なぜ皆『ビックリマン』に夢中になったのか? 舞台化で有村昆らが語る

なぜ皆『ビックリマン』に夢中になったのか? 舞台化で有村昆らが語る

ロッテのチョコレート菓子「ビックリマンチョコ」。おまけとしてついたシールが社会現象にまでなり、アニメもヒット、近年ではAKB48から『進撃の巨人』『FGO』まで様々なコラボレーションを行っている『ビックリマン』が、初の舞台化となり、24日より上演中だ。この巨大コンテンツがなぜここまで愛されてきたのか、ロッテ 広報 本原正明氏によれば「1977年から変わらず『人をビックリさせる・ドッキリさせる』をコンセプトに世の中をビックリさせ続けてきたことが理由」と語る。また、大塚英志『定本 物語消費論』(角川文庫)では、ビックリマンを題材に消費者が物語を創造するという特徴が指摘されていた。

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今回は、企画・プロデュース兼スーパーゼウス役の有村昆、演出の中野智行(PaniCrew)、天野真太郎役の別所ユージ(Bluem of Youth)、スーパーデビル役の川島章良(はんにゃ)、聖フェニックス役のヨンミン(元BOYFRIEND)、ダークマター役のインジュン、天使男ジャック役の丹羽達也(SELLOUT)にインタビュー。出演者のビックリマン愛と、その愛をどう舞台に注ぎ込むのか、たっぷりと話を聞いた。

■たった1枚のシールでヒーローに

――今回は、ぜひみなさんの”ビックリマン愛”を伺っていけたらと思っています。それぞれ『ビックリマン』とはどう関わってこられたんですか?

中野:僕はいま45歳で、小学校の時にはビックリマンチョコに「どっきりシール」が入っていて、そこからキャラクターのシールに変わったことに驚きました。さらにレアなキラキラシールがあることに気づいて、「ホログラムシールってなに!?」という衝撃を覚えています。それがアニメ化されて、どんどん流行っていくのを見てきましたし、レアシールを持ってるやつがクラスで人気者になるのをみて、悔しい思いをしていました。

一同:(笑)

川島:ありましたね~!

中野:3人兄弟なので、一人っ子が羨ましかったですね。力あるものがよりシールを手に入れる。ダブったシールは、時々もらえたりして。

川島:45歳にして見返してやりましたね(笑)。僕は37歳でモロにビックリマン世代で、シールも流行ってアニメもやっていたという、良い世代。でも、人気のシールはひとつも当たらなかったですね(笑)

一同:(笑)

川島:同じ学校の子が、箱買いをしたんですよ。そいつがチョコしかくれなかったのが、今でもむかついています(笑)。箱買いは憧れでした。本当に、キラキラが欲しくて。たまに友達の家に行ったら、キラキラをタンスに貼ってるやつがいるんですよ! 剥がして持って帰りたいくらいの価値がありました。しかも当時はネットで売るということがなかったから、とにかく持っている人がヒーローになれる。1枚で、誰でもヒーローになれるのがすごい。

有村:僕は43歳で、ビックリマンの第一世代。ビックリマン、キン消し(キン肉マン消しゴム)、高橋名人が三種の神器でした。散髪屋さんにいくと最後に必ずビックリマンチョコをくれて、それが欲しいがために髪を切りに行っていました(笑)。国民的シールと言ってもいいと思うんですけど、それが現代ではポケモンや妖怪ウォッチにもつながっていると思います。すばらしいのが、カードの裏に「スーパーゼウスが美女には弱いらしい」とか噂が書いてあって、ちゃんとした”ビックリマン正史”がない。だから頭の中で構想を組み立てて、「きっとこういうことだよ」と学校で友達と話す。想像力をかきたてられました。

別所:僕も46歳で、同じようにビックリマンの前にキン消しとか、練ったら煙出すやつとか……。

一同:(笑)

別所:あとはプロ野球チップスとかもあって、その後にビックリマンが出てきたんですよね。ただ僕は皆さんと違って、親がお菓子に対して拒否反応を持っていたので、おやつはきゅうり一本だったんですよ! みんなは箱買いをしたり、筆箱に貼ったりしてほしかったけど、「いいな」と思いながら、たまにチョコだけもらってました(笑)。キャラクターとかも知らなくて、当時やりたかったなあ。でも俺はチョコで最高に満足でした。おやつのきゅうりがチョコに変わるから、夢のようでした。

有村:チョコもうまいんだよ。

――逆にヨンミンさん、インジュンさんは日本と韓国との違いや、世代の違いもあるのかなと思いますが。

ヨンミン:僕は、ポケモンのシールのためにパンを集めた思い出があります。でもビックリマンも今回たくさん差し入れでいただくので、「聖フェニックスが欲しいな」と思ってるんですけど、まだ当たらないですね(笑)。

インジュン:僕もポケモンシールを集めていたので、同じ感覚なのかなと思ったり。人気のキャラクター出たときの嬉しさとかも、わかる気がします。あまりビックリマン自体については詳しくはなかったので、アニメを見たり、先輩たちに話を聞いたりすると、「大事な思い出だったんだろうな」と感じます。

――お二人とも、ポケモンなんですね。

インジュン:完璧にポケモン世代です! 韓国で人気のアニメ、ポケモンがダントツ!

