手を出す?俺にとって麗子はストライクゾーンに入らない【梅宮辰夫 最期の「銀幕」破天荒譚】

手を出す?俺にとって麗子はストライクゾーンに入らない【梅宮辰夫 最期の「銀幕」破天荒譚】

【梅宮辰夫 最期の「銀幕」破天荒譚】#3

 2019年12月12日にこの世を去った梅宮辰夫さん(享年81)。梅宮さんにとって遺作の著書となったのが現在発売中の「不良役者 ~梅宮辰夫が語る伝説の銀幕俳優破天荒譚~」(双葉社)だ。自らの映画人生とともに伝説の役者たちとの交流がつづられた珠玉のエピソードの数々を一部再構成してお届けします。

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 若い頃、俺がよく共演した女優のひとりが大原麗子だった。俺の代表作でもある「不良番長」シリーズにも何本か出てもらったし、それ以前は「いろ」「ダニ」「かも」なんて仮名2文字のシリーズ映画でも共演した。俺は女を食いものにする女衒のような役だったし、彼女は俺に弄ばれる側。

 他にも「夜の牝犬」「トルコ風呂」なんてすごいタイトルの映画でも共演している(笑い)。もともと麗子は映画デビュー前から「六本木野獣会」という芸能界の遊び人グループにも入ってたくらいで、かなりはじけた女ではあったんだ。

 じゃあ、手を出したんだろうって詮索されそうだけど、俺にとって麗子はストライクゾーンに入らないから。だってパイオツが全然ないだろ(笑い)。しかも、俺は同業の女には手を出さないのが基本ポリシー。でも、男女の仲じゃないから、お互い何でも話すことができた。まあ、俺にすれば妹みたいな存在だったかな。彼女も困ったことがあると、すぐに俺に相談してきた。

 つきあっている彼氏と手を切りたいんだけど、なかなか相手が首を縦に振ってくれない。だから、一緒に行って話をつけてくれないかって頼まれたこともあった。

 彼女の実家は文京区白山あたりの和菓子屋だったかな。そこに彼女を迎えに行き、そのまま男が待っているという喫茶店に車を飛ばした。

 ひと目見て、ちょっと悪ぶっているだけのチンピラだと分かったよ。女好きのするタイプだけど、性根が据わっているようには見えない。だから、四の五の言ってもしょうがない。俺は単刀直入に切り出したよ。

「そろそろ別れてやれよ。こいつも女優として、これから伸びる時期なんだから。本気で惚れてるんなら、売れるまで待ってもいいだろ? えっ、どうなんだ」

 とくに凄んだわけでもなく、ちょっと睨みつけただけなんだけど、すぐに納得したよ。それ以上、麗子につきまとうこともなかった。まあ、当時の俺は相手の男からしたら、かなり不良っぽく見えたのかもしれない。ただ、このときは麗子が女優として伸びるなんて、これっぽっちも思ってない。嘘も方便だと思って出た言葉だった。

 麗子は映画からテレビに活躍の場を移してから一気にブレークした。ウイスキーのCMも人気に一役買ったし、やがてNHKの大河ドラマ「春日局」にも主演。この頃が絶頂期だったかな。

 しかし、転落も早かった。母親の介護もあったようだし、自分自身、ギラン・バレー症候群という難病との闘いもあった。病気が進行しているとは聞いていたけど、まさか62歳で孤独死するとは思いもしなかった。俺には生き急いだ人生に見えてしょうがない。 (つづく)