今も圧倒的な存在感を放つメスカリン・ドライヴの『スプーニー・セルフィッシュ・アニマルズ』

引用元:OKMusic
今も圧倒的な存在感を放つメスカリン・ドライヴの『スプーニー・セルフィッシュ・アニマルズ』

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はロックファンの心を今も離さないメスカリン・ドライヴのメジャーデビュー作でもあった『スプーニー・セルフィッシュ・アニマルズ』を取り上げる。
※本稿は2015年に掲載

ブームに流されなかったバンド

メスカリン・ドライヴのメジャーデビューは1989年。この頃の日本の音楽シーンがどうだったのかと言うと、まさにこの年にTV番組『三宅裕司のいかすバンド天国』、通称“イカ天”の放送がスタートしており、ここからバンドブームが始まったと言ってよい。バンドブームには功罪がともにあった。ロックバンドに多様性があることを周知したことは功だったし、明らかに有象無象の輩までもデビューさせてしまったことが罪であろう(バンド側の罪は少なかったのではないかと思う)。また、これは音楽に限ったことではないが、ブームには必ず弊害が付きまとうもので、字義通り、“ある物が一時的に盛んになる”ことであるブームは一時期を過ぎれば衰えていくが、困ったことに、このブームという波が去る時、本来去る必要がなかったものまでさらっていってしまう。ブームがなければ出てこられなかった輩がブームと同時に去るのは仕方がないことであるが、反動と言うべきか、残念なことにブームがなくともメインストリームに居ることができた者すらもそこから去ってしまうという悲しい現象も起こる。

しかし、稀有であるが、そんな状況に見舞われてもブームに流されることなく、しっかりと地に足を着けて立ち続ける存在もある。メスカリン・ドライヴ(後に盟友であったニューエスト・モデルと統合したソウル・フラワー・ユニオンも含めて)はそういった強固なバンドのひとつと断言していい。これは褒め言葉と受け取ってほしいが、誰もが知るヒット曲があるわけでも、アリーナクラスの動員があるバンドではないが、ここまで解散することなく(むしろ統合して)活動を続け、音楽シーンでしっかりと存在感を示しているバンドは彼女ら彼ら以外に見当たらない(ソロアーティストはチラホラ見かける)。その理由ははっきりとしている。