特撮世界にもあった「忠臣蔵」? 怪獣やスーパー戦隊に取り入れられた絶妙さ

引用元:マグミクス
特撮世界にもあった「忠臣蔵」? 怪獣やスーパー戦隊に取り入れられた絶妙さ

 元禄15年12月14日、現在の暦では1月30日、大石内蔵助ら赤穂浪士四十七士が主君・浅野内匠頭の敵である吉良上野介を討ちとった、世にいう「忠臣蔵」。歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』を筆頭に、これまで数多くの劇作品や映画、TVドラマの題材に選ばれてきました。

【画像】時代劇からアニメまで、いろいろ作られた「忠臣蔵」映像作品(6枚)

 昨年2019年には「予算」をテーマに描かれた映画『決算!忠臣蔵』が公開されましたが、近年は「忠臣蔵」をもとにした映画やドラマの製作本数が減少し、「忠臣蔵」を知っている若者は少なくなったとも聞きますが、かつては誰もが知る物語のひとつでした。過去には『サラリーマン忠臣蔵』(1960年)や『わんわん忠臣蔵』(1963年)、『なにわ忠臣蔵』(1997年)など、「忠臣蔵」を翻案した映画作品もさかんに製作され、特撮ジャンルにおいても「忠臣蔵」を題材にした作品が作られていました。

 まず最初に紹介したいのが、ゴジラシリーズの第9作目『怪獣総進撃』(1968年)です。企画段階での題名はまさに『怪獣忠臣蔵』というものでしたが、地球侵略を企むキラアク星人と人類、地球怪獣たちが戦う物語で、「主君の敵を討つ」という話ではないため、ストーリー面では「忠臣蔵」要素が希薄です。

 本作の一番わかりやすい「忠臣蔵」要素は、敵であるキラアク星人でしょう。名前は「忠臣蔵」の悪役である吉良上野介から取られたものです。しかしその姿は銀色の衣裳に身を包んだ女性で、吉良上野介のような高齢の男性ではありません。

 またクライマックスの怪獣バトルは、富士の裾野に集結した総勢11体の怪獣がキラアク星人の基地を襲撃するというものでした。画面いっぱいに怪獣たちが並ぶこの場面は、赤穂浪士たちの討ち入りを彷彿とさせます。地球怪獣の中心にいるゴジラ・ミニラの親子も赤穂浪士の大石内蔵助・主税の親子を意識したものではないでしょうか。ならばキラアク星人が操る宇宙怪獣キングギドラは吉良家の家臣である清水一学でしょう。

「忠臣蔵」は登場人物が多くそれぞれに見せ場がある点、豪華なセットが必要になる点から、各映画会社が威信をかけて製作するオールスター映画の、格好の題材でした。本作『怪獣総進撃』は怪獣たちのオールスター映画として製作され、登場する怪獣の数はゴジラシリーズ史上2番目に多い作品です。『怪獣総進撃』と「忠臣蔵」は“オールスター映画”という作品のセールスポイントが共通しているのです。