岡田有希子、現代技術とレガシーの融合「Mariya’s Songbook」CD&LP試聴会

引用元:MusicVoice
岡田有希子、現代技術とレガシーの融合「Mariya’s Songbook」CD&LP試聴会

 1986年4月に他界した岡田有希子さん。2019年10月16日にリリースされたコンピレーション・アルバム『Mariya’s Songbook』のアナログLP重量盤(完全生産限定)が2020年2月26日に発売される。それに伴い都内某所でCD音源とアナログLPとの聴き比べを実地。当時ディレクターを務めた國吉美織氏、2015年にオリジナルアルバム再発の際にマスタリングを担当し、今回のCD及びアナログLP用のマスタリングも手がけた多田雄太氏、プロデューサーである杉村昌子氏も参加し、CDとアナログでの印象の違いを体験した。

■生々しさ、音の揺れによる臨場感

 『Mariya’s Songbook』は、大晦日に行われた『第70回 NHK紅白歌合戦』に出演した竹内まりやが作詞・作曲を担当した作品のみを集めたコンピレーション・アルバムで、岡田さんのデビュー曲である「ファースト・デイト」など全11曲を収録。竹内まりやは、2019年9月に発売した自身のニューアルバム『Turntable』で「ファースト・デイト」、「恋、はじめまして」、「憧れ」をセルフカバーしたのも記憶に新しい。

 今回のアナログ盤リリースの経緯にファンからの「楽曲たちをアナログ盤で聴きたい」「大きなジャケット写真がほしい」などの声があったことから実現した。当時のレコーディングもアナログ機材で行い、まだまだCDも普及していなかった時代で、もともとアナログ盤でリリースすることを前提に作られた作品だけとあって、再び元の鞘に収まったという感覚もある。

 早速、テスト盤が完成したとのことで、都内のマスタリングスタジオで試聴会をおこなった。聴き比べの方法として、CDとLPを同時に再生し、スイッチセレクターで音源を切り替えながらの試聴となった。ちなみに使用したレコードプレーヤーはDENONのDP-60で、スピーカーはmusikelectronic geithainのRL901Kで行った。

 レコードは針で盤の溝をトレースするというシンプルな構造ゆえに、掛けるたびに微妙に違う表情を覗かせ、CDのような安定したピッチではないというところが、ライブ感をより強調させてくれる。アナログ盤の魅力について、マスタリングエンジニアの多田氏は「生々しさ、音の揺れによる臨場感がある」ことを挙げた。

 全体的な傾向としては、44.1kHz/16bitというスペックのCD音源でも、丁寧にミックス、マスタリングが施されているため、アナログに近いダイナミックレンジが豊かで、パキッとした分離の良いサウンドで好感触。改めてCDも音質が良い印象を全員が感じた。アナログ盤はCDのように20kHz以上がバッサリ切られるのではなく、ナチュラルに下降していく高音域が特色で、それによって長時間聴いていても疲れにくい、柔和な優しいサウンドに仕上がっていた。リバーブの馴染みもよく、分離の良いCDやハイレゾ版とは違った音像で楽しめた。

 その柔和なサウンドの副産物としてボリュームを上げてもうるさくならない、アナログの良さが出ていた。國吉氏は「アナログ盤はどんどんまた聴きたくなる音だと感じました。良い演奏や彼女の歌を今の方たちに聴いてもらえる機会を得たことが本当に嬉しい」と話す。

 そして、CDよりもアナログ盤は岡田さんの歌声が自然でなめらか、倍音豊かでスッと入ってくる感覚でいつまでも聴いていたくなる。杉村氏はオーディションで岡田さんを選んだ決め手に、歌の巧さではなく声の質に惚れ込んだという。「いつまでも聴いていられる声」というところで、2014年に他界したプロデューサーの渡辺有三さんと大事にしたいと思ったという。その魅力的なピュアな歌声をアナログ盤でも存分に堪能できる。