50年の時を超えて…日野日出志氏「あしたの地獄」が初の再掲載

 怪奇漫画の巨匠、日野日出志氏(73)が、約450ある全著作と作家人生を振り返る「日野日出志全仕事」(玄光社、税別3400円)があす2日から発売される。

 目玉は1970年に少年画報で発表された「あしたの地獄」。核戦争後の世界を描き、内容の過激さから単行本化が見送られた怪作が50年の時を超えて初めて再掲載される。

 怪奇漫画家仲間の御茶漬海苔氏(59)や犬木加奈子氏(61)のほか、同じ満州(中国東北部)出身のちばてつや氏(80)や里中満智子氏(71)らへのインタビューなど、あらゆる角度から日野氏を分析。後輩怪奇漫画家の伊藤潤二氏(56)との対談もあり、日野氏は「本当はホラーが苦手。日野日出志というペンネームで怪奇漫画家を演じてきた」と明かしている。

 日野氏は昨年、銚子電鉄(千葉県銚子市)のスナック菓子「まずい棒」のキャラクターデザインを手掛けたことをきっかけに“再ブレーク”。作品の再評価が進んでいる。

 著者の文筆家・寺井広樹氏は「見た目のグロテスクさやショッキングさに目が行きがちだった日野作品だが、その奥にある愛や美、人間の本質を読者が再認識し始めたのでないか」と分析している。