツ」の実写映画化。しかも本国アメリカが吹き替えを許可したのは日本とドイツだけと聞きました。オファーを受けたときは、どんなお気持ちだったのでしょうか?

最初にお話をいただいのはちょうど1年ぐらい前でした。僕は(イルミネーション・エンターテインメント製作のアニメ)『SING/シング』でも、日本語吹き替え版の音楽プロデューサーをやらせてもらったのですが、そのときのスタッフから「なかなか務まる人がいないのですが、蔦谷さんどうですか?」と声をかけていただいたんです。

僕自身、子供のころに劇団四季の「キャッツ」を観たのですが、音楽の素晴らしさに感動して以来、ずっと意識に残っている作品でした。もちろん、クリアしなければいけないハードルの高さは認識していましたが、自分の幼少期の体験を、映画というメディアで今の子供たちに与えることができるチャンスがもらえるなんて素晴らしいことだなと思い、挑戦しようと思ったんです。

――「クリアしなければいけないハードルの高さ」というのは具体的には?

まずトム・フーパー監督のこだわりですね。アーティストとして大天才なわけで、とにかく完璧を求めてずっと編集をやっている。つまりOKとなった映像も音楽もなかなか日本に送られてこないんです。こちらが出来ることといったら、本国のミュージカル版「キャッツ」の音を全部聴き、キーチェックをしつつ、キャスティングされた人の特性を踏まえながら、日本のキャスティングにあたりをつけることぐらい。この作業は非常に難しかったです。

1/4ページ