声優・徳井青空から“在宅なオタクたち”へ「声優の仕事で知った言葉の力」

引用元:ふたまん+
声優・徳井青空から“在宅なオタクたち”へ「声優の仕事で知った言葉の力」

 あだ名は1000回呼ぶと定着するらしい。みなさんは、ふだん何と呼ばれているだろうか?

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 名前を呼ぶという行為は、発した言葉を通して相手と繋がる感じがする。人見知りで、人と繋がるのが苦手な私は、人の名前を呼ぶことも苦手である。なんとなく緊張するというか、うっすら恥ずかしさもあるような……人の名前を呼ぶことに勇気がいるタイプ。同じような人はいるだろうか?

 子どものころ変なニックネームで呼ばれていた人も、大人になって仕事の場面がメインになると名字で呼ばれることが多いだろう。しかし、最近はだれもがSNSをやっていてアカウント名を持っている。もう一つの名前を持っていることが当たり前になりつつある。

 私のニックネーム「そらまる」もかなり定着した。デビューしたての頃、私はシンプルに「そらちゃん」とみんなに呼ばれていた気がする。だが、まもなくして「そらまる」になる。私はゲームをプレイするときに主人公の名前を「そらまる」としていた。そのことを話したところ、みんなが「そらまる」と呼んでくれるようになったのだ。

 そらまると呼ばれ始めたころは「そらまる」で検索しても私しか出てこなかったが、近年は多くの「そらまる」が登場し男女さまざまな「そらまる」さんのアカウントを見つけることができる。他のそらまるさんはどんなそらまるさんなんだろう? とても気になる。

 さて、人の名前を気軽に呼べない私だが、嫌な言葉や嫌な人の名前を口にするのも抵抗があるのだ。声にしてしまうと、ソレが自分に近づいてくる感じがして。ましてや1000回呼んでしまったら完全に自分と繋がってしまう気がして! なので学校なんかで嫌いな先生に変なニックネームを勝手につけて放課後の愚痴会で披露して盛り上がるなんてのは、私からすれば理にかなった方法だなぁと感じる。

この時間にもっとオタク力を磨きたい

 前置が長くなってしまったが、昨今のアレによって多くのイベントやライブが中止や延期になった。私が出演予定だった『ソンビランドサガ』のライブも、私個人のファンクラブイベントも予定日の開催は叶わなかった。

 原因は、アレだ。アレの影響である。

 せめてなにか参加者に届けられないかと思い、ファンクラブイベントは生配信という形にして開催された。幸い、配信の手配やスタジオの都合がついたので配信することが出来たが、出来なかったところもあるだろう。AJ関連のコンテンツも、配信で少しでも応援してくれるみんなに届けようと力を尽くしてくださっていた。改めて、アニメ業界はファンを大切にしているなぁと私は感じた。

 そんななか、さらにアレの影響で、自宅で過ごす時間が多くなった人も多いはず。オタクはみんなが在宅オタクになってしまったのだ。みんなどう過ごしているだろうか。ゲームしたり、アニメみたり、無人島で家具をクルクル回しているかもしれない。

 漫画やアニメが無料で公開されるようになったり、家から作品を応援できることも多くなった。もちろんコンテンツ側からしたら、いますぐBDや単行本を購入してもらったほうがありがたいに違いない。だが仕事がいつも通りでない人もいるし、ふだんとは違うお財布を考えなくてはいけないだろう。イベントがなくなったことで声優のお仕事にも影響は出る。事務所にもよるけれど、基本的には歩合制で毎月決まったお給料というわけではない。お仕事がなければお給料も無い、厳しい世界である。

 また、その月の分がすぐに入ってくるというわけでもなく、お仕事の依頼があって、出演して、事務所が出演料のやり取りをしてくれて、その後本人に届くのだ。なのでこの春の影響を金銭的に感じるのはもう少し先になる。とはいえ今からお財布とは相談しなくてはならないので、どんどんフィギュアをカートに入れることは出来なくなった。

 だけど、今は、お金を払うことだけが応援だとは思わない。

 これまで作品を楽しんで、イベントに参加してくれて、グッズを買ってくれて支えてくれた人たちに明るい気持ちになってもらうこと。嬉しいことに漫画もアニメも繰り返し楽しむことができる。作品によっては、ライブなんかまさにそうだけど、作り手だけではなく、応援してくれるみんなで形を作って完成させたものもある。またみんなで一緒にわくわくを作る日まで。この時間にもっとオタク力を磨いたほうがいいのかもしれない。