城 南海「今歌える曲が詰まっている」10周年からの“ニュー南海”:インタビュー

引用元:MusicVoice
城 南海「今歌える曲が詰まっている」10周年からの“ニュー南海”:インタビュー

 シンガーの城 南海が12月18日、5thアルバム『one』をリリースした。本作は歌手デビュー10周年を迎えた城の20代最後のオリジナルアルバム。タイトルの『one』には、デビュー時を“0”からのスタートだとすれば、11年目の2020年は10年をベースにした“1”からのスタートという思いが込められている。城のシンガーとしての10年間、故郷の奄美大島にまつわる話、そして本作についての詳細とこれからの“ニュー南海”について、様々な角度から話を聞いた。【取材=平吉賢治】

全曲が“ニュー南海”の5thアルバム『one』

――『ウタアシビ10周年記念ツアー』の感触はいかがでしたか?

 10年ぶんの気持ちを込めた楽しいツアーでした。10周年記念だったので、今作を引っさげてのツアーというよりもオリジナルにカバーと色んな曲を歌わせて頂きました。各会場で編成もアレンジも違ったので、その都度の楽しさがありました。

――東京公演で仰っていた“ニュー南海”という言葉が印象的でした。その言葉は今作にも表れているのでしょうか?

 全曲が“ニュー南海”です! 10周年を経て、新しいことをやってみたいという時期なのかなと思ったんです。これまでやってきた音楽もベースにあるんですけど、デビュー曲を書いて頂いた川村結花さんなど、みなさんとの繋がりのなかで今回を作らせて頂きました。

 私も新しいことをやってみたいと思っていたし、「南海ちゃん、こんな曲やってみたら?」というように、クリエーターのみなさんからのラブレターのようなものも頂いたんです。私も「こうアレンジしたら面白いかも!」というように化学反応が起きて“ニュー南海”になっていきました。応援してくれているみなさんにワクワクして頂ける作品を10周年で出したいという思いもあったので、それが表れたのかなと思います。

――化学反応が起きた今作も、ライブで観た“ニュー南海”からも、「何でも歌える方だ」と思いました。それこそ『ウラアシビ ~10th Anniversary~』では洋楽メインのカバーライブをやったりと。

 洋楽を三味線でアレンジをしたりもしました! あの時はファレル・ウィリアムスやスティングなどをやって、他にもスティーヴィー・ワンダーとか色々候補があったんです。

――それも聴いてみたかったです…音楽のルーツとしては奄美の他に洋楽からも?

 ルーツとしては、もともとは2歳からクラシックピアノもやっていて、洋楽は一番最初に買ったのが中学一年生の時のアヴリル・ラヴィーンなんです。ジャケ買いでした。私は英語が好きで、テストでも学年で一番をとったりしたんです。

――確かに、洋楽カバーでは英語の発音が凄く綺麗だと感じました。

 あれは1曲1曲全部指導して頂いたんです。洋楽も英語も好きなので、ツアーでやるので勉強しようということで、細かい部分も教わったんです。洋楽は本当に好きで、高校生の時に友達とユニットを組んで、アヴリル・ラヴィーンとかエヴァネッセンスなどを学園祭でカバーしてました。

――エヴァネッセンスは意外と感じました。他にも色々聴いていた?

 はい。ビョークも好きですし。あと、アイルランド民謡が奄美に近い感じがあると思うんです。大学の卒業論文はそれについて書いたんです。「奄美とアイルランド民謡の共通点と相違点」という感じの。

――興味深い論文ですね。

 民謡の生まれた背景というのは、辛い歴史があると思うんです。奄美もアイルランドもそうで。ちょっと逸れますけど、沖縄では歌を献上する役職があってそれがメインの島唄なんですけど、奄美は民の歌で、辛い歴史の苦しい時に人々の会話のなかから生まれた言葉がそのまま民謡になって、ずっと歌い継がれてきてるんです。アイルランドもそういう辛い歴史のなかで生まれてきた歌や踊りがあって、どこか物悲しさや響きが似ているんです。

――そういった類似する背景から、歌も似てきていると。

 そうですね。奄美の音楽も沖縄とは音階や言葉が違うんです。奄美は日本の古き良き言葉や音階を残している島なんです。本土ではもうなくなってしまった美しい言葉たちも。島唄を色んなところで歌って「何か懐かしい感じがする」と言われるんですけど、それは日本の大事な心や、繋がっている懐かしさが奄美に残っていて、そう感じるんじゃないかと思います。アイルランドは出て行った人がカントリーやロックになって、そういう音楽の流れと、「懐かしさがある」という共通点を書きました。実際に「奄美とアイルランドの音楽が似ているか」という統計もとって(笑)。

――検証したのですね(笑)。

 そうなんです。保育学科だったんですけど「城は音楽について書いていいぞ」と言われて音楽の論文を書かせて頂きました。

――確かにアイルランドのアーティストの音楽は懐かしさを感じることができるというか、受け入れやすい部分があることが多い気がします。

 U2やエンヤとかも日本で人気ありますもんね。「懐かしさ」という共通点が根源にあるのかなって。心の琴線に触れるというかそういう音の響きでしょうか。

――現在の城さんの源流にも繋がる、相当深いテーマの卒業論文だったのですね。

 一応それで卒業できました(笑)。