ヨンミン:あと、ワンピース!

一同:へえ~!!

丹羽:僕は26歳で、同年代の人はビックリマンのことを知らなかったりするんですけど、買っていました。小学生の時に行ってた児童館では、3時のお菓子の時間に60円券がもらえるんですよ。いろいろ駄菓子があるんですけど、ビックリマンを買ったらそれだけで券を使い切っちゃうんです。それでも、みんなビックリマンを買ってました。でもいいシールが出たら、高学年に取られたりして(笑)。キラが出たらお菓子の時間に主役になれるし、みんな児童館のロッカーにシールを貼ったりしてて、そういう思い出があります。

■現代の人気コンテンツにもつながる「ビックリマン」

――世代を超えて、同じ体験をされているのがすごいですね。改めて、ビックリマンのどういうところに、みんなが夢中になったんだと思いますか? 現代で言うとソーシャルゲームのようなランダム要素や、『刀剣乱舞-ONLINE-』『ヒプノシスマイク』のような、キャラクターや楽曲の情報から物語への考察をふくらませるコンテンツにつながっていく感覚なのかなと思いました。

中野:本当に、走りだと思っています。シールに相関図やキャラクター、伏線だけがあって、自分たちの想像力がふくらむじゃないですか。PaniCrewのメンバー(植木豪)が舞台を演出したヒプマイも近い部分があると思うんですが、原点に関わらせてもらって嬉しいです。子供の時にシールの裏を並べて「これってどういう意味?」「実はこの人が仲良いんだ」って、世界をつないでいく感覚で舞台にも関わらせてもらいました。さらに、ビックリマンには新たなシールが発売されるたびにキャラクターが昇格していくという面白さもあって。キャラクターをほったらかしにしないで、成長させていくのが面白かったです。

――シールが当たって嬉しいだけじゃない、ということですね。

川島:天使だったキャラが悪魔になるとか、キャラクターがブラックになるというのもいいですよね。小学校の時は、衝撃でした。子供の時に初めて、人の二面性を学びましたね。ビックリマンで(笑)。良い人にも悪い時もあるし、その逆もある。

有村:当時ビックリマンが爆発的に流行って、似たお菓子がたくさん出たんですよね。でもビックリマンには、キャラクターの二面性があって、ストーリーが進化していく面白さがあった。魔肖ネロがネロ魔身になって崩れていくのが、シールを追っていくとわかる。僕は『スター・ウォーズ』も好きなので、なぜアナキン・スカイウォーカーがダース・ベイダーに落ちてしまったのかというのと似ているようにも思います。舞台では天野真太郎という主人公がいて、我々と地続きの世界観の中に、ビックリマンの物語が続いているという構成になっています。『アベンジャーズ』シリーズのMCU=マーベル・シネマティック・ユニバーサルというものがありますけど、これは”BCU”ですね。新たなビックリマンの世界がある。

川島:さすが、強い言葉出すなあ。

――ロッテ広報の本原氏によると、舞台化は「私としての夢でもありました。2.5次元が流行る中でいつかはビックリマンもと思っていました」とのことですが、今回みなさんはどのようにキャラクターを演じようと思っていますか?

丹羽:僕は天子男ジャック役で、ヤマト王子と一緒に戦う、若神子の1人としてやらせていただいていて、自分の色を出すところと、6人で1つになるところがあり、メンバーでも話し合いながら稽古しているので、本番で見ていただけたら嬉しいです。しっかり迫力あるように見せられたらなと思います。

インジュン:僕はダークマターという悪のトップなんですけど、あまり人気のないキャラクターらしくて(笑)。アニメを見ると仮面をかぶってて顔も見えないし、どうしようかと思ってたんです。でも舞台では顔も見えるし、みなさんが気楽に見れる笑いのシーンもたくさんあるので、悪だけじゃない、いろんな面を自分なりに演じようと思っています。ダークマターというキャラクターもありますよということを、役者としてみなさんにお伝えできれば。少しでも人気になったら嬉しいなという希望もあります。

ヨンミン:僕の演じる聖フェニックスは、仲間たちを大事にしている天使で、まだ弱いんですけど、心は本当に強くて、責任感があります。変身したら強くなれるけど、今はちょっと弱いです。

川島:強いよ! 聖フェニックスは!

ヨンミン:心は強くていい天使です!

