『麒麟がくる』流行りのオリジン物語、初の4Kフル撮影…チーフP語る挑戦

『麒麟がくる』流行りのオリジン物語、初の4Kフル撮影…チーフP語る挑戦

長谷川博己が、本能寺の変で知られる智将・明智光秀役を演じるNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)が1月19日よりスタートする。本作を手掛けたのは、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(16)の制作統括などで知られる落合将チーフ・プロデューサーだ。

【写真】池端俊策氏も過去に受賞「向田邦子賞」(第37回(2018年度))贈賞式の様子

大河ドラマ第29作『太平記』(91)を手掛けた池端俊策によるオリジナル脚本で描く本作は、若き明智光秀をはじめ、織田信長、斎藤道三、今川義元、豊臣秀吉、徳川家康など、戦国武将たちが群雄割拠した時代をドラマチックに描く。また、大河ドラマとしては初めて4Kでのフル撮影を敢行。落合チーフ・プロデューサーに、制作秘話を聞いた。

■3年ぶり戦国大河「大河ドラマの使命として」

――今回、戦国時代を舞台にした理由を聞かせてください。

『西郷どん』が幕末を、『いだてん』が近代日本を描いたので、大河ドラマの使命として、今度は王道の戦国時代をやろうという話になりました。私が選んだ戦国時代の「初期」は、あまりやっていなかったし、大河ロマンとして面白いと思いました。最近流行りのオリジンを描く物語として、光秀を中心にすえて、彼の青年期から時代そのものを描くのがいいのではないかという話になりました。

――今の時代に大河ドラマを描く意義についても聞かせてください。

大河ドラマは、日本がどういうふうにできあがってきたのか、今がどういう時代にあるのかという座標みたいなものをエンターテインメントとして見せてきました。時代劇がどんどんなくなっているなかで、若い方や子どもたちに、過去にどういう人間が動いていたのかを伝えるという意義があるのかなと思います。

――4Kでフル撮影されるということで、どのような映像になるのでしょうか?

色鮮やかなロケーション映像が出ますし、衣装については、黒澤和子さんの存在が大きいです。戦国時代はくすんでいたのかと思っていたら、実は派手な色使いを取り入れた時代だったということで、そこのリアリティを取り入れて、色鮮やかな衣装を着ています。4Kでくっきりはっきりした部分を損なわず、エイジングと鮮やかさを両立する映像作りになっています。

■池端俊策脚本で真実を基にしたフィクションに

――どういう経緯で脚本家の池端俊策さんにオファーされたのでしょうか。

僕は昭和43年生まれで、当時やっていたドラマに夢中だった世代です。そのころ観ていた80年代のドラマは、松原敏春さん、市川森一さん、倉本聰さん、山田太一さん、早坂暁さんなど、脚本家のオリジナル作品が多かったです。史実があったとしても、力のある脚本を書かれる方たちばかりで、池端さんは、よく伝記ものを書いてらっしゃいました。

NHKでは古代史三部作や、最近では『夏目漱石の妻』(16)を書いてもらいましたし、『坂の上の雲』(09~11)でも脚本協力をしていただきました。NHKのなかでは、主に歴史ドラマでお世話になった池端さんが、戦国時代をやったことがないということで、2020年という節目の年だし、今までの恩返しも込めて、お願いした次第です。

――今回はこれまでとは違う明智光秀や織田信長が描かれるということで、期待がかかっています。

やはり同じような信長ばかりが出てきても面白くないというか、これまでにさんざん描かれてきましたから。池端さんは、資料をたくさん読み込んで準備する方です。従来のイメージは全く気にしてないし、最新の研究資料もありますので、それらを踏まえて紡がれるオリジナルの物語、真実を基にしたフィクションのドラマとして捉えてらっしゃいます。

■織田信長役・染谷将太らの起用理由

――池端先生が、光秀役の長谷川博己さんを絶賛されていましたが、織田信長役の染谷将太さんのキャスティング理由についても聞かせてください。

信長はとても人気があり、カッコ良くて悲劇的で、神格化されています。今回のドラマでは、信長が15歳から描かれていきますが、池端さんは、母親の存在の欠落によって暗い影を落とした信長像、すなわちアダルトチルドレン的な複雑な信長像をやりたいということでした。そういう意味で、染谷さんのキャスティングは、複雑で影のある信長役にふさわしいと思いました。幅広い表現力がある方なので。

――門脇麦さん演じるヒロインの駒というオリジナルキャラクターについてはいかがですか。

光秀や信長のような武将だけではなく、庶民の目線があったほうが、視聴者は感情移入がしやすいだろうということで、作ったのが駒でした。そこも池端さんのご提案です。演じる門脇麦さんは、幅広い演技力とチャーミングな面を両方持ち合わせているので、庶民の娘役がばっちりハマると思いました。

――斎藤道三役の本木雅弘さんも新鮮でした。

斎藤道三は、父親からのものを受け継ぎ、自分が守護代となる。二代目ならではの新しい知的な道三像を描きたいということで、本木雅弘さんにオファーしました。脚本を読んで快諾していただきましたが、我々の想像を超えた、とても重厚な道三像を作ってくれました。

■プロフィール

落合将(おちあい・まさる)

1968年神奈川県生まれ。1992年にNHK入局。主なプロデュース作品に、連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』、大河ドラマ『平清盛』、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』など。演出作品に『僕はあした十八になる』など。

(C)NHK 山崎伸子