林海象監督が舞台「かげぜん」を演出

林海象監督が舞台「かげぜん」を演出

 「私立探偵 濱マイク」シリーズの林海象監督が、東京・紀伊國屋ホールで上演される「かげぜん」(1月22日~26日)の演出をする。林監督は昨年、脚本家・坂口理子と劇団「ヤパン・モカル」を立ち上げ下北沢小劇場で旗揚げ公演を行ったばかり。小劇場からいきなりの演劇の聖地への進出に林は「演出家として試されているが、やり甲斐がある」と語り、稽古にもスーツに帽子の“正装”で気合を入れて挑んでいる。

 同作は2010年に東京・東池袋あうるすぽっとで初演され、再演は10年ぶり。終戦間際の混乱期を舞台に、詐欺師の大吾(上遠野太洸)が、造船会社の盲目の未亡人みつ(斉藤とも子)の家に「孫」として入り込み、財産を奪うべくあの手この手を尽くすも 思わぬ展開を迎えていく人情物語。およそ林がこれまで手がけてきた映像作品とはかけ離れた内容で、林も「最後に松竹マークが出てきそうでしょ」と笑う。 林海象監督が舞台「かげぜん」を演出 稽古を行う(写真左から)相楽伊織、斉藤とも子、八神蓮、上遠野太洸(撮影:園田昭彦)  林は映画監督のイメージが強いが、むしろ演劇界との関わりの方が長い。立命館大学中退後に上京し、本当は唐十郎の「状況劇場」に入りたかったそうだが尻込みし、入団したのは寺山修司主宰の「天井桟敷」。状況劇場への思いは、出身俳優・佐野史郎を主演にした監督デビュー映画『夢みるように眠りたい』(1986)や、唐十郎脚本・主演の映画『海ほおずき』(1996)の制作などでかなえた。

 京都造形芸術大学芸術学部映画学科教授時代は、教え子の新進俳優たちのために劇団「姫オペラ」を立ち上げ、映画化もされた長谷川伸・戯曲の「瞼の母」や劇作家サミュエル・ベケットによる戯曲「ゴドーを待ちながら」といった古典作品の演出も手掛けたこともある。 林海象監督が舞台「かげぜん」を演出 林海象が本企画を引き受けた理由の一つが、斉藤とも子(写真左)と仕事ができることだったという(撮影:中山治美)  紀伊國屋ホールとも因縁がある。同ホールでは毎年年末に無声映画観賞会が開催されるのが恒例で、上京したばかりの林も足を運んだ。それがモノクロ・サイレント映画『夢みるように眠りたい』の制作へと繋がったという。林は「そんな場所でまさか自分が芝居の演出をするとは」と喜びを隠せない。

 今回の依頼は、初演の脚本・演出を担当した俳優・増澤ノゾム。増澤は「ヤパン・モカル」のメンバーの一人で、昨年秋に行われた旗揚げ公演「ロスト エンジェルス」の準備中に、再演の話をしたところ林が「演出をやってもいい」と快諾したという。

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