別所:僕は唯一キャラクターではなく、天野真太郎という小学校の先生で、家庭を持つお父さんを演じます。家庭の中でも地位が低くて息子ともあんまりコミュニケーションがとれてないけど、子供の頃にシールを集めていたビックリマンのミュージアムに行くことによって、ビックリマンの世界に入っていく。子供の頃はヒーローに憧れてた子が大人になって、どこかヒーローになりたかったことを引きずっているんだけど、ビックリマンの世界に関わる中で、少しずつ人間として成長していきます。

■「ビックリマン愛」のつまった舞台に

――有村さんは、もう今日の服装からスーパーゼウスの主張が。

有村:メルカリで買いました(笑)。僕はスーパーゼウス役なので、天聖界のボスです。舞台は天魔界に押されるところから始まるので、スーパーゼウスとしての威厳をどう出していくのか、というところですね。まさか自分がビックリマンのパッケージの真ん中のキャラクターになるとは思っていませんでしたが、ヒゲとヅラをつけると、ほとんど前が見えない(笑)。そんな中で、頑張りたいと思います。あと、殺陣が多いです。スーパーゼウスだから魔法的な技かと思ったら、意外に杖が座頭市みたいな戦い方をしてるんですよ。こんなに多いとは思わなかったです。

中野:本当に戦っていてかっこいい感じにしたくて。有村さんが刀を振れるせいでこうなったんですよ(笑)。

有村:僕はライトセーバーが大好きなので、ライトセーバーを振ってたらできるようになった(笑)。アナキン・スカイウォーカーの、”アナキン振り”のオマージュを見せます。

中野:アクション、見どころですよ。

川島:僕は、スーパーデビル役で悪の親玉の役だと思ってたら、ダークマターがいて……。

インジュン:ちょっと、忘れないでもらっていいですか?(笑)

川島:おちゃらけ担当なので、気は少し楽になりましたけど、僕はすごく優しい顔なので、悪魔になれるかな? 天使寄りなんですよ(笑)。ただ、この舞台を始めてからスイッチが入ったのか、笑い方が普段から悪魔っぽくなっちゃったんですよね。よしもとの舞台はたくさんありますが、こうして外部の舞台に立つこと自体が初めてなので。いい感じの味になれば嬉しいです。

――中野さんは、演出として「ビックリマン愛」をどういうところに込めているんですか?

中野:今回作るにあたって、アニメも全部おさらいはしたんですけど、最初にシールだけで物語を空想してた頃を思い出して、アニメに引っ張られないようにということは心掛けました。異世界に飛び込む話も流行していますが、今回は物語の中の物語ではなく、ビックリマンの世界に入れるという面白さも意識して。本当に目の前でキャラクターに会えて、自分も物語に参加できるから、脚本家と書いてるときもすごく楽しかったです。物語としても、相関図を守ってくれたら、キャラクターの”x”の部分は役者に任せるところが大きいので、見どころだと思います。あとは、アクション。本気で目を見てちゃんと戦うというところに徹して、戦場にいるような気持ちにもなれるように作りました。特に若い子たちは、みんな汗だくです。

丹羽:めちゃくちゃ膝が痛いです。

インジュン:有村さんがさっき、「アクション多いから大変ですとか」言ってたけど、この中だと1番少ないんですよ!

一同:(笑)

有村:そう、そうなんですよ!(笑)

インジュン:つっこもうかと思ったんですけど! 別所さんも出ずっぱりだし。

有村:そうなんだよな、こっちチームはほどよくなんですよね(笑)。いいシーンで見せられるようにがんばります。

――「今回の舞台は出演者/関係者の熱量がすごい」ということも聞いているんですが、最後にぜひ有村さんから締めの言葉をいただければ。

有村:今回はビックリマンという、今なお続く国民的なお菓子シリーズの舞台化となるわけですが、誰もが少年時代あったわけで、親に「そんなことばかりやってないで勉強しろ」と言われながらも、何かに胸躍らせた記憶があると思います。大人になると失うものもあるし、それと引き換えに得るものも勿論あるんだけど、僕らはビックリマンの世界を失ってないか、ということを問いかけたい。この舞台を見ていただくと、今一度、あのときの何かをおもいだしていただけるんじゃないかなと思います。初めての方にも楽しんでいただけると思いますし、ビックリマンを知っている方は、「俺たちはビックリマンとつながってる」と思っていただければ嬉しいです。

■舞台『ビックリマン ~ザ☆ステージ~』

公演日程:12月24日~29日

会場:品川・六行会ホール

出演者:五十嵐雅、別所ユージ(Bluem of Youth)、悠木ゆうか、長尾有真、牧野澪菜、有村昆、藤田幸哉(劇団ウルトラマンション)、小林正典、ヨンミン(元BOYFRIEND)、伊藤小春(ふわふわ)、大島涼花(元AKB48)、聖矢、川島章良(はんにゃ)、インジュン、K(H5)、椎名ひかり、内田眞由美(元AKB48)、川村海斗(スクランブルガム)、KOCKY(AIRPEN)、田中順也(WhiteA)、二戸優生(【UNIVERSAL BOYS】) 、持田悠生(NetsuAc)、双葉小太郎(9bic)、信賀涼介(BESTIALITY)、吉田翔馬(【SUMITSUKI BOYS】)、松永有紘(NetsuAc)、丹羽達也(SELLOUT)、藤澤勇希、池田絢亮、大誉貴弘、山口拳生、阿部公平、川﨑幹太、額川大和、掛川冬馬、足立華、美桜、栗本唯梨、平衿華

演出:中野智行(PaniCrew)

企画プロデュース:有村昆 佐々木なつみ