『絶対零度』の成功で決定打 社会派ドラマ枠として復権した“月9”

引用元:オリコン
『絶対零度』の成功で決定打 社会派ドラマ枠として復権した“月9”

 今期のフジテレビ月9ドラマ『絶対零度』が初回視聴率10.6%を獲得。月9ドラマとして7期連続の視聴率2桁発進となり、13日に放送された第2話も10.7%と2周連続2桁をキープした。かつて恋愛ドラマの代名詞だった“月9”はその栄光の歴史もあり、なにかと取り沙汰される。試行錯誤と紆余曲折を感じさせる時期も長らく続いたが、今再びヒット作を連発。本作の好スタートは、硬派な社会派ドラマ枠としての月9枠の完全復活を印象づけている。

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■火曜9時から月9に移り、沢村一樹主演へ。フジ看板ドラマとなった『絶対零度』

 かつてはフジ火曜夜9時枠で、2010年に『未解決事件特命捜査』、2011年に『特殊犯罪潜入捜査』として放送された『絶対零度』。上戸彩の主演だったが2018年、枠を月9に移して、沢村一樹が主演となり『未然犯罪潜入捜査』が放送された。本作はその2シリーズ目だ。

 「未然犯罪捜査班」(通称・ミハン)が、あらゆるビッグデータを解析して割り出された“未来の犯罪者”を潜入・追跡捜査し、犯罪を未然に防ぐ物語で、第1話の冒頭で物語のクライマックスシーンが展開。時間をさかのぼり、何があったのかを辿っていく縦軸の構成が特徴だ。なぜ本作が2週連続視聴率2桁を獲得できたのか。その理由の第一は、シンプルにその設定と構成、ストーリーの「おもしろさ」だろう。衝撃のクライマックスへ迫る、一つひとつの事件で描かれる人間ドラマとキャスト陣の個性的なキャラクターの好演が重なり、毎話挟み込まれるハードなアクションシーンへも好評の声が上がっている。

 また、前作から主演に沢村一樹を据えたことも当たった。『グランメゾン東京』(TBS系)での豪華キャスト陣のなかでもとりわけ印象を残す存在感と芝居も記憶に新しいが、かつての『浅見光彦』(同系)シリーズでもおなじみ。『浅見光彦』は中高年層に人気があったが、昨今では阿部寛など50代の“おじさん”俳優を「かわいい」とする若い世代も多い。そのなかでも沢村は、『サラリーマンNEO』(NHK総合)での「セクスィー部長」が一世を風靡したこともあり、確かな演技力とその人間性が幅広い世代から愛される俳優として、株を急上昇させている。

 筆者は沢村一樹に話を聞いたことがある。彼は前作放送前に「(月9主演に対して)厳しい声が僕に向けられるのも覚悟しています。ですが、痛烈な批判をしている方たちはちゃんとドラマを観てくれている。批判の声はすごく正直な面もあるので、しっかり受け止めようと思いつつ、振り回されてはダメだという思いもあります」と語っていたが、こうした想い、作品への真摯な向き合い方が結果にもつながっているのであろう。SNSでは「沢村一樹の狂気の芝居がヤバい」「ヤバい沢村一樹が帰ってきた」などの声が見られる。