藤竜也と倍賞千恵子が語る熟年夫婦のかたち「僕が妻と〈おやすみ〉の握手をする理由」

引用元:婦人公論.jp
藤竜也と倍賞千恵子が語る熟年夫婦のかたち「僕が妻と〈おやすみ〉の握手をする理由」

日本を代表する名優のふたりが、28年ぶりに2019年5月公開の映画『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』で共演した。亭主関白の夫に、粛々と従う妻を演じたふたりという役柄だが、実際の夫婦関係はいかに──(構成=小杉よし子 撮影=木村直軌)

【写真】藤さん、倍賞さんの夫婦関係を円満に保つ秘訣は?

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◆陶芸の次の趣味は「妻」です!?

藤 共演はなんと28年ぶりですよ。

倍賞 前にご一緒したテレビドラマ『愛と哀しみの海 戦艦大和の悲劇』でも夫婦役でしたけど、今回の映画『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』では、結婚50年の円熟した夫婦ですね。

藤 倍賞さんとは家が近いので、僕の家内(元女優の芦川いづみさん)と倍賞さんのご主人(作曲家の小六禮次郎さん)も交えて時々お会いする機会があって。だから28年ぶりという気があまりしませんね。ご近所同士として接触があるわりには仕事で一緒になる機会がなかったんで、今回はうれしいなと思いました。

倍賞 撮影はすごく楽しかった。

藤 お互い、普段の夫婦の空気感をわかっているものですから、自然な感じで夫婦役を演じられました。

倍賞 『戦艦大和』のあとに私、横浜に引っ越して、ご近所さんになったんですよね。藤さんは住んでいる地域の情報に詳しいうえに、多趣味で多才。いろいろと影響を受けています。リキッドという液状のアクリル絵の具で素敵な絵をお描きになっていた時には、私たち夫婦も教えてもらって。楽しくて毎日描いてはどんどんハマり、それはもう、長く続いたんです。

藤 そうそう、ご夫婦でけっこうハマっておられた。

倍賞 とはいっても、藤さんみたいに本格的じゃなくて、ぜんぜん超えられませんけど。

藤 いやいや……。

倍賞 リキッドの絵にハマった後、近所で陶芸をやっている主婦の方と知り合って、そこの陶芸教室に入ったんです。もともと興味があって、いつかやってみたいと思っていたんです。そんな話をしたら、藤さんご夫妻もお仲間に。どんどん腕を上げられて、お庭にものすごく立派な窯も建てましたよね。

藤さんの作品は本当に素晴らしくて、デパートで展示販売されるとたちまち売れちゃう。私はいまだにそこまで到達していませんが、地道に楽しんでますよ。それにしても藤さんちの窯は本格的で大きかった。

藤 2階建ての建物だったから、家内から「目障りよ、なんとかならないの?」ってイヤな顔をされ続けて。思い切って取り払った時には、「あぁ、眺めがよくなって、せいせいした」なんて言われちゃって。(笑)

倍賞 よく思い切りましたね。納得できるところまで到達して、思い残すことはなくなったんですか?

藤 はっきり言えば、飽きちゃってね。窯もだんだん使わなくなって、なのにあの巨大な存在感でしょ。落ち着かなかったんですよ。中に入るとホコリだらけだし。なんだか自分の心が荒れているような気になってしまってね。取り払った跡はとてもきれいになってますよ。

倍賞 そうなんですね。今、陶芸に代わってハマっているものは?

藤 ないですね。困ったな……。じゃあねぇ、「趣味は妻です」とでも言っておきましょうかね。(笑)

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