視聴者の「目線」によって分岐するマルチエンディングVR映画『HERA』が正式発表。アイトラッキングで無意識に結末が選択されていく

視聴者の「目線」によって分岐するマルチエンディングVR映画『HERA』が正式発表。アイトラッキングで無意識に結末が選択されていく

  WOWOWとstoicsenseは、分岐型マルチエンディングVR映画『HERA』プロジェクトを発表した。

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 本作はVRで視聴するマルチルート、マルチエンディング映画となっており、アイトラッキングを使い、ユーザーが見ている方向によってストーリーが分岐するフルCG映画だ。制作に向けて資金調達を行い、2021年のリリースを目指している。

 本作の舞台は未来都市「TOKYO」。宇宙エレベーターが建造され、スペースコロニーへの移住が始まる時代。AI技術は人間の能力を超えるほど成熟して、コミュニケーションのインフラとなっている。テーマとなるのは、ヒトよりも身近の存在になったAIに対して人間と同様の感情を持つことができるのかという問いかけ。AIと共生する未来の生活、感情、そして新しい「生き方」の選択のストーリーを描くという。

 監督を務めるのは、VRコンテンツ『攻殻機動隊GHOST CHASER』、『攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver』などを手掛けたことがある東弘明氏。2018年第75回ヴェネチア映画祭にてBest of VRとして正式招待、2019年第76回ヴェネチア映画祭コンペティション部門に日本の作品として初めてノミネートされるなど、世界のVRコンテンツでトップクラスの監督のひとりだ。

 本作で特徴的なのは、アイトラッキングによってストーリーが分岐する点だ。ユーザーは今までの映画と同じように観賞しているだけで、視線によって気付かないうちにストーリーを選び、それぞれのエンディングを迎えることになるという。

 ユーザーの見ている方向によっては、キャラクターが選ぶ衣装やもの、セリフが変わるというような小さなストーリー分岐や、細かい演出の違いも取り入れられる。

 選択肢に頼らない物語分岐といえば、アドベンチャーゲームでは『シュタインズ・ゲート』のメールの返信によって分岐していくフォーントリガー、『VA-11 Hall-A』で提供するカクテルなどが試されていたが、本作のようにアイトラッキングを使うとなると、どこで何を選択してこの結果に到っているのか、把握できるのがさらに困難となり、新しい物語体験が待っていそうだ。

 なお本作では大まかに分岐はふたつ用意されており、そのうち片方のルートから、さらにふたつのルートに分岐、つまり合計3つのエンディングを予定している。公式サイトに記載されている図によれば、本作は35分から45分ほどの尺を予定しているようだ。

 「視聴するユーザー本人が、作品の最後のピースとなる」未来の映画を目指すという、意欲的な作品だが、現在、この新しい挑戦に参画してもらえる企業を募集しているとのこと。この分岐型マルチエンディングVR映画『HERA』プロジェクトに興味を持った企業は、公式サイトから問い合わせてはいかがだろうか。

ライター/福山幸司 電ファミニコゲーマー: