“オリジナルガンプラ”の楽しさを広めた『プラモ狂四郎』、受け継がれる“ガンプラは自由”の精神

引用元:オリコン
“オリジナルガンプラ”の楽しさを広めた『プラモ狂四郎』、受け継がれる“ガンプラは自由”の精神

 昨年40周年を迎えた『機動戦士ガンダム』は、今年『ガンプラ40周年』、そして来年は『ガンダムゲーム35週年』と立て続けに“周年”を迎える。ガンダムワールドがこれほど長い期間にわたって多様性のある世界観を広げられた要因として、1980年代前半のガンプラブームは重要なターニングポイントとなっている。そして、そのブームをけん引したのは漫画『プラモ狂四郎』と言っても過言ではないだろう。ここでは、『プラモ狂四郎』の影響により“オリジナルガンプラ”の魅力に目覚めた二人のモデラー・たんこぶ氏、寝太郎23氏の作品を紹介する。

【写真】「プラモ狂四郎」に登場した武者ガンダム、パーフェクトガンダム、FAガンダムなど“憧れ”ガンプラを紹介

■いま挑戦しているのはオリジナル機体のフルスクラッチ(たんこぶ)

 グフカスタム制作にあたって「4回作り直しました」と語るたんこぶ氏。その理由は「完成した作品に納得がいかなかったから」だと説明した。

 「せっかく時間をかけて作ったのに不満を残したままではもったいないじゃないですか。それに子どもの頃、とあるプロモデラーが雑誌で『1つの作品を何度も手直しして完成度を上げていくのも模型の楽しみ方の1つ』と書いていたのを見てかっこいいと思ったのも大きいです」

 ちなみに、3回目の作り直しで本人としては納得いくものができたが、モデラー同士の忘年会で某有名モデラーに「えー、もうちょっとやれるっしょー」と発破をかけられ、「マジかよ~(笑)」と思いつつも、4回目の作り直しを決意したのだという。結果、助言のおかげで『オラザク選手権』で入賞。そのモデラーさんには今も感謝していると笑顔で振り返った。

 こうした“作り直し”は、たんこぶ氏にとってライフワークとなっており、完成度を高めていくことにカタルシスを感じているという。ただ、たんこぶ氏も最初はプラ板工作が苦手だったようで、最初の頃は「定規を使って切っているのに何故か真っ直ぐ切れないこともあった」と豪快に笑った。そうした技術的な“壁”に直面した際は、「とにかくぶっつけ本番でプラ板工作をしました。当然失敗もするんですが、うまくできるまで何度でもやり直しました。そうこうしているうちになんとなく慣れたのだと思います」と、自身の制作エピソードを披露。苦手な工作を繰り返すことで、“慣れ”という形で技術を習得したのだそう。

 では、今後作りたい作品はあるかと聞くと、「今後というか今作っているのですが、子どもの頃から憧れていたオリジナルモビルスーツのフルスクラッチをやっています」と回答した。今までもチャレンジしたことはあったが、これまで完成には至らなかったと話すたんこぶし氏。「今度こそ!」の精神で取り組んでいると楽しそうに語った。

■『プラモ狂四郎』でミキシングによる“改造の楽しさ”を知った(寝太郎23)

 “ミキシングビルドによる改造”と言えば、1980年代前半のガンプラブームを牽引した漫画『プラモ狂四郎』の存在は欠かせない。今回ミキシングによるオリジナル機体を制作した寝太郎23氏も『プラモ狂四郎』がプラモ業界に及ぼした“影響力”を力説した。

 「僕も『プラモ狂四郎』は大好きで、『新プラモ狂四郎』、『超戦士ガンダム野郎』といった関連漫画も読んでいました。自分だけのガンプラを作りたい、という発想は『プラモ狂四郎』を読んでいた“原体験”による影響が大きいと思います」

 腕時計のベルトを使ったパーフェクトガンダム、ドムの脚をつけたパーフェクトジオングの発想に、当時は多くのチビっ子たちが度肝を抜かされたという。「今もモデラーたちに受け継がれている“ガンプラは自由”という考え方は、この時代から連綿と受け継がれている精神だと思います」と、『プラモ狂四郎』の影響は技術面だけでなく、“精神性”にも及んでいると寝太郎23氏は語った。

 そして、今回の作品は人気スマホゲーム『ガンダムブレイカーモバイル(以下、ガンブレ)』がキッカケであり、このゲームはいわゆる“現代版”『プラモ狂四郎』とも言えるのだという。

 「当時、狂四郎たちが体験していたシミュレーションルームには憧れましたし、大人になる頃には漫画の世界が実現すると思っていました(笑)。『ガンブレ』では自分が考えたガンプラを実際に操作できので、ある意味“夢が叶った”とも言えます。もちろん、欲しいパーツがなかなか揃わない、というジレンマもありますが(苦笑)」

 『プラモ狂四郎』に憧れた幼少期と違い、今は自らの手でオリジナルの機体を作ることも可能になった。その点については寝太郎23氏は、「子どもの頃に憧れたミキシングの機体って、ただカッコイイだけじゃなくて凸凹感といいますか、ユルさがあってそこに親しみがありました。僕は作品を作る際にドヤった作例というよりは、見た人が『マネしたい』と思うものを目指しています」と、プラモ制作への思いを語った。

(C)創通・サンライズ